第43話 緊急事態
「どうかされ――」
「止めてくれ!」
それに気づいたブラーフさんが声をかけた瞬間、突然ドイル様が叫んだ。それに驚きつつも御者は言われた通りに馬車を止める。
直後、ドイル様は外へと飛びだしていった。
「「ド、ドイル様!?」」
彼の後を追うように、俺とブラーフさんも飛びだす。
すると、馬車を止めた理由が判明した。
ドイル様の進行方向にはこちらへ向かって走ってくる女の子の姿があった。身なりからしてどこかの村娘だとは思うが、少なくともカーティス村の子じゃない。ただ、その怯えた表情から誰からに追われているっぽい。
俺の見立てはどうも当たっていたらしく、彼女の背後から武器を手にした三人の男たちが追ってきていた。
ここはまだグラッセラから近い距離にあるので、アボット地方に比べると治安は悪いのだろう。エイゲンバーグ商会が監獄送りとなったとはいえ、似たような悪党はまだ他にもいるってわけだ。
それにしても……ドイル様とそれほど変わらないくらいの少女を武器を手にした男が三人がかりで追い回すなんて。
「さすがに放置はしておけないな」
少女は駆け寄るドイル様の胸に飛び込むような格好で転倒。そこに背後から迫る男たちが一斉に襲いかかる――が、その前に俺がまとめて三人を聖剣の力を借りて吹っ飛ばす。
「お怪我はありませんか、ドイル様」
「だ、大丈夫だよ」
ドイル様と少女の無事を確認してから、俺は立ち上がった男たちへ向き直る。その間にブラーフさんがふたりを馬車の方へと避難させた。
「俺たちの邪魔をするとはいい度胸してるなぁ、騎士さんよぉ」
「だが、たったひとりで俺たち三兄弟を相手にできるかなぁ?」
「痛い目を見たくなかったらその女を引き渡してもらおうか!」
こっちがひとりで、おまけに体格差があるからか、随分と強気だな。エイゲンバーグ商会の連中は聖剣を見て俺が聖騎士だとすぐに察して動揺していたが、彼らにはそういった素振りがない。たぶん、知識を持っていないのだろう。というか、さっき吹っ飛ばされたことを忘れているのか?
……しかし、ここまであの子にこだわるのはなぜだろう。
どうでもいい相手なら、騎士が出てきたところで引き下がりそうなものだが。
「「「うおおおおおおおっ!」」」
雄叫びをあげながら襲いかかってくる三人。
さっきとまるで同じ構図……芸がないな。
「はあっ!」
男たちの攻撃をかわしつつ、カウンターを叩き込む。
それぞれ額、脇腹、鳩尾に一撃を食らい、悶絶。
しばらくのたうち回った後で気絶したようなので、馬車に積んであったロープで縛りあげると、馬車の端っこに括りつけた。少し帰りが遅くなってしまうが、再犯防止のためにグラッセラにいる騎士たちに身柄を引き渡そう。
さて、問題はあの少女だが……一体何者なんだ?
俺は彼女からも事情を聞こうとドイル様たちのもとへ向かう――と、
「っ!? ド、ドイル様!?」
そこでは痛みに顔をゆがめながら足首を押さえるドイル様の姿があった。
※本日は18:00にも投稿予定!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます