とある駐在所の事件簿
筑紫榛名@12/1文学フリマ東京え-36
(一)
二〇二三年六月二八日水曜日一〇時頃。
この日は深夜からずっとシトシトとした雨が降っていた。車で走ることに支障はなかったが、小雨というほど弱い雨ではなかった。
鉄道駅もある村の中心部には南北に県道が走っていた。昔、鎌倉街道と呼ばれていた通り道だ。汎人たちが乗る車はその道から山の方へ向かう道に入っていった。
県道も比較的高低差のある道ではあったが、山へ向かう道は、しばらくはごく普通の田舎道であったものの、橋を渡り谷を進んで行くにつれてカーブがきつくなっていった。勾配も急になり、車のギアを落とさなければスピードが出なくなるほどだった。
(続く)
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