第20話僕たちはジャイアントキリングを起こしたい
ピーッ 試合停止 水分補給
「んっぐ、」
「…よし、とりあえずこれで同点にまで追いついた。みんな、よくやってくれた!」
「これくらい余裕っすよ!」
「余裕とは言うがな真、お前にはここからもっと神経を張り巡らせてもらわなければならないんだ」
「蒼…おい、無理すんな。立たない方がいい」
「先生…僕は立てますよ」
蒼は腰を上げてベンチで出来ていた影を潜り抜け、太陽の下へと上がった
「……先生、みんな、ごめん。」
突然頭を下げだした蒼に俺含め全員が動揺した。
「なんで、頭を下げるの!?キャプテン!」
「蒼、顔をあげて」
「だってよ、、っぐ、こんな大事な、試合で、簡単に怪我して、こんな、んじゃダメだよ…!」
蒼が初めて俺の前で、いや、恐らくみんなの前でも初めて見せた顔だろう。
「みんな……頼んだよ!」
「勝つさ、蒼。俺たちは勝つ。あんなやつらが格上なわけないだろ?」
「そうだ!」
「そうだよ!」
「堂又…」
「だからよ、いつものやってくれよ」
「堂又、……わかった!やるよ!」
「いいねえ!」
「円陣組むよー!」
「あいっ!」
トントントンッ
「あれ?先生、なんで円陣に入んないの?」
「……あ、ああ。みんながかっこよくてつい」
「…やろう、せんせー!」
「もちろんだ」
トンッ
「みんな、まず…ここまで最高学年の僕たちについてきてくれてありがとう。」
「勝ちもあったけど、負けも沢山あった。でも!!結果は関係ない、今までの結果はな、今日で……この場でひっくり返せば全てがここまでやってきて良かったの言葉に変わるんだ。だから、格上なんて関係ない。」
「起こしてやろうぜ。さいっこうの!!!ジャイアントキリングを!!!」
「勝つぞおおおおおおおおおお!!!!」
「うおああああああああああああああ!」
ピーッ 試合開始
「ふ……」
「真矢ああああああああいけえええええ!」
「サイドだみんな!」
「いくらなんでも焦りすぎだろ幸一……こんな雑魚にそんな焦んなくても」
「っな!?」
「ボーっとしてたらその雑魚にすら置いてかれるよ!」
「くそが!」
「何やってんだよ真矢!」
「守備守備!」
「松田!」
「真くん!」
ここから真、中央へ…ここからどこにパスするかによって試合は動くはず。真がこの試合の支配者となる…
ドンッ!!
「は!?ミドルシュート!?」
ミドルシュートとはゴールよりもやや距離がある地点からのシュートのことを言う。
たった1試合で、積極的になったな真。
元イングランド代表のレジェンドミッドフィルダーはその「積極性」の詰まったミドルシュートは…大砲と呼ばれるようになった。
彼のシュートはまるで、巨大な弾丸
でかいのに、そのスピードと正確さはまったく揺るがない。
彼のシュートは必ずゴール枠内へと飛んでいく。
ドンッ!
「く…!!危ねえ!」
「枠内シュート!!惜しい!弾かれた!」
「ゴールキーパーが弾いた!まだ詰めろ!」
そうか、まだチャンスはある!ゴールキーパーが弾いたボールはしばらく無防備。このボールを持ったチームによって一気に戦況が変わる!
「クリアああああああ!」
「空中に浮いた!」
「とれとれとれ!空中戦!」
ビュンッ
「いいっ!?」
ドンッ!
「幸一、、、!!」
「まかせろ!」
空中に飛ぶのが速すぎる、どうなってんだよっ!!
そしてその先にはトップストライカー、エースがいる…!
!?いや待て、ボールが不安定だ。彼の足下にボールがきちんとついていない!
トラップミスか!
「…!雄二!」
「浮いてるボールは俺がキャッチすれば!!」
この時、キーパーの雄二はペナルティーエリアギリギリのところで勝負を仕掛けた。相手はストライカーの幸一。
このままトラップミスで幸一がボールを回収出来なければ、雄二の勝ち…
「馬鹿が!!!」
トンッ!
空中に浮いたボールを、さらに上に押し上げた!?
「回転《ループシュート》!」
空中からゆっくりと落ちていくボール、その着地点は、ゴールの中だった
俺は…また止められないのか、、!
またみんなに迷惑かけるのか…
俺は、キーパーなのにっ、、、
ゴンッ
「いってえええええええええええ!」
「え、、入ってない!!!」
「は!?監督、、あいつ、ヘディングでクリアしました!!ボールが苦手な悠太が、!」
ドンッ!!!
「悠太!」
「誠、繋げて……キャプテンに頼らなくても出来るよ!!」
「カウンターあああああああああああ!!!」
誠はフライパスが得意だ!そしてその先には、いつだって
「エースがいる!!!」
「はあ…は、、、あ。」
「ごめん、ありがとう。」
「雄二……雄二は失点してないよ!」
「悠太…」
「それよりほら、、カウンターだ。」
「堂又くん!」
「全力で守れ、絶対に通すな!」
「ふーふー。」
「…!空いてるのは、、」
「真ん中マーク、、!」
「太郎!」
「き、きた!」
ゴールの、、、目の前…!
「太郎、こっちフリー!」
大輔…!
「太郎ーーーーーー!!!」
「堂又く」
「撃てええええええええ!」
「真ん中、なんで、空いてる、、!」
「入れええええ!!」
ボンッ、
◆
「太郎、太郎。どうしたのー?早くいかないと、先生待たしちゃってるよ」
「よっしゃああああああ!」
「………わあああ!」
「ちょっ、ちょっと、太郎?」
「かっこいい。」
「サッカー?」
「お、俺、ここ入りたいよ、お母さん!」
学校見学の日に偶然見かけたサッカーチームの練習に、俺はあっさりと心を奪われた。
かっこよかった、点を取ってるシーンが、とにかく…きらめいて見えたんだ。
俺が憧れたのは、堂又くんというヒーローだった。
◆
ピーッ 2-1
「っ!やった!!!やったああああああああああ」
「入ったぞ、太郎!よくやった、偉いぞ。」
「俺、なりたかった…エースに!」
「なってるさ、エースにもヒーローにも!」
俺は、ヒーローなんだ!!
「なんてことだ………」
ピーッ!!!! 試合終了
「勝ったああ!」
「史上最高のジャイアントキリングだっ。」
「みんなあああ…、よくやってくれた、、」
ドンッ
「え??監督……?なんで、泣いてるの?」
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