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「へっ?」
いきなり自分の顔の横に小さな生き物が現れたのを見て、レリアは驚いて後ずさった。
妖精は飄々とした顔で「やあ」と小さな手を挙げている。
「よ、妖精だと?ばかな、妖精の目撃はもう千年前で途絶えている。てっきり絶滅したのかと思ったが」
「……妖精ですか。長生きはするものですね、この土地で暮らしてもう長いのに、初めてお目にかかりました」
ロナルドは目の前の光景が信じられないのか、何度も頭を振ったり、頬を自身の両手でぺちぺちしており、ジェスは瞳を丸くして固まっている。
この中で一番冷静なコリアが、妖精に話しかけた。
「君がレリアをここまで読んだのかい?」
妖精はこくこくと頷き、何かをしゃべっていたがコリアには聞こえなかった。
「ーーえ?妖精の女王様が呼んでいるからここに招待したって?」
レリアが耳の中に水が入った時のように耳をたたきながら、顔をしかめて聞き返した。
妖精がまたこくこくと頷く。コリアは驚いた顔でレリアの方を見た。
「レリア、妖精の声が聞こえているの?」
「……そうみたい。信じたくないけど」
パチンとまた音がして、いきなりきゃらきゃらと甲高い笑い声が響いた。レリア以外の三人はぎょっとしてあたりを見回した。
その様子を見て、更に大爆笑した妖精はその場を飛んで一周し、「こっちよ」と先ほどまでは見えなかった森の奥に続く道に案内した。
「早く、早く」
見ると、もう三体妖精が増えていて惑わすように周りをくるくると舞っている。
「なるほど……」
不意にレリアから低い唸り声が漏れた。
ぱちぱちと瞬きをする妖精をレリアは睨みつけた。
「あんたたちのせいだったのね!ものすごい頭痛がしたんだから!!」
怒るレリアを見て、妖精達はきょとん、とした後、小さなおててを口元に当てて楽しそうに笑い出した。
ふふふ、るるる、きゃらきゃら
笑いながら自分の周りをまわる妖精達を見て、頭にきたのか、レリアは妖精を捕まえようと追いかけ始めた。
「まちなさいよ!!」
その後ろをコリア達が顔を見合わせてやれやれと頭を振りながら追いかけて行った。
「捕まえた!!」
きゅう、バタバタ
さっきまでレリアをからかっていた妖精だが、ふざけすぎて一体がレリアに捕まってしまった。慌てて、小さな体をよじり、バタバタと羽ばたいて逃げようとするが、レリアがぎゅっと捕まえているため逃げられない。
「さて、どうしてやろうかしら……」
「レリア、顔が怖いよ……」
レリアと妖精の追いかけっこを見ていたコリアもあきれた顔で妖精を見つめていた。
きゅ、きゅうー
「ちょ、あれだけ人を馬鹿にしてた方がなんで泣き出すのよ!!」
レリアの形相があまりにも怖かったのか、妖精はぽろぽろ大粒の涙を流し始めた。慌てて握りしめていた手をほどいて掌に載せるも、妖精は泣き止まない。
今まで様子を面白そうに伺っていた他の妖精達も集まってきてあの手この手で泣き止ませようとするが、泣きだしたら止まらなくなったのか、なかなか涙は止まらなかった。
途方に暮れたレリアに先ほど聞いた優しい声がかけられた。
「うちの子が、迷惑を掛けましたね」
振り向くと、先ほどまで森だったはずのところは泉になっており、そこに人ならざる美しさをもつ女性が浮かんでいた。
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