2-3 一花ちゃん、赤ちゃんみたいで面白いね♪
ありえない光景を目の前にして、私の全身に鳥肌が立っている。
「なに、これ……」
「あーうー、ママー」
「――――ッ!」
不気味なイチゴのお化けたちが、よちよち歩きで私に迫ってくる。
「ママだ」
「ママだー♪」
「ママー♪ ママー♪」
「ママー、だっこー♪ だっこー♪」
「やだ! やめて! こないで! いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
半狂乱になってリビングから出た。
だが私の身体は思ったように力が入らず、四つん這いになって玄関へと向かう。
それこそ自分が赤ちゃんのようになった気分だ。
だが廊下も同じような景色に変わっていたが、唯一、それが「正解」だと言わんばかりに、外へと通じる玄関だけがいつもの扉のままだった。
私はその玄関へと向かう。
やっとの思いで玄関にたどり着く。
そしてドアの取っ手をつかむが――
「な、なんで! なんで開かないの!?」
ドアは鍵とチェーンロックがかかりっぱなしだった。
しかし私は混乱してて、そんなのことにすら気づかない。
狂乱してドアをたたく。
「助けて! 助けて! 誰か助けてぇ! いや! いや! いや! いや! いや! こんなのいやあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
どこからともなくオモチャのガラガラが奏でる音が頭の中に反響する。
そして私の肩に誰かの手が触れた。
そして耳元にささやくような声。
「あそぼうよ、一花ちゃん♪」
「いやあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
何かのはずみでドアが勢いよく開いた。
その勢いのまま、私の身体は開いた玄関から放り出された。
「あぅっ――!」
全身をしたたかに打ち付けてしまい、衝撃で身体を起き上がらせることができない。
ふとトコトコと足音が耳に入ってくる。
「一花ちゃん?」
「仁美?」
逆光でよくは見えないが――、
私を見下ろす仁美の顔は薄く笑っているように感じた。
「どうしたの?」
「あ、あ、あー……」
「"あ、あ、あー?"」
私のうめき声を、仁美が真似た。そしてカラカラと笑う。
「あはははははははは♪ 面白ーい♪ 一花ちゃん、赤ちゃんみたいだねー♪」
イジワルな笑い声をあげる仁美。
だけど、それに怒る気にすらならない。
むしろ今の理解不能な恐ろしい出来事を笑い飛ばしてくれるなら、その方がいいと思うくらいだ。
「あ、あれ?」
開け放たれた玄関から家の中を見る。
先ほどの恐ろしい出来事が嘘のように、家の中は何事もなく普通の状態に戻っていた。
室内の景観はもちろんの事、私に抱き着いてきたぬいぐるみや赤ちゃんの抱き人形も消えている。
悪い夢というよりも、まるでイリュージョンというか、まぼろしでも見せられていたかのようだった。
「それだけ元気なら、学校行けるよね?」
そう言って、仁美が私に手を差し伸べてきた。
「私、待っててあげるから、いこ?」
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