第2話

それにしてもめったに行かない県外で、よりによってこの女と出くわすなんて。

いったいこれは、どういう偶然なんだ。

「もうこれは運命なのよ。あなたと私の。これで間違いなく決定ね。誰も邪魔なんてできないわよ」

いったい何が間違いなく決定なんだ。

俺は女を無視して速足でコンビニを出た。

女は後ろから何度も運命がどうのこうのと言っていたが、俺は車に乗り込み、すばやく発進させた。



帰るまでの約二時間の道のり。

俺は女が車でつけて来るのではないかと警戒したが、俺をずっとつけてくる車は一台もなかった。


数日後、アパートに帰ろうとしたときのことだ。

外階段を上り、外廊下を進んだ先に俺の部屋があるのだが、階段を上り廊下を見た時、ありえない者がそこにいた。

あの凍る声の女が俺の部屋の前に立ち、ドアをじっと見ているのだ。

まるでそのドアが、女にとってとてつもなく大事なもののように。

――えっ?

俺は素早く階段に戻った。

ゆっくりと階段を降りた。

そして階段が見え、むこうからは見えにくいところに身を隠した。

しばらく待っていると女が階段を降りてきた。

そしてそのままどこかへ行ってしまった。

――どういうことだ?

あの女はどうして俺の住んでいるアパートを知っているのだ。

だいたいあの女、会ったのは県外で、そもそも俺の名前すら知らないはずだ。

なのにどうして。

考えたがわからない。

ただ言いようのない恐怖を感じただけだ。


その数日後、また同じことが起こった。

帰ろうとすると、あの女が俺の部屋の前にいるのだ。

素早く身を隠す。

そのまま待っていると、階段を降りてどこかに行くのだ。


そんなことが数回続いた。

俺はいたたまれなくなり、警察に相談した。

「それくらいではねえ」

警察は実害がない限り動けないと言う。

そこをなんとかと押したが、のらりくらりとかわされてしまった。

その顔に、やる気と言う文字はなかった。

俺は警察があてにならないと言うことを知っただけだった。

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