第6話

 【真中、出来れば先奈だけは許してやって欲しい。】


 寮長には普段からお世話になっているので、本当は俺は関わらないのが自分の中で一番なのだが、


 「ちょっ、あんた先奈ちゃんの部屋に何の用があるのよ!」


前ノ宮だ。


 「寮長に頼まれごとがあって。」


「頼まれごとって何よ?」

 疑いの目をしている。


 「先奈と仲良くして欲しいってこと。」


「はぁ?いくら親戚とはいえ、その加担はずるよ!」


「加担ってなんだよ。ただ仲良くしようとしてるだけだろ。」


「全然分かってない!とにかくアンタはご飯作りなさい!」


「だから嫌だって!」


 いつの間にか声が大きくなっていたのか、部屋から先奈が出て来た。


 「先輩達どうしたんですか?」


「俺は寮長に頼まれて少し先奈と会話をしに来た。」


「私はコイツに用があるのよ。」

  ブザーを鳴らした。


「寮長お願いします。」


  「はいよ、ほんと呆れるわね。あと先奈!」


「・・・はい。」


「後悔すんなよ。」


 そう言って足掻く前ノ宮を怒りで黙らせ、お仕置き部屋まで運んで行った。


「あの、先輩。」


「とりあえず部屋に入って良いかな?」


「あ、少しだけ待ってください!」


 部屋から色々と音が鳴った。そして、かなり待った後、やっと彼女が出て来た。


 「お待たせしました。」


ーーーーーーーーーー


 久しぶりに先奈の部屋に入った。


 見られたくないポスターでも貼ってあったのか、剥がしたばっかりのようなテープの跡がある。


 「ごめん、事前に都合聞けばよかっね。」


「はい、出来ればお願いします。」


それから少し沈黙になる。


 「先輩は、どうしてここに?」


「寮長から先奈と仲良くするように頼まれてな。」


「お姉ちゃんがですか。」


 「そうだ。」


しばらく先奈は黙り込む。

「・・・ごめんなさい。お姉ちゃんの頼みとは言え、それは出来ないです。」



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