85それぞれの役割

「颯人、こっちに天かすあるよ。いつも沢山入れてただろ?」

「其方の好みにしてくれれば良い。同じものを食したいのだ」

 

「な、なんでだよ。ちゃんと自分の好みにして。……前はもうちょっと入れてた気がする」

「我の好みをよく覚えているな」

「そりゃそうだろ。颯人が好きだからよく作ってたんだし」

「そうか……」


 

「妃菜、ほっぺにご飯粒ついてるわよ」

「ひゃっ!?あ、ああありがとうさん」

 

「どうしたの?顔が真っ赤ねぇ」

「わ、わかってるやろ!顔が近いねん!」

 

「そう、私の顔が嫌いなのね。そうよね、妃菜の好みじゃないもの」

「違う。飛鳥は綺麗やし、カッコいいやろ。好みと好きとはちゃうやんか」

 

「まぁ、本当?もう少しよく見てもらおうかしら。他にはないの?」

「やめてや……ご飯食べれんやろ!」


 

「ふ、ふぇ……」

「む?」

「ふぇっ……くちゅ!」


 

 颯人がくしゃみしそうになった俺の顔を自分の肩に押し付けて、抑えてくれる。

 びっくりして颯人を上目遣いで見ると、なんかあったか?な感じで見つめられた。


「……なにそのイケメンムーブ……」

「ん?」

「あ、ありがと」

 

「ふ、そのような小さき事で絆されるとは。真幸はちょろいな」

「むー、どうせちょろいよ」


 


 はぁ……胸がドキドキしてるとか言えません。

 現時刻 21:30 またもや久しぶりに魚彦達も、天照も月読も帰ってきてる。みんなが揃って大きな食卓が満杯だ。


 ……なんか静かだな?みんなどした?


 

 

「……帰ってきたらカップルが増えているとか、どんな拷問ですか」

 

「伏見さん、世の中こんなもんだ」

「はー、妃菜ちゃんと飛鳥殿はそう言う感じかぁ、いいなーいいなー」


「真幸も何やら様子が変わったな」

「クソっ。颯人……弟とは言え許せないんだけどーイチャイチャしやがってぇ」


 鬼一さんと伏見さんとアリスはいいけど、天照と月読は気配黒くしないで。怖いだろ。

別にいちゃついてなんか、ないよな?


 

 

「仲良しが増えたのはよいことじゃ。さてな、真幸。そろそろ体力も戻ってきたじゃろう。仕事の話をしてもよいか」


 魚彦がご飯をモリモリにおかわりしながら微笑んでくる。

待ってました!!!!


 

「してください!今すぐ、なう!」

「わーかーほりっくじゃのう」

 

「魚彦殿、芦屋さんは仕方ありませんよ。こちらとしても助かりますから……」

「ふふ、そうじゃな。ワシから話して良いか?」

「はい、お願いします」

 

 伏見さんと魚彦は並びで俺たちの向かいに座ってご飯食べてる。

なんか、なんか……随分仲良しだな?魚彦を取られたみたいで悔しいんだけど。ぐぬぬ。


 

 

「今日はとりあえずの話でいいじゃろう。後で伏見が書類を渡すからの。

 今月から真幸は人神としての仕事がある。現世で各地の鎮めの儀式に参加するのがめいんの仕事になる予定じゃ。

 その前に伊勢神宮に挨拶に行こう。神有月には出雲大社で、国津神の会議に参加するのじゃ。その後は高天原にて天津神と規律の取りまとめや国津神との協力体制について検討。

神様としてはこんな感じかの」


「伊勢神宮に出雲大社か、ついにって感じだな……」

 

「吾の総本山だからな。月読も伊勢に社があるし、伊勢神宮は直に尋ねて国護結界を繋ぎ直すべきだろう」

 

「わかった。天照も月読も来れるのか?」

「「行く」」

「お、おん……」


 二柱とも目がギラギラしてるんだが。

 うん、まぁ元気なのはいいことだ。


 

