僕が告白されるまでの30日間~特攻服を着た強面女がなぜか毎日僕に絡んでくるのですが~

たこす

1日目(月曜日)

「2年A組の向井むかい翔平しょうへいってヤツはどいつだ、ゴルアァッ!」



 その日。

 クラスに変な奴が現れた。


 ガチガチに固めたつっぱりリーゼント頭に紫色の特攻服。

 金属バットを片手に

「テメエか? おう? テメエか?」

 と、目に付く男子に片っ端から声をかけている。


 時刻は朝のホームルーム前。

 先生が来るまで時間がある。

 そのため、どこの誰だかわからないけど凄みがあって、柔道部の只野ただのくんですら震えあがっていた。

 

「向井翔平ってえのはどいつだ!」

「こ、この人です……」


 学級委員長が僕を指さして教える。

 ええー……。

 クラスメイト売りやがったよ、こいつ。


「テメエかッ! 向井翔平はッ!」

「は、はい……」


 とりあえず殺されないことを祈って前に出た。


「テメエ、やってくれたなッ!」

「……はい?」

「昨日の夕方、駅前で迷子の童子わっぱ拾っただろッ!」


 言われて思い出す。

 そういえば確かに拾った。

 拾ったという言い方はアレだけど、駅前で泣いてたから交番に届けたんだった。


 ……あれ?


 あれって、もしかして何かワケアリの子どもだったの?

 警察に届けたらマズかった?


「拾っただろッ!」


 何度も聞いて来るので「はい……」と恐る恐る答えた。


あねさん! 当たりですぜ!」


 するとリーゼント頭が廊下にいる誰かに声をかけた。


「そうかい」


 そう言って現れたのは、やっぱり特攻服着た女の人だった。


 ……なに、この人たち。


「あんたが向井翔平? ふうん、パッとしないねえ」


 ほっといてください……。


「ま、とりあえず礼を言いに来たんだよ」

「礼?」

「あれ、あたいの弟でねえ。喧嘩して家飛び出したまま迷子になってたんだよ」


 なんですと?


「交番を訪ねてみたら保護されててね。問い詰めると優しいお兄ちゃんが届けてくれたって言ってたんだ。で、いろいろ調べたらあんたに行き当たったというわけさ」

「そ、そうですか……」

「だから弟に代わって礼を言うよ、ありがとよ」

「は、はあ……」


 特攻服の女の人はしばらく僕を見つめたあと、「じゃあね」と言いながら帰って行った。


 え!? 終わり!?

 お礼を言うためだけに来たの!?


 いきなり現れていきなり去って行くその姿に、クラスの誰もが呆然と見送っていた。


 ……なんだったんだ。



~告白されるまであと29日~

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