第76話 幼い魔法使い
マクリード家から派遣されたという凄腕の魔法使い。
俺はてっきり見た目から強者オーラがビシバシ溢れている猛者を想像していたのだが……まさかこんな可愛らしい女の子だったなんて。
だが、グラバーソンという名には聞き覚えがあった。
魔法兵団で幹部を務めるほどの優秀な魔法使いを多く輩出した名門家系。確か今も上層部にグラバーソンの関係者がいたはずだ。
彼女がその家の出身ならば相当な実力者なのだろう。
「よろしくお願いします!」
フンス、と鼻を鳴らしながらお辞儀をするアミーラ。
……本当にこの子なのか?
エリナにも意見を求めようと視線を向けたら、
「私……ずっと妹が欲しかったんですよね」
あっ、ダメだ。
すでに受け入れ態勢に入っている。まあ、話をした限りでは悪い子じゃないっていうのは伝わってくるけど、問題は実力だ。マクリード家を疑うつもりは毛頭ないが、どうしてもあの子が凄腕の魔法使いとは思えなかった。
「え、えぇっと……アミーラ?」
「はい!」
「君の魔法を見てみたいんだけど、いいかな?」
「お任せください!」
そう言うと、アミーラは手をかざす。そこには何もないのだが、彼女からわずかに魔力が発せられたと思った次の瞬間、その小さな手には不釣り合いなほど大きくて立派な装飾が施された杖が握られていた。
「ま、魔法使いの杖だ!」
興奮気味に叫んだのはパーカーであった。
どうやら魔法を見るのはこれが初めてらしい。めちゃくちゃ瞳を輝かせながらアミーラの一挙手一投足に注目している。
俺は騎士団の所属なので魔法には疎いのだが……それでも、徐々に迫力を増していくアミーラの姿に戦慄さえ覚えた。
まず驚愕したのはその底知れぬ魔力量。
さっきまで「可愛い」と浮かれていたエリナの表情から笑みが消えるくらいには強大なものであり、素人目にも尋常でないのは十分伝わった。
「先輩……ヤバくないですか?」
「ああ……ヤバいな」
語彙力が消失するほどの魔力。
彼女はそれを炎に変えてみせようとしていたようだが、実際にやられたらこの辺り一帯が消し炭になるかもしれないと思い、「わ、分かった! もう十分理解したよ!」と中止を求める。
「えっ? もういいんですか?」
「う、うん。君の凄さがよく分かったよ」
「ならよかったです!」
ニコッと微笑むアミーラ。
その姿は天使そのもの――だが、秘められた実力はとんでもなかった。
マクリード家はまたとんでもない人材を寄越してくれたなぁ。
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