僕らのミッション(5)

「本当に開いてる」

「あたりまえ」


 忍び込む場所の鍵の外し方、なんてわからない。

 セキュリティシステムが作動してしまうようなヘマはしたくない。

 だったら、と頭を振り絞って考えたのが、シンプルにこれ。

 一学期終業式の金曜日、僕はずっと体育館倉庫に隠れていて、先生たちが帰った後その窓から抜け出す。

 塾の帰り道で練っていた計画通りだ。


『あら、窓開いてたのね』

 

 帰り際、見回りにきた先生が窓の鍵を閉めに来た時は、マットに挟まりバレないように息を止めた。

 暑さ対策の、アイスノン、冷たい水、ミニ扇風機も用意し無事脱出。

 中学生だって色々考えてる。

 ただ、夏場のマットがあんなに暑くて臭いとは想定外だったけれど。


「これから西校舎三階、生徒指導室に移動する」

 

 二人に任務を伝えた次の瞬間、無駄に大きな音がバァアアアンと体育館にこだました。

 まるでバスケットボールでも叩きつけるようなその音に、ビクリと肩をすくめる僕、タケがギャァッと悲鳴をあげ、抱きついてくる。

 おそるおそるその音の原因を探ろうと、振り向いた先で、バスケットボールを手にしたレンレンが笑っていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る