第3話 生まれ変わって一緒になろうね?
「信じがたい話だが。かなりの数の被害者と一致する情報があるようだ。つまり、君の考えでは、あと40人以上の被害者がいると言うわけだね? 警察が発見に至っていないだけで」
確認作業が増え、事情聴取は何日にも及ぶことになった。途中でオレの情報から新たな遺体が発見され、逮捕もされた。たぶん世間ではオレが犯人ということになっているだろう。
「はい」
オレは頷いた。
苦しい。
ヒナを含めて99人、オレと出会って、オレを救ってくれたカノジョたちは、全員殺されている。その可能性に気付いて、考えてきたつもりだけど、自分で口にすることで、さらに見つかっていなかった遺体まで出てきて、まだ目を背けていたのだと気付かされる。
「知りうる人間は君しかいないのでは?」
「オレもそう思います」
客観的に言えば犯人はオレだ。
何日も、泣いたり頭を抱えたり、それは君の下半身の節操のなさの問題じゃないかと指摘されたり、弁護士がやってきて無罪を勝ち取るために黙秘すべきではとアドバイスされたり、マスコミから手紙が届いたり、世間ではイケメン犯罪者でネット上でファンが続出してるとか週刊誌に書かれたりしながら喋った。
喋ることで実感が湧いてくる。
やっていないけれど、他にだれがやるんだと言う話でしかない。やったのかもしれない。でもやってない。やり方すらわからない。行ったことのない沖縄にも被害者がいる。
「でも君は殺していない。なにかの悪夢だ」
最後、警察は首を振った。
信じてくれていたらしい。
少なくともヒナ殺害時のアリバイはある。
働いていた時間だった。
ただ、状況がオレを犯人だと言っている。
被害者の共通点を知りうる人間が他にいるはずがないのだ。それはどうしようもない。やってもいないことで逮捕されたくない。それはオレだって思った、だからこそヒナに警告したのだ。
それがアリバイ工作らしい。
最後の一人だけを別の人間に殺させた。
ひとつの殺人を否定することで、他の98人分の殺人をも否定できる。それがオレを犯人とするストーリーらしい。心臓を抜く手段が不明なのにそんなことを検察だって立証できないだろうと思うが、それは警察に意見しても仕方がない。
拘置所に移送、そして長い裁判生活。
そうなるはずだった。
「ずいぶん悔いた顔をしてるね」
「……」
減灯後の独居房。
九時就寝は早すぎてどうしても思い悩む長い夜にその女はいた。仰向けに寝転がる視線の先、長い黒髪が顔を隠していたが、やけに短いスカートで白い生脚が浮かび上がって現実感がない。
「私を選ばなかった結果がこれだよ?」
「お前が犯人か」
直感が結論を出していた。
「生まれ変わって一緒になろうね?」
女は答えなかった。
「!」
その顔を見てやる。
そう思って立ちあがったオレは、しかしそのまま前に倒れた。視界は暗転していた。心臓を抜かれた。そう感じた。100人目で完成する殺人だったのだと理解する。
「魔法で殺された人間は転生する。私もすぐに追いかけるよ。今度は運命を待たない。必ず、手に入れてみせるから」
聞こえていたのか、記憶に刻まれたのか。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます