第17話 継目じゃないから!

 やがて車の下から、JJとメランタリが引っ張りだされた。


「どうします? まだ息がある様ですが……殺っちゃいますか?」

 ダメ! やめて!! JJ、メランタリ。目を覚まして……。


「いや、基地に連れて帰って尋問しないと。

 とにかく今回の件は不可解な事が多すぎる。

 拘束してヘリに放り込んどけ!」

「はっ!」

 ああ。とりあえず……よかった。でも……。


 現場にトラックが横付けされ、負傷兵達が載せられ、順次撤退していった。

 後にはヘリで来た十人余りの歩兵と、最初にいた地上部隊の歩兵数人が残った。


「さって。こいつも運ばんとな」

 そう言いながら屈強な熊の様な獣人兵士が、スフィールを持ち上げようとする。


「うわ。かなり重いぞこれ!」

 もう、十五歳の乙女を重いとか……本当に失礼よね。


「バラしますか?」

「そうだな。その方が運びやすいか……となると……脱がさんとならんよな?」

「うふふふ。そうですよねー」

 

 えっ? ちょっと。何そんなにニヤニヤしてるのよ! 

 ちゃんと仕事しなさいよ!

 じゃなくて……えー私、裸にされて解体されちゃうの!?


「そんじゃ、このボンテージスカートから……」

 そう言いながら、兵士が、フロントのファスナーを降ろしていく。

 嫌ーーー、やめて頂戴!!


 しかし、アリーナの思いもむなしく、専用装備ははぎ取られてしまった。

 もうやだー。お嫁にいけないよー。


「それで、これ……どっからバラすんでしょう? 継目つぎめとかないんですけど?」

「そうだな。こりゃ大した工作精度だ。

 でもどっかに継目が……ああ、ここじゃないか?」

「ははー。やっぱりそこですよねー。

 そんじゃ……ちょっと中に指入れてみましょうか。

 整備口のパージ用スイッチとかがあるかも知れません」

 

 ちょっとあんた達、何乙女の股間をしげしげ眺めているのよ! 

 ……もう恥ずかしくて死にたい……。


 そんなアリーナの思いは兵士に全く届かず、兵士は人差し指をスフィーラの股間に挿し入れようと近づけてきた。


 いやーーーーー! もう勘弁してーーーーーー!


 カクン! 


 あれ? 今の感覚何? なんか覚えがある様な………………。

 &$%◎※……あーーーーーーーっ! あれだーー!!


 そして、まさに兵士の指がスフィーラの股間に触れようとしたその瞬間。

 動かないはずのスフィーラの右腕が思い切り前に振り出され、その兵士が五m位後ろに吹っ飛んだ。


「何っ!? 動いただと?」

 周りの兵士に動揺が走る。

「おい、キャンセラーを確認しろ!」

「動作モニタはグリーン。問題ありません」

「そんな……それじゃ今のは?」


 ドカン!!


 また一人、兵士が吹っ飛ぶ。


「おい、ちょっと待て。さっきまであれ、あそこに突っ立ってただろ。

 どこにいった?」


「あっ、あっ……小隊長の後ろ……」

「何? ぐはっ!」

 小隊長と言われた兵士も前のめりに倒れた。

 そして、後ろにはスフィーラが立っている。


「なぜだ!? なんでお前は動ける?」周りの兵士が叫ぶ。


 しかし、スフィーラは一切それに答えず、その場にいた兵士をすべてなぎ倒した。

 そして、ヘリの中の兵士も引っ張りだして倒し、その手にあったキャンセラーと思われる、手帳大のタブレットを握りつぶした。


【……信号回復。アリーナ。無事ですか?】

「大丈夫じゃないわよ! めちゃくちゃ乙女の貞操のピンチだったわ。

 でもよかった……何とかなって」

【キャンセラーの起動を確認後、私も動作停止しましたが……一体何が? どうやって敵を排除したのですか?】


「ははは。芸は身を助けるってやつよ。

 この子スフィーラ、土魔法使ったら動いたわ……ゴーレム見たいにね」


【……解析不能……】


 乙女の大切な部分に触れられそうになり、極度に緊張した時、膝の関節がカクンと動いたのが分かった。そう……あの感覚は、初めてゴーレムを動かす事に成功した時、我が身に感じた感覚だったわ。

 土魔法でゴーレムを動かすと、その動きが若干自分にフィードバックされる。


 急いでボンテージを着直して、JJとメランタリを開放した。

 二人ともすぐに意識を取り戻し、特に目立った外傷もない様だ。


「本当にこれ、スフィーラ一人でやったのかよ? 

 お前拳法か何かの達人だったのか?」

 JJが驚くというより呆れている。


「ふふふ。ひ・み・つ。女の子には秘密があった方がいいでしょ?」


「でもよかった。もうだめかと思っちゃった。でもこれからどうするの?

 車壊されちゃったけど……」メランタリが心配そうにそう言った。


「うーん。あのヘリ貰いましょ。

 さっき帰った兵隊さん達が戻ってこないうちに、ここを去らないと」


「お前……あれを動かせるの? 本当にお前、何者なんだよ?」

「さーてね……」


 そしてアリーナらは、敵のヘリを鹵獲し、レジスタンスが潜むと思われる山地を目指して、その場を離れた。

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