【雨】【幻】【最初の遊び】

 ふと、私は窓の外に人の気配を感じ視線を向ける。だけど、そこには誰もいない。ただ降りしきる雨が見えるだけだった。

「どうした?」不倫相手のトシローが怪訝な顔で尋ねる。

「何でもない、誰かいるかと思っただけよ」

「まさか、元彼でも見たんじゃないか?」

「誰のことを言っているのかしら?」

「シンイチだよ、まだ忘れられないんじゃないかと思ってな」

「元彼じゃないわ、ただの遊びよ。彼とは手を切ったわ」

「恋多き女だな。一体何人目の遊び相手なんだ?」

「最初の遊び相手ということにしておこうかしら」

「全く、お前は魔性の女だな」そう言ってトシローは肩を落とした。

「言わない方が良かった見たいね」

「それで、オレの前に付き合っていたやつは?」

「ヒロキのことね。主人にバレてこんなことになっちゃったんだけど、首の皮一枚で繋がっているって言い残して去っていったわ」

「まだ聞きたいことがある。今付き合っている男はオレだけじゃないんだろ? 知ってるんだぜアキラって言うヤツをさ」

「意外と鋭いのね、アキラには今、隣町に足を運んでもらっているの」

「オレと鉢合わせないようにか?」

「わかっていて聞いてるでしょ?」

 ジェラシーを感じたそぶりをみせるトシローに意地悪な言葉をかけてみようと思った。

「他に私の為に体を粉にしてくれる人はいないかしら?」

 それを聞いてトシローは首を捻って言う。

「それは難しいな」

 こういえばトシローは奮い立ってくれると思っていたのにと、私は頭を抱えた。

 私はそこに主人が立っているような気がしてドアに目を向けた。

「今度は何だ?」トシローが溜息混じりに言う。

「主人が立ってた気がして」

「見間違いに決まっているだろ。幻だよ」

「そうね」私は手の中にある主人の顔を見つめて答えた。


 ヒロキと密会しているのを主人に目撃されて、咄嗟に鈍器で殴打して殺してしまった。

 死体をバラバラにしようとしたが、ヒロキは完全に首を切り落とす前に姿を消してしまった。

 シンイチとは一緒に主人の

 アキラは隣町に主人のいる。

 トシローはなたで主人の。皮一枚で繋がっていた主人の頭を胴体から外してもくれた。

 私は、そのいる。

 フリーズドライみたいにしてくれる人はいないかしら?

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