第5話

過去編 春

 

 「ここがあなたの会社?」

 見るからに金持ちの家だ。


 「いや、ここは本社じゃないよ。ここは俺の家」


 「・・・何、私を監禁するつもり?」


 「ち、違うよ!見ての通りこの家大きいでしょ?だから、家事を一通り任せたいんだ」


 「へぇ、まさかそれが仕事??」


 「そうだよ」


 「はぁ?マジで言ってるの?」


 「マジだよ」


 「もちろん住み込みでやってもらうことになる」


「時給は?」


 「ーーーだよ」


 「前のバイトより高い」


 「あと、別に仕事中でも掃除とかちゃんとしてくれるなら、空き時間は好きなことしてて良いから」


 「やるわ」


 そして、私はバイト先を変更した。父親にはバイト先は教えなかったと、と言うか聞かれなかったが、時給が上がったから喜んでokされた。


 

 「なぁ、もう終わったけど」



 「はやいね」


 「と言うかほぼ仕事なかったけど」


 「なら、あとはゆっくりしてて。寝ててもいいから」


 「はぁ?残り時間7時間もあるんだけど。フルだから」


 「いいよ。俺の作った仕事で俺が払ってるし。」


 「そうだけど」






 仕事とは言えない、ただ最初に掃除してあとは自由、家と変わらない。


 「ねぇ、本当にこれでいいの??」


 「良いよ。落ち着かないなら外に行ってもいいよ。友達と遊びたいならお金も追加で出すよ」


 「はぁ??何を言ってるの?」


 余計不安になって来たんだけど


 「ねぇ、なんで私だったの?こんな仕事なら、誰でも良いじゃない」


 「・・・」


 「答えて。じゃないと辞めるわよ、この仕事」


 「・・・単純に趣味だよ。」


 「はぁ?」


 「君が可愛いから、一緒にいて欲しくて」


 「・・・辞めていいかしら?」

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