そよぐ死体の放浪記
初霜うに(うにうに)
死の自覚
第1話「初めての異世界」
「んー、やっぱ死ぬべきかなぁ」
目の前を通り過ぎて行く人々に聞こえないよう、
同年代と比べると大きい方に含まれる背丈、肉付きの薄い体。無愛想に結ばれた唇と一重で切れ長の瞳が相まって人相を悪くしていた。
個性も何もない、正に平凡な少年。15歳という精神が不安定な年齢。特に何もなくとも自分の存在価値を疑い、死に関心を持つ、そんな年齢。
「……やっぱやーめた」
死ぬなら親が死んでからにしよう、続けてそう呟いて、殊波は重そうな腰を上げた。
県に1つはあるだろう有名チェーンのコーヒーショップ。ここが最近の殊波の居場所になりつつあった。自宅がここと近い関係で、ふとした時に足が向いてしまうのだ。そのため服装にも気を使わず、身につけているのは黒のTシャツに白のパンツ、スニーカーだけだった。
見知りの店員さんがいるカウンターに挨拶をしてから(コーヒーは先に買うシステム)、店を出た。
見知らぬ土地だった。
「あ……、え?」
上を見てみると突き抜けるような青空が舞っている砂埃によって汚されてしまっている。長く続く大して舗装されていない道の両脇には歪な形の建物がずらり。しかしそれらは決まって1階建てで、玄関の扉も立派なものではなく布が垂れ下がっているだけ。
加えて、度々どこかから上がる歓声と、その度に鼻腔に潜り込んでくる、鉄の匂い。
明らかに日本ではない。発展途上国といった感じの風景。
しかし、それらを決定的に否定する景色が目の前に広がっている。
イカつい面をした明らかに背の低いおっさんや、長い耳の先が尖っている綺麗なお姉さん。間違いなく、ファンタジーでお馴染みのドワーフとエルフだった。
その2種族が目の前を平然と歩いているのだ。
加えて、殊波に追い打ちをかけるように受け入れられない非現実が目に飛び込んでくる。
先程のエルフのお姉さんが、パイプらしきものを吸うために火を付けていた。指先から出る炎で。
「……クールビューティ、とかふざけてる場合じゃないよな……」
入口を逆に通れば出口になるはず、そう思って、加えて現実逃避の意味合いも兼ねて、たった今通ってきた店の扉をもう一度くぐろうと後ろを振り向くと。
店の扉程に体格のいい、大男が3人立っていた。
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