第43話 林の中で
急いでナトムさんに慣れない文字で手紙を書いた。
手紙の中身は、視察先でも陛下にウォーキングを続けて欲しい、あわよくば私も同行させて欲しいという内容だ。
さすがにこの国の王様に直接手紙を書くわけにはいかないので、ナトムさん宛てに手紙をしたためた。
それから数日たった。だが手紙の返事は来ない。
厨房で皿洗いをしながら溜息を吐いた。
「ナトムさん、忙しくて手紙見れてないのかな。どうしよう」
「カンナ! あなた宛に手紙が届いてるよ」
「へ?」
厨房でよく話しかけてくれる女性が、小走りで手紙を渡しに来てくれた。
どうやら厨房用のポストに入っていたみたいだ。手紙の差出人の欄を見ると、ナトムさんからだった。
「ありがとうございます。朝はポストを見たんですけど無かったから、今日はもう来ないかと思ってました」
「確かにいつもより遅い時間だね。まぁ視察先の各地から手紙を出してるから仕方ないさ」
中を開くと、私の同行を許すといった内容が書かれていた。今日の夕方に馬車を用意するから、それで陛下の所まで来なさいとの事だ。
良かった。3ヶ月のリミットが近い時期に何も出来ないのは正直不安で仕方なかったから、ナトムさんに感謝だ。
急いで旅の準備をして、迎えにきた馬車に飛び乗った。
王宮を出て、王都を抜ける。
実は私は王都から外に出た事がない。人工池の視察に同行した時も王都のはずれで、ギリギリ王都内だった。だから今回が初めての王都外の外出だ。
王都の外を出ると貴族達の領地となる。
少しドキドキする。関所のような所を抜け、どこかの貴族領に入った。
馬車の窓から見える景色がだんだんと殺風景になってきた。
だけど田畑や、湖、遠くに見える山々を見るのは楽しい。
しばらくすると馬車は大通りを曲がり、林の中の一本道に入った。抜け道だろうか。
だけど、走っても走っても、なかなか林を抜ける事はない。
大丈夫だろうか。少し不安になり、馬車の前に付いている小さな窓をスライドさせて、御者さんに話しかけた。
「あの、すみません。あとどの位になりそうですか?」
「……」
「すみません!」
「……」
あれ? 馬車が走っている音で聞こえないのかな。
私が首をひねっていると、しばらくして馬車は止まった。
窓を覗くと、まだ林の中だった。大きな木造の小屋も見える。休憩だろうか。
御者さんが馬車の扉を開けてくれた。
「どうぞ、お降り下さい」
「あの、もしかして休憩ですか?」
「えぇ、そうです」
そうなのか。それにしても、こんな薄暗い林の中でなくても良いのに……
御者さんに連れられ小屋に入る。中は広かったが、ロウソクの火が数カ所にしかないので、全体的に薄暗い。家具もボロボロの机や椅子しかない。
ここで休憩はちょっと嫌だなと思ってしまったが、業者さんはさらに小屋の中を進んでいく。
「カンナ様はこちらでご休憩下さい」
広い部屋を突っ切った先に、別の部屋の扉があった。
「はい、分かりました」
扉を開けると、中は真っ暗だった。
え? 何も見えないんですけど……ロウソク借りれないだろうか。
その瞬間、背中を思いっきり押された。
倒れた拍子に両手が床につく。
「え、何するんですか?」
私が振り返るのと同時に扉が閉まり、鍵をかける音がした。
え? 鍵?
私が混乱していると、御者さんの声がした。だが先程までの口調とは、まるっきり変わっていた。
「悪いな、お嬢ちゃん。ここであの方が来るまで休憩しててくれよ」
「へっ! ちょっと、どうゆう事ですか?」
私の問いには答えず、御者の足音が遠ざかっていく。
一気に血の気が引いた。
「うそ……」
どうやら、誘拐されたようだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます