第45話 新体制
一旦グラッセラへと戻った俺は駐在所を訪れ、そこにある牢に捕まえた男たちを放り込んでおく。
「お疲れ様でした。あとはお任せください」
「よろしくお願いします」
男たちを捕まえた経緯を説明する必要があるため、俺はこの駐在所の責任者に会おうと執務室を訪れた。
それにしても……キチンとした仕事部屋があるなんてさすがは大都市の駐在所。そもそも建物の規模がうちとは段違いだな。外から見た限り、五階建てっぽいし。
執務室のドアをノックし、許可を得てから入室。
その第一声は――
「キャンベルさん!? あなたがグラッセラの新しい担当者なんですか!?」
「久しぶりだな、ジャスティン。元気そうで何よりだよ」
まさかの人選に対しての驚きだった。
「グラッセラの組織は一掃されると聞いてはいましたが、キャンベルさんがいらしてくださるとは……心強いですよ」
「すべてはベローズの差し金だよ。まったく、引退間際の年寄りを酷使しやがる」
「そんな、キャンベルさんはまだまだお若いですよ」
「そう言ってくれるのはおまえくらいなものさ」
キャンベルさんは苦笑いを浮かべながら白髪交じりの髪をボリボリとかく。
彼は騎士団最年長の古株で、すでに前線からは身を引いて後進の育成を手掛ける仕事についていた。俺も過去に何度も鍛錬でお世話になっている。
それがまさか、グラッセラの新しい警備責任者になるとは……本人の言葉から、どうもベローズ副騎士団長による人事らしい。
「それにしても、前任者はあまりにも杜撰な管理をしておったな。報告書のほとんどが虚偽の物だったよ。小金を掴まされて不正に手を貸すとは……同じ騎士として情けない限りだ」
キャンベルさんの執務机には大量の書類が置かれている。
恐らく、すべては前任者にかかわるものだろう。
あれをすべて整理しなくてはいけないなんて……同情するな。
ただ、俺としてはありがたい人事だ。
さっきの言葉から分かるように、キャンベルさんは不正を心の底から嫌い、軽蔑するタイプの人間――つまり、信頼できる人物なのだ。
俺は彼から少女に関する情報を得ようとしたのだが、
「キャンベル様、そろそろお時間です」
「おっと、もうか」
どうやらこの後で予定があるらしく、部下の騎士が呼びに来た。
「すまないな。実は今マクリード家がここへ来ていたな」
「マ、マクリード家が?」
なんというタイミング。
まさか俺たちを舞踏会に呼んだマクリード家がグラッセラに来ているとは。
「そういえば、おまえの勤務地であるアボット地方を治めるトライオン家もマクリード家主催の舞踏会に呼ばれているんだったな」
「ご、ご存知でしたか」
「王都ではちょっとした話題になっているよ。これまで一度も呼んでいなかったのに、なぜ今になって招待するのかってな」
そりゃそうなるよな。
第一、招待されているトライオン家がパニック状態だし。
「どうしてマクリード家はトライオン家を招待したのでしょうか」
「俺にも分からんよ。ただ言えるのは……トライオン家にとってはまたとないチャンスだってくらいかな」
それは俺も強く感じている。
今までは他の貴族たちと疎遠であったが、これを機に人脈を広げられたら――それは当主であるドイル様を含め、トライオン家の関係者全員の願いでもあった。
※このあと、12時、18時、21時にも投稿予定!
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