フリマサイトで買った『レベル鑑定球』がどうやら本物っぽいのだが ~なんとなくステータスを上げていたら『スキル』が使えるようになった件~
第1話 「それではレベル鑑定を行います」と言いながら受付嬢が出してくるアレ
フリマサイトで買った『レベル鑑定球』がどうやら本物っぽいのだが ~なんとなくステータスを上げていたら『スキル』が使えるようになった件~
にぃ
第1話 「それではレベル鑑定を行います」と言いながら受付嬢が出してくるアレ
『レベル鑑定球(異世界産)』(シミ有り)
【商品の説明】
貴方の身体能力を数値化する水晶です
異世界転生者がよく壊すので困っています
インテリアとして飾っても素敵です
「いやいやいやいや」
さすがに出品者の悪乗りが酷すぎる。
アレだよね? わかるよ?
異世界に転生した人が序盤に行う儀式的なイベントで、『ここに手をかざすのじゃ』とか言われてレベル数値を見せてくれるアレでしょ?
なんで現代世界にあるんだよ……
ていうかメ〇カリに出品するなこんなもん。
でもネタ的に買ってみるのもありかもしれない。
値段は――
『15,000円』
目ん玉飛び出るかと思った。
「さすがにバカバカしい!」
せめて4桁価格なら購入もありかなと思ったけど、5桁は無理だ。
中学生が手を出せる値段じゃない。
「いや……たしかお年玉の残りがちょうどそれくらいあったような……」
えっ? 正気?
貴重なお年玉をこんなものに消費しようとしている?
『無駄遣いしないようにね』と言って渡してくれた親戚の気持ちを無下にするの?
………………
…………
……
一週間後、雑な梱包のレベル鑑定球が僕の手元に届いたのだった。
《取り扱い説明》
レベル鑑定球下部のUSBポートから充電し、気持ちを落ち着かせた状態で静かに手をかざしてください。
「充電式なんだ……」
説明書通り、USB充電を行う。
球の充電が完了するまでぼーっと待つ。
僕は今世界一無駄な待機時間を過ごしているのではないだろうか。
充電が完了すると、レベル鑑定球はうっすら白色の光を放ち出す。
準備が完了した、ということだろう。
「さて!」
いよいよ鑑定だ。
いや、さすがに偽物だってことはわかっているよ?
でも充電までさせたってことは何らかのギミックはあるのではないだろうかと期待してしまう。
ちょっとだけワクワクしながら僕は気持ちを落ち着かせて静かに急に手を添えた。
【赤江ジン】
レベル:3 体力:1 走力:2 知力:2 精神力:3
スキル:なし
「雑!!」
いや、ステータス的なものが浮かび上がったのは驚いたよ?
でももっと項目あってもよくない? 攻撃力とか防御力とか。レベル含めて項目5つってどうなの?
「どうせ数値がランダムで浮かび上がるだけの仕組み何だろうな」
せめて良い数字が見たいと思ってもう一度手を添えてみるが……
結果は全く同じものだった。
「ランダムですらないのかよ」
この微妙な数字を眺めるだけの装置に15,000円は冗談じゃないぞ。
せめて時間経過で数値が変わることを祈る。
「――ん?」
ふと、僕は大変なことに気づいた。
【赤江ジン】
「どうして……僕の名前が浮かび上がっているんだ?」
プロフィールを入力したわけはない。
ただ充電して手を添えただけ。
それだけで、どうして【名前】が判明するんだ?
「ジロー、お手」
「わん!」
庭先にレベル鑑定球を持っていき、ペットのジローに球に手を置いてもらった。
【ジロー】
レベル5 体力:4 走力:4 知力:3 精神力:1
「やっぱり……」
この機械、手を置いた相手の名前を特定してくれる。
それだけで世紀の大発明なんじゃないか? 犬の名前まで判明できるって相当だぞ。
ていうか、ジローお前、僕よりレベルが高いのか……
犬と比べて精神力でしか勝ってないの? 僕。
犬より知力低いってマジ?
「……勉強しよ」
数値に関しては全くのでたらめだとは思っているが、微妙にショックを受けてしまい、僕は自室で参考書を開くことにした。
【赤江ジン】
レベル:3 体力:1 走力:2 知力:3 精神力:3
スキル:なし
翌日、鑑定をしてみるとほんの一部だけ変化があった。
知力が2から3に上がっている。
赤江ジンはようやく犬並みの知力を身に着けたということか。
昨日は結構長い時間勉強をした。
逆を言えば勉強しかしていない。
この中でステータスが上がる可能性を考慮すると『知力』しかない。
「まさか、本当の本当に僕の現ステータスが表示されている……?」
そんなばかな。
それじゃあまるで本物のレベル鑑定機じゃないか。
勿論、偶然の可能性もある。
「検証してみよう」
【赤江ジン】
レベル:4 体力:2 走力:3 知力:3 精神力:3
スキル:なし
「やっぱり……上がっている」
僕はここ最近ずっと走り込みのトレーニングを行っていた。
1日2日では数値に変動がなかったので2ヶ月毎日行っていた。
結果、『体力』と『走力』、そして『レベル』も1つ上がっていた。
「は……はは……ほんもの……ほんものじゃん」
目の前の異物が宝であることを確信し、歓喜に震えた。
「……スキルが追加されとるがな」
トレーニングの後、習慣のように鑑定をしてみると、スキル欄に『跳躍』という文字が浮かび上がっていた。
「跳躍て。ジャンプ力でも上がっているってこと?」
なんて地味なスキルなんだ。レベル5程度ではこんなものなのかな?
しかし、どんな地味スキルでもスキルはスキル。なんてワクワクするワードなんだ。
早速使ってみたい。
「跳躍ってことはジャンプ力が上がっているってことだよな?」
試しにその場でぴょんぴょん跳ねてみる。
別にいつも通りのジャンプ力だけど?
「じゃあ全力……で!」
足腰に力を入れ、屈伸の姿勢から思いっきり飛び上がる。
ガンっっ!!!!
「いったぁぁぁぁぁっ!!!」
天井に思いっきり頭をぶつけた。
……うん。跳躍力上がってるわ。素ジャンプで天井に頭ぶつけるって相当だ。
頭のコブをさすりながら、僕は外へ出ていった。
夜間の河原。
周りに誰も居ないことを確認して先ほどと同じ要領で思いっきり跳躍してみた。
「うぉぉぉぉっ!?」
飛んでる!?
やばい飛んでるよ! 僕!
えっ? 10メートルくらい飛んでない? 気のせい? 気のせいじゃないな。だって地面遠いもん。
「す、すげ、スキル、すげ!」
人知を超えている。
自分がゲームのキャラになったかのような感覚に震えが奔る。
「って、着地……着地どうすんの!?ねえ!? 下がってる! とんでもない高さから落ちてる! し、死ぬ! やばいって!」
10メートル跳躍したら、10メートルの高さから落ちるということで。
抗おうにも空中ではどうしようもない。
僕は成すすべなくそのまま10メートルの高さから地面に激突したのだった。
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