第九話


 「ファンタジー系4」


          堀川士朗



第九話



王暦39年2月。

大戦始まって以来、二度目の休戦日。

激戦地、センドロ大平原。

北の国の陣地。

慰問のゴダ・ンダー団による軽演劇は最前線にまで出張していた。

団の代表的な演目である「生きてるものがいたら返事して」を上演していた。

静かな演劇だ。



普段は容赦なく砲弾と銃火飛び交う戦地に大魔王アルノは突如として現れ、驚く24000名余りの兵らを鼓舞した。

電撃訪問だ。

そして四天王ケンシバに命じて長テーブルと調理器具を用意させた。

一体何が始まるのだろう?と傍らにいる兵隊らの誰もが思い、固唾を飲んだ。


「ドンドンドンパフパフ!大魔王アルノの~三分間ラーメンクッキング~!」


そう叫んだ大魔王の後ろにはチアガールがいて、アルノを応援している。

みんな美人ばかりを揃えている。

アルノが説明まじりに調理を開始した。


「まずはサンパウロ一番味噌味の袋麺をふたつご用意下さい。お湯を沸かします。500リラトル(750ミリリットル)。沸騰したら袋から取り出した麺をふたつ鍋に入れ、一分間はそのまま沸かしたまま放置します。麺が少し柔らかくなったら菜箸で軽くほぐし、付属の粉末スープを投入しましょう。まんべんなくかき混ぜて蓋をして一分間は麺に触れず放置。ここがうまうまポイントです。麺に味噌味スープが染み渡るまで煮込んで待ちます。煮込みが大切です。このひと手間がアイミスユーです。固めの噛み応えがお好きな人は二分四十秒で器に盛り付けます。仕上げにごま油少々とバターひとかけらとコーンを加えて出来上がり~!こってりコテコテサンパウロ一番味噌ラーメン~!召し上がれ~!」


完成した一杯のサンパウロ一番味噌ラーメンを前にして、北の国の若い兵らが腹をグブブと鳴らしている。

チアガールたちも食べたそうにしている。

兵士の平均給与は一ヶ月一人あたり500スクレバス(14万円)だ。命の値段としては安い。

チアガールたちもそんなにはもらっていないだろう。


彼らを横目に一人、ラーメンをズルズルと音を立てて美味しそうにすする大魔王アルノ。

16歳。

みんな、この人だからしょうがないかーみたいになっている。



            続く


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