第93話 改めて報告を
マリエッタさんのポンコツぶりはさておいて……こちらに気づいたドイル様はやってきたのが鉱山調査に向かっている面々であるのを確認し、すぐに事態を察する。
「何か分かったことがあったんだね?」
「は、はい。本日はそれを報告しにまいりました」
先ほどまでの穏やかでのんびりした空気が一変。
ドイル様の表情も神妙なものへと変わっていた。
せっかくアリッサ様と楽しいひと時を過ごされていたのにと申し訳ない気持ちになるが、決して悪い報告ではないため続けさせてもらおう。
「結果から報告いたしますと……ゴーテル鉱山に魔鉱石は存在していました。質に関しても問題なく、今はゲイリーたちが現地に残って追加の調査をしています」
「っ! そ、そうなのか……よかった」
ドイル様は脱力し、椅子にもたれかかりながら大きく息を吐きだした。
アボット地方の未来を大きく左右する事態だっただけに、心からホッとしたのだろうな。
「じゃあ、あの近くにある村も復活できるね」
「はい。交易も盛んになるでしょうし、領民たちの生活も豊かになるはずです」
「それはよかったですわね」
ニコッと微笑みながらそう告げたのはアリッサ様だった。
「お洋服の汚れを見れば、あなた方がどれほど頑張って鉱山を調べたかよく分かります」
「っ!? こ、これは失礼を!?」
しまった。
報告を優先するあまり着替えるのをすっかり忘れていた。
公爵家令嬢の前でなんたる無礼な振る舞い――と、焦ったが、
「お気になさらず。頑張った何よりの証ではありませんか。素晴らしいですわ。アミーラもお疲れ様でした」
「い、いえ、そんな……恐縮です!」
再び笑顔を見せ、そう語るアリッサ様。
てっきり、この魔鉱石発見で産業が安定すればドイル様と結ばれる可能性が上がるので喜んでいるという勘繰りをしてしまったが……どうも違うようだ。
この御方は本当に俺たちの頑張りを褒めてくれている。
つまり――めちゃくちゃいい人ってわけだ。
俺やエリナ、そしてアミーラがアリッサ様の心遣いに感激していると、
「それにしても魔鉱石か……一度この目で拝んでみたいものだな」
横でドイル様が好奇心に火をつけていた。
そして――
「ねぇ、ジャスティン。今からその鉱山へ行って直接魔鉱石を確認することはできるかい?」
なんとも恐ろしい提案をするのだった。
「ゴ、ゴーテル鉱山へですか!?」
「ダメかい?」
「いや、その……一応、モンスターも出現していますし、まだ完全に安全が確保されたわけでは――」
「でもいざとなったら守ってくるよね?」
「ぐっ……」
……ダメだ。
こうなるともう退かないぞ。
……仕方がない。
「わ、分かりました」
「ありがとう、ジャスティン。早速準備をしてくるよ」
「それならわたくしも行きますわ」
「いいね。一緒に行こうよ」
「はい!」
「「「えぇっ!?」」」
これにはさすがに俺だけじゃなくエリナとアミーラも驚きの声をあげる。
……なんか凄い事態になってきたぞ。
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