[Casual POP Ver.]◆Prologue+β(2024/12 追加エピソード)

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【カジュアルポップバージョン】Prologue+βアレンジ



 ――雪白色の美しい髪、宝石のように輝く蒼碧色の美しい瞳に、耳が尖った◆族の子・レイリアは、仲間と聖なる結界の外に出て〈禁断の森〉に入り、魔界に向かっていた。


 仲間は元聖騎士の美女・ジゼル、■■族の王の子・ヴィルヘルム、元盗賊のブレンとテオ、魔女・エリザベータ、うさ耳(白兎)獣人・ビト、回復術師・アリエルの7人。



    ◆  ◇  ◆  ◇  ◆  



 目指すは魔界、マジ命がけ。


 仲間と一緒に聖なる結界ぶっちぎって〈禁断の森〉に突入中。合計7人でワチャワチャしてたけど、魔力を乱すヤバ森のせいで全員バラバラになっちゃった。



 俺達が直面してんのは、魔界の騎士・エリゴールの襲撃。


 コイツは〈黒×赤〉のイカつい鎧兜装備で、魔界の〈魔馬〉にドヤ顔で乗ってる。顔見えないけど。兜から生えたデカい角がマジでゴツい、圧がエグすぎるって。


 今、この場にいるのは、俺とジゼルとブレンだけ。


 そうそう、先に言っとくけど、俺がレイリアだ。


 名前が女の子っぽいとか言うなよ? てか、俺は今、ガチで女だから。


 元々アラサー・ダメダメ男だったのに、気づいたら異世界転生してて、しかも超絶美少女になっちゃったわけ。自分で言うのもなんだけど、ヤバいくらいカワイイ。前の俺が今の俺を見たら、即惚れて失神コースだね。


 その経緯はいずれ語るとして、今はマジで激ヤバな状況。


 エリゴールの魔力がブッ壊れてて、周りの空間がグニャグニャ歪み始めてんの。


 地面とか景色が赤紫に変色して、木が捻じ曲がるガチホラー演出。木の表面にはドクロフェイスが浮き出てて、もう見るだけで鳥肌実りそう。多分、広範囲の空間に影響を及ぼす変形魔法に、幻術系の魔法が混じってそうだ。知らんけど。


「ギュヒヒィイィン‼」


 エリゴールの乗る〈魔馬〉が超キモい声で突撃してきた。


 馬なのにドラゴンみたいな翼と爪、牙までフル装備って何事?


 もはや「馬」と呼ぶのもはばかられるレベルの化け物感。


 ガギィイィィィンッ‼


 ジゼルが素早く反応し、エリゴールが持つ〈髑髏の装飾の槍〉を弾いた。


 彼女の攻撃力はマジ規格外。エリゴールは、魔馬ごと10m以上吹っ飛ばされた。


「…………‼」


 エリゴールの顔は兜で隠れてるけど、口元だけ見える。


 魔界人ってのは魔族とは違うらしく、骸骨が混じったようなおっかない顔つきらしい。


 あの口の歪み具合……どう見てもジゼルのチート級パワーにビビってるぜ。




 ジゼルは180cm近い長身で、ロングの黒髪が揺れる超絶美女だ。クッソ可愛い系の俺(レイリア)とは全く違うタイプ。


 軽装だが、アダマンタイト製の胸当てと肩当てを装備し、元聖騎士で剣士としてもマジ一流。その剣は元々巨人の剣で、彼女お得意の圧縮系魔法で小さくして装備してる。圧縮しても1トン超え。そんなクソおも武器を電磁魔法の磁気浮上で軽々振り回す。物理攻撃力最強だ。持ち運びも『電磁の鞘』って専用のアイテムを使ってる徹底ぶり。


