2月15日 Valentine's Day Special 3

 Side A & B

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 「やっほ。おはよ。」

 「おはよ。会うの試験日以来かね」


 グレーとベージュのコートを着て改札前にたたずむ二人は周りより一日遅い世界を生きていた。


 「そだね。ご足労いただきありがと」

 「別にいいよ。というか昨日に合わせられなくてごめん」

 

 間がもたなくなるのが嫌で先に突き出されたのはちょっとおしゃれにラッピングされたショコラテリーヌの入った紙袋だった。


 「いいのこんなのもらっちゃって?めっちゃ手間かけてない?なんか申し訳ない気がしてきた」

 「好きでやってるから気にしないで。それより飾り凝ったんだから見て」

 「すごっ。ありがたくいただきます。でもこれレベル高くない?…」


 そのあとに続いた、「義理でも友でもないと受け取っていいのでしょうか」、は小声にしかならなかったけれど、でも届くべき人には届いて、小さなうなずきが確かに交わされたのだった。


 「じゃあお返しってわけでもないけどこれもよかったらどうぞ」


 顔のすこし紅潮した二人は話題をそらそうともう片方の紙袋へと視線を移したけれども話題そのものは同じであり続けたし、冷たい風が通り抜けるコンコースの温度はさらに上がり続けていた。


 「アップルパイ焼いたのとあとキャンディもつくってみた」

 「えっ。美味しそう。ありがと…」


 同じく小声になってしまった、「お返しにキャンディの意味ってあれですよね」、もやっぱり駅前の喧騒の中でも届く人には届いて、小さなうなずきがすべてを物語っていた。


 「もしよろしければお散歩でもしません?」

 「あっちに日当たりのいい公園があるんだよね」


 なんとはなしに互いの手に触れてみるとどちらともなくぎこちなく握り返し合ったので、そのまま二人は寒いけど綺麗に澄んだ空のもとへそっと歩きだしていった。

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