 

「次は現世の仕事じゃな」

「はい。真神陰陽寮は相変わらずのお仕事ですが、少しご提案があります。

 芦屋さん、真神陰陽寮の研修学校に入学しませんか?」


 伏見さんに言われて、キョトンとしてしまう。


 

「俺の歳で学生とかありなの?」

 

「芦屋さんは見た目だけなら二十代ですし問題ありません」

「そうだな、幼顔だ。しかし人の世に触れてよいのか?目的は何だ」


「芦屋さんには認識阻害の術をかけ、ぼんやりとした印象を持たせます。この術を見破れる生徒がいればスカウト対象ですね。また、芦屋さん自身の学びが必要かと」

 

「ふむ……」


 なんか、三者面談みたいだな。颯人がお父さんみたいだ。


 

「颯人様を降ろしてから芦屋さんは独自で学ばれてきましたが、天文学に関しては厳しいのではありませんか?私自身も学校で教わらなければ、きちんと覚えられませんでしたよ」

 

「あー、それは否定できない。正直文献もちゃんと集められてないし。月読に教わってたけど最近時間が取れないから、全然身についてないと思う」


 俺の書斎に積まれた天文学の文献は、古来のものを写させてもらったやつだけど、正直ほとんど頭に入ってないんだ……文字の古語を理解するのが厳しい。

 みんなが神様と古語で話す苦労をやっと思い知ったところだ。


 


「陰陽師の天文学は本当に難しいですからね。他にも一般の神継達が学ぶべき事で改善があれば教えて頂きたいのです。

芦屋さんはある意味常識から外れています。我々は陰陽道や超常に触れて来なかった人達の気持ちが分かりづらいのですよ。

 初期テストの脱落者があまりにも多いと感じてまして」

 

「確かにそうだな。だいぶ落ちたもんね」


 

 一期生は中途入学を含め約150人入学して、今残ってるのは100人。そのうち卒業できる数はおそらく半数にも満たないだろう。

相変わらずみんな忙しそうだし、何かお手伝いできるならやりたい。

 


 

「お仕事に関しましてはその、言いづらいですが……怨念、妖怪系の退治や説得をお願いすることが多くなるかと」

 

「えっ」

「大丈夫なのか?真幸は苦手だろう」


 伏見さんが苦笑いしてるけど。俺は暗いところと青い光が苦手だ。

ホラー展開になるのか?怖いなぁ。

 


「差し当たっては秘密地下鉄に社を建立したいのです。近隣の神社へ繋いだ国護結界メンテナンス+怨霊退治的な感じですね」

 

「むーうーうー。颯人、一緒にいてくれるよな?」

「当たり前だろう。其方を一人にはせぬ」

 

「うん……じゃ、やる。将門さんみたいなのだといいんだけどぉ」


 ちらっと上目遣いで伏見さんを見つめる。伏見さんが目頭を押さえてため息を落とした。


 

 

「そこはすみません、何とも言えません。ただ、ピンチの時には必ず私たちの誰かが駆けつけます。そのために転移を学んだのですから。あとは、もう一つ」


 伏見さんが魚彦に目線を送り、魚彦が頷く。

 

 

「真幸、我らは眷属であるが、それぞれ独立して……常に側仕えではなく個々で働くようにしたらいかがかと提案したい」

 

「な、魚彦?」


 寂しげに笑う魚彦が椅子から降りて立ち上がる。

 天照、月読、暉人、ふるり、ククノチさん、ラキ、ヤト、赤黒がみんなで魚彦を囲んで立ち並んだ。


 


「どうして?俺のそばにいてくれるんじゃないのか?みんなうちから出てっちゃうのか?」

 