 しかし、彼女の真の力は、広い空間でこそ輝く。今のこの歪んだ空間じゃ、力を発揮するのが難しそうだ。




「レイリア、使える⁉」


 ジゼルが長い髪を靡かせながら俺に聞いてきた。


「チャージタイムは終わってる! いつでもイケるよ!」と俺は応えた。


 自分で言うのもなんだが、俺の声はマジでカワイイ。何せ超絶美少女ハーフエルフ――いや、もどきだからな。もどきってのはアレだ。今は大人の都合で言えない。


「く、空間支配能力を持つ敵は、初めてだ……」


 珍しくブレンが焦り顔。冷や汗を垂らして、360度周囲を見渡した。


 こいつ、普段は楽天家で自信満々。上半身裸でボディービルダー系の筋骨隆々マン。


 自慢の筋肉と、そこから迸る〈魔霊気〉で攻撃も防御もフルパワー強化。


「鎧なんていらねぇ!」とか豪語してたけど――




 ヒュンッ――グサッ‼




 突然、周囲の樹木の枝が螺旋状に捻じれ、槍となってブレンに突き刺さり、貫通した。


 ブシュウゥゥゥゥゥゥゥ……‼


 血がドバドバ飛び散り、〈枝槍〉の先には……ブレンの心臓が突き刺さってた。


「……ぐふっ……」


 ブレンは血を吐きながら、ゆっくりと倒れた。




 ギュルルルッ……




 刹那――周囲の樹木の枝が螺旋状に捻じれ、槍となって〈無傷のブレン〉を突き刺そうとしたが、俺は即反応。愛用の『彗星の剣』で〈枝槍〉を斬り落とした。




 俺が、〈回帰魔法〉を使った。




「……⁉ ……ナ、ナンダ……ト?」


 エリゴール、めっちゃ焦ってて草。


「……うっ⁉ ……わ、悪ィ……い、1回使わせちまったか……?」


 ブレン、なんとなーく状況を理解したみたい。


「気にしないで……ブレンの周囲に限定して1秒も満たない程度だから……」


 と言いつつ、内心では思うわけ。


(だから言わんこっちゃない!)


 何しろ、ブレンは上半身裸だしな。対生物では回避能力バツグンだけど、全方位攻撃にはちょっと弱い。いや、マジで弱い。


 俺の思考と言動がチグハグなのは、心の中じゃ日本語で考えて、話す時はこの世界の言語で喋ってるからだ。


 元々のレイリアの口調がインプットされてるせいで、話し方がちょっと優しくなる。


「レイリア、鼻血……」


「えっ?」


 ジゼルに言われ、気付けば鼻からツーッと血が垂れてやがる。


(なんで……? 二週間も寝たのに……)と、心の中で俺は呟いた。




「――前の戦いでエンダー・エレグレシオンを使い過ぎだ」




 頭の中で声が響く。俺の中に封印されてる、例のヤツだ。


(うるさいな~……わかってるよ!)




 回復魔法を超える超回復魔法として存在する〈回帰〉魔法『エレグレシオン』……さらに改変機能を併せたのが、回帰改変魔法『エンダー・エレグレシオン』だ。


 本人の治癒力の加速・強化するのが一般的な回復魔法だが、回帰魔法にはそんなの関係ねぇ。回帰魔法は、「治す」ってより「元に戻す」って効果に近い。


 ハッキリ言って究極にして最強の回復系魔法だが、使うと魔力がアホみたいに持ってかれる。使い過ぎると俺は意識がぶっ飛んで、下手すりゃ数週間寝っぱなしコース。戦闘中に気絶したら終わるから、マジ乱用厳禁。


 ギュオォオォオォォォォォ……


 周りの樹木が一斉に動き出した。狙いは……俺!


 回復役から潰すのは戦闘の鉄則。ジゼルとブレンも気配を察して、緊張モード。


「……焔の舞……!」


 ボボッ! ボボボボゥッ‼


 火属性が得意なブレンが、持続火炎魔法『デュラ・ヴラム』を剣に纏わせ、襲ってくる枝槍を「ザンッ! ズザザンッ!」と焼き切り始めた。


 ボンッ‼ ドゴォッ‼


 突然、俺の体にガツンと衝撃が走り、次の瞬間、数十m吹っ飛ばされて、背後の岩に激突! ズシャッと倒れ込んだ。


「「レイリアッ⁉」」


 ジゼルやブレンはぶっ飛ばされた俺の下に走りながら、周囲で蠢く数十本の枝槍と戦っていた。


(……いっ、いっでぇええぇ……)


