失恋の断片たち

チャガマ

第1話 蜥蜴

私の部屋に忘れていった煙草を、彼は二か月も取りに来ていない。


まだ九本も残ったままなのに。


だけど彼の愛用していた黒いジッポーはここにはない。


まるでトカゲの尻尾切りのように、煙草と私がこの部屋に取り残されている。


煙草という餌を与えられた私は、まだその一本を吸うことができずにいる。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る