「そうではない。あまり帰らずとはなるだろうがな。

 真幸がよすがであり、我らが眷属なのは変わらぬ。

例えば、神社の社が真幸としよう。そこが還る場所であり、魂はそこにある。だが、常に社にいるわけではない……。

 我らも神として役に立ちたい。

それこそ、百年のうちに伏見らが仙になるならば時が惜しいのじゃよ。この世の理を成さねばならぬ」


「そ、そうか……そっか」


 

「真幸が呼ばわれば必ず飛んでいく。

だが、今までのように常にそばに居らぬ。この国が落ち着けば、その先はずっと一緒じゃ。

 ワシは真幸が建ててくれた医院に常駐しよう」


 


 確かに、俺の中にずっと居たって意味がない。一応、この国は平和になったんだから。みんなが世の中のために仕事をするなら、別行動の方が効率がいいはずだ。名のある神様を沢山抱えて、尚且つ独占するなんて非効率だ。


 

 魚彦は特に色々教えなきゃならないだろうし、政治系も伏見さんと一緒に動かしてる。

 

 暉人やふるりは外交に長けてるよな。

 暉人は国譲り神話が元だし、ふるりは人に話をさせるのが上手い。自分もすごく喋るけど。

 

 ククノチさんはふんわりした雰囲気でいつの間にか輪の中に入って、それでも必要なところは絞めてくれるしアドバイスも的確だ。神道の大元はアニミズム。自然信仰だから、木の神である彼は必ず必要になるだろう。

 

 海外からの侵略を退けるためにみんなが必要になる。元々生まれてからずっと日本の神様として働いてきたんだから、きっと日本の復興にも役に立ってくれる。


 

「累、ヤト、ラキ、赤黒はそのままでいいじゃろう。近衛が必要じゃからの。

 天照、月読、ワシは主に高天原、暉人とふるり、ククノチは現世で役に立てる。……どうかな、主殿」



 

 膝の上で自分の手をギュッと握る。

颯人と同じくらいずっと傍にいて、ずっと俺を癒し続けてくれた魚彦が離れるのは……正直涙が出そうなほど悲しいし、寂しい。


 でも、魚彦の目はキラキラした光が宿っている。

魚彦が生き生きしてる。きっと仕事がすごく楽しいんだ、魚彦だって、ワーカーホリックじゃないか。


 

 

「たまにはご飯、一緒に食べれる?」

 

「あぁ。休みの日には交代でここへ帰る。なに、さらりーまんの単身赴任のようなものじゃ。

 真幸が求めれば皆で必ず集まる。それにな、ワシらもちょっと考えとるんじゃよ」

 

「なにを?」


 

 魚彦がテーブルを回って、俺のそばに来る。

握りしめた俺の手のひらを優しく解いて、撫でた。体温を俺の手に染み込ませて、ふわふわの小さな手がきゅっとそれを握りしめる。


 


「真幸と颯人の関係がどうなるか気になるじゃろ?

 ワシは、お前さんの気持ちはわかっておるよ。今は整理がつかずともいつかきちんと向き合える。そのために二柱で居る時間が必要じゃ」

 

「……う、うん……うん」

 

「もし子が生まれるような結びになれば……其方なら、子を慈しみ育ててくれる。

ワシはそれを見てみたいのじゃ。当たり前に愛され、慈しむ母が真幸であるならワシの魂も救われる」


 はっとして、魚彦を見つめる。

眉を顰めて、無理やり笑って瞳にたくさんの涙を溜めて俺を見てる。


 

 

「な、魚彦、魚彦……!」

 

 耐えきれなくなって、魚彦を抱きしめた。魚彦はずっと寂しい思いをしてきた。

親に愛される幸せを知らずに、優しさを知らずにいたんだ。

 俺が子供を愛する事で、幸せになれるのか?……それって、それってすごく幸せな事だ。



 

「真幸、ワシが第一眷属であり、おまえさんの長子であるのは譲らぬぞ?

