第50話 Go Back In Time(時を遡る) 2

 (己の全てを纏い、とどろ雷鳴らいめいに身を捧げよ。稲妻いなずまを身にまといしは、いずれ光の力が己自身となり元に返る。それをもって己は光の使いとなす。感じた場所に移動する。己の力と引き換えに。)


(光の力は己の想いに合わせ、悪の企てを拒むだろう。悪は戦意を失い、賢者は学を失う。光の力は己の想い、善に徹せよ。)


 「雷鳴に身を捧げよ……。ワンドル様、もしやこの雷鳴とは、グアムスタン山の雲ですか?」

「いかにも……。とても測り知れないパワーだった。死を覚悟したくらいだ。結果、マタスタシス=テクだけを習得出来た。」

「あの稲光いなびかりを受けたと言うのワンドル。そんな無茶な、そんな事したら死んでしまう。」

「その文面をもっと理解すれば自ずと足が向く。己の全てを纏いとは、全ての術式を最大限のパワーで身に纏い続ける事。」

「ワンドル様はあのグアムスタンの雲から力をさずかったという事でしょうか?」

「その様だ。雷鳴が収まると、私は気を失い倒れていた。」

「最上級魔道士にしか成し得ない。しかも自分のパワーを最大限に保ち続けて得られる術式。」

「鍛練は必要ではなかった。必要なのは光に勝るパワーの持続のみの様だよ。」

「僕には程遠い。力不足です。」

「私も自信が無いわ。でも習得は不可能では無いのは理解出来た。子供達のためには習得を目指さなければ。」

「ですが、ミランダ様。文面のこの部分が心配です。ワンドル様、この、” 己の力と引き換えに“とあるのはどういうことですか?まさか身の危険が付いて回るのでは?」


 ワンドルは少し影のある表情になったがガムは気が付かなかった。だがミランダだけは察した様だ。


 「ワンドル。私も習得を目指します。ですから、しばらく過去の捜索はやめてください。」

「いや、私のことは心配要らん。ミランダ、無理して習得を急ぐ事はない。」


 ミランダの目に浮かべた涙はガムには気が付かなかった。

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