 頭を強く打った。意識が朦朧としていた。おそらく、複合攻撃魔法の一種だ。


 空気のクッションを作る魔法『アエラス・クシーノ』ってのがあるんだけど、これ、クッション以外にも使い道がある。静かに動かせば、使用者以外には視認も感知もし難い。


 音も気配も消して、見えない〈空気の塊〉を俺の近くまでスーッと移動させて……衝撃魔法をドンッて発動! 多分そんな感じだ。


 周囲の枝槍の動きに気を取られすぎて、完全に油断してた。


 でも、この程度で〈回帰〉魔法を使うわけにはいかねぇ。俺は上級回復魔法『エレメ・ピセラシオン』を発動。蒼碧色のキラッキラな光が俺の体を包み込む。


 今の俺の魔力はガチで強いから、傷なんてあっという間に治ってく。


 エリゴールが動く様子は見えなかった。


 完全回復して俺が立ち上がろうとした時――




 グサッ! グサグサグサッ‼




 いきなり、複数の枝槍がブスブス俺に突き刺さった!


 奴は空間支配に全魔力をブッ込んで、変形のパワーをガン上げしてた。


「「レイリアーッ‼」」


 ジゼルとブレンが同時に叫び、俺の方に向かって走り出した。


 ブシュウゥッ‼


(うぐぅうぅぅぅ……ヤ、ヤベェ……内臓抜き取られた……)


 痛みで意識が飛びかける。心臓は強化魔法でギリ守ったけど、それ以外の臓器がぶち抜かれた……。失った臓器は〈回復〉魔法じゃ戻せねぇ。意識が完全に飛べば、〈回帰〉魔法も使えねぇ。これ、マジでヤバい状況だ。




「――あぁ~、だから言わんこっちゃない……」




 おいおい、俺の発言をそのまま復唱してんじゃねぇよ……。




 プツンッ








 ドゥッ‼




 ――〈レイリア〉の肉体から、赤みを帯びた〈魔霊気〉が立ち昇った。




 ギュルルルルルルルルルルルルルルルル……




 光の粒子が高速で渦を巻く。彼女に突き刺さっていた枝槍は動きを逆行させ、抜き取られた内臓が元の位置に戻り、傷が塞がっていく。


 枝槍は元通りに戻らず、崩壊して塵になっていった。


 パチッ


 レイリアの目が見開くと、宝石のような蒼碧色の目の中心から紅みを帯びた炎のような揺らめきが発生し、瞳はピンキーなルビーのように輝き始め、髪が逆立ち、赤みを帯びた魔霊気が蜃気楼のように揺らめく。


 ピカーッ!


 レイリアの背中から放射状に光の筋が拡散して後光のように光り輝き、その姿は〈神々しさ〉さえも纏っていた。


「……や、やった‼ レイリア!」


 脚を串刺しにされ、倒れたブレンが叫んだ。


「あ~、残り数十秒しか動けんぞ……」と、様子が変わったレイリアが呟いた。




 ドンッ‼ シュンッ‼


 


 爆発的な加速。レイリアは一瞬でエリゴールとの距離を詰めた。


「ナニッ⁉」


 エリゴールは、髑髏の装飾が付いた『冥界の槍』で、超高速の一本突きを繰り出した。


 ドシュッ‼


 槍はレイリアの胸元に直撃したように見えたが、肉体から15cm程度手前で見えない力により止められてしまった。レイリアの肉体から迸る魔霊気は鎧となり、見えない魔霊気の鎧=『魔霊鎧装』となっていた。『冥界の槍』からは瘴気が噴き出している。直撃すれば毒素で細胞が破壊されていたところだ。