真幸の愛は颯人のものだけではない。ワシもちゃんといただくからの」

 

「うん、うん。魚彦が長男か、嬉しいな」


 

 ふわふわの髪を撫でると、魚彦が温かい雫をこぼす。

魚彦は俺のおでこにそっと口付けて、照れたように笑った。


 


「どんなに離れても、其方の中にワシらの魂はある。いつでも真幸を助け、護り、癒してやるからの。

 いつぞや死んだ時の颯人と違って、気が向けばこうして触れ合えるのじゃから。誰かさんの別れとは違うじゃろ?」


 魚彦がチラッと颯人を見ると、颯人は凄い苦虫を噛み潰したような顔してる……ふふ。

 

「うん、そだな。寂しいけど俺も応援する。俺も仕事、頑張るから。

 でも、一個だけ約束して欲しいんだ」



 魚彦の涙を拭い、おでこをくっつけた。

 累みたいにまんまるのおでこ。

いつも俺にくっつけてくる、このおでこが可愛くて大好きなんだ。


 

「魚彦が寂しいときは、我慢しないでちゃんと帰ってきて……お願い。

 魚彦に寂しい気持ちを持たせたくない。俺がずっと憧れてた、大切な神様なんだ。俺に魂をくれて、ずっとずっと助けてくれた魚彦のことが大好きだから」


「あぁ……ありがとう。ワシもじゃよ。真幸に出会えた事こそが今まで生きてきた中で一等幸せじゃ。

 真幸もワシも、生まれはそりゃーひどいものじゃが……もう、この先は幸せしかないんじゃからな」

「うん」



 

「オレにも好きって言ってくれ。」

 

「ワイもや。出番少ないんやから。先々で何かあったらワイを一番に呼んでくれな困るで」

「わしもじゃよー。大して役に立てておらん。魚彦殿の一人勝ちじゃからのう……」


「吾とてそうだ。天津神の主人たる吾を蔑ろにできるのは真幸だけだ」

 

「僕はすとーきんぐするからねー。サボるの得意だし、僕は颯人との仲をまだ納得してないからー」


 

 暉人も、ふるりも、ククノチさんも……天照、月読もみんながぎゅうぎゅうに抱きしめてくれる。

 

「俺の中に魂を残してくれた皆んなは、ずっと家族だ。大好きだよ……」


 囁くように告げると、皆んながかわるがわる頬ずりしてくる。

んふ……くすぐったい。仲良しでいられるって、幸せなことだな。



 

 

 日本代々の神の子孫たる人たちはずっとそう言っていた。日本のみんなが家族のように仲良く幸せに暮らして欲しいって。それと同じだ。

 

 俺たちは家族だからな。

自立して離れてたって、心はずっと一緒だ。


「主さま……」

「赤黒は来ないの?ヤトも、ラキも」


「オイラ達は真幸と離れないからなァ。たまには遠慮しておくぜェ」

「わ、わふ」

「…………」



 ラキとヤトはさっさと顕現を解いて俺の中に入ってくる。

赤黒が1人でもじもじして、顔を真っ赤にして……かわいいなぁ。赤黒も魚彦と同じだけ一緒にいるし、いつも俺の力を増幅してくれてたんだ。赤城山にはもう返せないな。


「暉人、赤黒が可哀想じゃよ」

「……すんっ。仕方ねぇ」



 

 神様達が手を離してくれて、赤黒がおずおずとやってくる。


「いいんだよ、赤黒。俺が抱っこしたいんだ。おいで」

「主さま、ボク……ボクは……」


 小さな頭が俯いて、パタパタと涙が溢れる。ごめんなぁ……忙しくて全然まともに話もできてなかったもんな。

 ポテトを持った幼い俺の姿が重なる。もう、泣かなくていいんだよ。

 


「赤黒」


 もう一度名を呼ぶと、泣きながら赤黒がしがみついてくる。お尻を支えて抱き上げ、立ち上がってくるりと回ってみせた。


「ぐすっ、ふふ……」

 

「赤黒はまだ小さいんだから、たくさん甘えていいよ。我慢しなくていいんだ。

 累みたいに毛玉にでもなって、俺の胸元にずっといてもいいぞ」

 

