僕らのミッション

東 里胡

僕らのミッション(1)

「ホントにヤるの? ショーちゃん?」


 ゴクンと生唾を飲み、顔面に『行きたくない、ヤりたくない』を貼り付け、少しばかり震えている武人タケに舌打ちをした。

 ここまで来て、ヤらないとかありえない。

 僕と同じ黒づくめの服装をしたヤる気のない二人を睨みつける。


「本来なら、タケと蓮太郎レンレンのせいなんだからな? 二人で行くのが正解なのに僕まで来たんだぞ?」


 僕の憤りを右耳から左耳に受け流したように、ふっと笑ったレンレンがベッと舌を出した。


「でも、ショータのソフトじゃん? だったら本人も行かないと」

「元はと言えば、レンレンが悪い! 授業中に広げるから」

「ねえ、二人ともケンカしないでよ」


 タケの震えた声にため息をつき、夜の校舎を見上げた。

 昼間とは違う、おどろおどろしい顔を覗かせる中学校に怯みかける。

 怖い、僕だってめっちゃ怖いけど。

 意を決して、二人より先に校門を登るための助走をする。


「行くぞ」

「あ、待ってよ、ショーちゃん!」

「タケ、後ろも気をつけろ?」

「ひゃあっ! そんなこと言わないでよ、レンレン」

「頼むから静かにしろよ、二人とも!」


 先行きが不安な、夜の始まり。

 僕らは今夜、学校に忍び込む。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る