「チィッ! ……小娘……如きがァッ……‼」


 エリゴールは、腕が震えるほど力を籠めている。


「……図が高い」


 ドゥッ‼


 圧倒的な魔力の波動が衝撃波となってエリゴールを魔馬ごと弾き飛ばし、落馬させた。


「ギュヒヒィイィン‼」


 ギンッ! とレイリアが睨みつけると、魔馬は一目散に逃げ出した。


 周囲の空間が歪みが少しずつ鎮まり、赤紫色に染まっていた大地や遠景の景色が徐々に元の色を取り戻し始めた。捻じ曲がった樹木も元に戻り始め、不気味で異様な様相だった空間全体が静けさを取り戻す。


「なんじゃ……魔力の供給源は馬の方じゃったか……? ……いや、魔力共鳴……か」


 レイリアは少しガッカリしたような表情を見せた。


 地べたに倒れたエリゴールが『冥界の槍』を掴んで再びレイリアに襲い掛かった。


 パリパリパリ……レイリアの肉体と周囲の空間に電撃が迸った。


 


 バシュンッ‼




 一瞬にしてエリゴールの肉体が鎧兜ごと吹き飛び、木っ端微塵になって四散した。


 飛散した液体にしか見えないほど原形を留めず、大量の血飛沫となった。


 ビタァッ‼


 血飛沫が一瞬、空中で静止した。


 紅く燃える目は獲物に狙いを定めた猛禽のように見開く。


「加減が難しいのぅ……生かしといてやるか……」


 レイリアは歯を見せて嗤った。


 ギュルルルルルルルルルルル……


 四散した血飛沫が元の場所に〈回帰〉し、再び肉体を象る。


 ガクッ


「クハァーッ……ハァーッ……」


 エリゴールは地べたに手を突き、荒く息を吐いた。


「……うぁ……あ、貴女に……従います……」


 エリゴールは、完全に戦意を喪失した。一瞬で肉体を分解されたので記憶に残っているわけがないのだが、回帰改変魔法『エンダー・エレグレシオン』によって、精神に敗北と恐怖を書き加えられたのだ。


 ガクンッ


 レイリアは、その場で力なく崩れ落ちた。


「えっ⁉」


 エリゴールがその場でレイリアの身体を支えた。


「レ、レイリアッ⁉」


 ジゼルが全速力で駆け寄り、エリゴールに剣を向けた。


「貴様ッ! 二度と歯向かわないと誓うのだな⁉」


 元聖騎士らしく、声に覇気が籠められていた。エリゴールは静かに兜を脱いだ。


 ファサッ……


 兜の下から現れたのは、蒼く長い髪で耳が尖った美女だった。


 魔界人は半分髑髏のような顔をしていると云われているが、魔族の女性と変わらぬ美しさだ。1つ違うのは、大きな角を持つという事だけだ。


「な……、お、女……?」


 エリゴールは身長が2m近く、大きめの鎧に身を包んでいた。


「……レ、レイリアを……返して……」


 エリゴールは素直にジゼルの言う事を聞き、レイリアを引き渡した。


 脚を串刺しにされたブレンはようやく起き上がり、自身の低級回復魔法『ピセラ』で応急処置をした。


「おぉ~いっ!」


「そこじゃったかぁ~‼」


 最年少で12歳の少年・テオと白兎の獣人・ビトが、レイリアを抱きかかえたジゼル達に駆け寄る。後ろから、魔女・エリザベータ、回復術師・アリエル、そして全身銀色の鎧兜で身を固めた大柄な騎士・ヴィルヘルムが続く。


「何か急に空間が歪んでウネウネし出してさぁ~! 迷路に迷い込んだようだった……」


 テオ達は惑わされただけで、強力な敵に襲われなかったようだ。


「あっ! ……レイリア姉ちゃん……アレ使っちゃったの?」


 テオの質問に、ジゼルは少し涙目でコクンと頷いた。


「……眠っておるようじゃな……仕方ない……今回は撤退しようじゃあないか……」


 目を覚ましそうにないレイリアの様子を見て、ビトはそう提案した。


 ビクゥッ‼


「……って、あんた誰ぇっ⁉」


 テオは見知らぬ長身女性=エリゴールがしれっと居る事に今更気付いた。


 エリゴールからは、それほど邪気が抜けていたのだった。

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