「ほ、ほんとう?」


 言ったはいいけど、出来るのかな。それ。どうやってやろうかな。


 


「できるよ、あるじさま。ぼく、神ごむみたいになっていい?」

「そんなの出来るのか?」

 

「うん。あのね、お顔に近いところがいいの。いつでもあるじさまのお顔が見たい」


 顔が見えるところ?うーむ。


 

「耳飾りでええんちゃうか?手首に金きらの神ゴム持って、髪の毛に道満の飾り紐を結って。耳飾りも金でこう、すらっとしたかっこいい奴にしたらええねん」

 

「うん、わかった!」

 

 

 妃菜に言われて、赤黒が金色の光に変わる。


 

 


「あいてっ」

「ぬ。赤黒め……真幸に穴をあけおって」


 左耳の耳たぶが一瞬ちくっとして、そこに輪っかが通る。

その中に四角く長めの金属がかちりと二つはまって、ゆらゆら揺れていた。



「ほー、ドロップピアスか?オサレメンズになってしもたな……」

「真幸がどんどんチャラくなる……くっ」


「き、鬼一さん!?チャラいとかやめて!俺は対極にいるでしょ!」


「ピアスはいいですね。左耳なら守護の意味がありますし。

ピアスに、縁紐の指輪に、手首に神ゴム型の腕輪、形見の飾り紐ですか。

 神装束ですね、理解しました」


 


「伏見さん?なんだその神装束って」

 

「まぁ、良いだろう。神は皆象徴となる飾りを何かしらつけるものだ。出雲の会議でも格がわかりやすくなる」

 

「颯人はつけてないじゃん」

 

「我は其方という花を抱えている。必要がないのだ」


「なっ……そ、そういうのダメって言ったのに!」

「本当に嫌なら言わぬが、『だめ』と『いや』の区別はついている。その内に身をもって知るだろう」



 颯人がテーブルに頬杖をついてニヤニヤしてるんですけど。

くっ……わかられている!!!



 

「はーやれやれ。締めは結局イチャコラでしたね。

 では明日一日は資料の読み込み、芦屋さんの入学手続きを行いますから。今日はさっさと寝てください。

……颯人様、手加減してくださいね?」


「わかっている」


 

「ワシらは高天原の仕事がまだ残っておるからの。真幸、たまには素直になるとよいぞ。ではまたな」


 魚彦達が手を振りながら高天原に行ってしまう。待って、なんか変な流れだぞ。


 


「私たちも寝ましょうか」

「そ、そやな」

「クーラーかけてるからちゃんと上着を着なさいね」

「うん。真幸、おやすみやす。鬼一さんも、伏見さんも邪魔したらあかんよ」


「おう。俺もさっさと寝るかな。おやすみ真幸」

「僕が食卓を片しておきますよ。おやすみなさい」


 


 みんなして……なんで?三人がスタスタ散って行ってしまった。

今日はおかしいぞ。なんでみんなして……いや待て!そ、そう言う事!?お、俺はまだそう言うのはアレだから!

 


「真幸、閨にゆこう」

「し、しないぞ!?俺たちは相棒なんだから!!」

 

「わかっていると言っただろう?我は待てのできる男だ。星野が言うように捨てられては敵わぬ」


 颯人が席を立ち、左耳を触ってくる。

なれない耳飾りがしゃらん、と小さな音を立てた。



 

「穴をあけたのは気に食わぬが、よいな。似合っている」

「そ、そう?颯人が言うならいいか」

 

「我が其方に飾り物を送るのは、真に許されてからとしよう」


 俺の手をそっと持ち上げ、指に颯人の唇が触れる。左手の、薬指に。



「他の者には、ここは許さぬ。相棒としても、な」

「……むぅ」


 小さなつぶやきを返すと、いつものようにお姫様抱っこで抱えられて俺は寝室に向かうのであった。

 


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