第4話-2 Go to hell.
招待状を手にしたゲストたちは走った。閉じ込められた空間から逃げ出すために、扉を目指した。
人形の部屋と監視カメラの部屋。どちらもパーティーという異様な催しが行われていたわけだが、これは偶然だろうか。
もしゲストである彼らが他の道を辿ったとして、そこで何も起こらないという補償はどこにもない。何も起こらないかもしれないし、何か起こるかもしれない。それはその時にならないとわからないことだ。
彼らもそれはわかっていた。何か起こるかもしれない。もちろん何も起こらないかもしれない。
招待状というきっかけを手に其処へやって来たのは彼らの意思であり選択だ。差出人不明の招待状に彼らはわずかに期待したのだ。
何か、おもしろいことが起こるかもしれない。と。
では、その招待状とは一体何だったのだろうか。
それは予言である。
これからここでなにかがおきるという、予言である。
それに巻き込まれる道を選んだのは、他でもない招待状という紙を手にした彼ら自身である。
彼らは自分で自分の道を踏み外したのだ。
何人かは外に出る道を辿れるだろう。しかし全員ではない。
何故だろう。何が起こったかなど誰も口を開けない。外に出た全員は全てを忘れてしまったからだ。それこそ夢を見ていたかのように。
だが誰かはいなくなってしまった。もしかしたら、忘れてしまった人の中にはその誰かを助けられた人もいたかもしれない。しかし結果として何人かはいなくなってしまったのだ。
彼らがいなくなってしまった人のことを覚えていないだろう。招待状というきっかけがなければ出会わなかったはずの人だ。彼らは其処にいる理由も、其処へ行った理由も全て忘れるのだ。
さあ、扉を開けろ。開けてみろ。
その扉が正しいのかは開けてみなければわからない。
開けろ。開けろ。目の前の扉を開けろ。
それが夢のような話なら忘れることもできるだろう。夢から覚めて、全て忘れて、今までと同じようにくだらなくてつまらない世界の中で生きていくことができるのだろう。
それが夢のままであるなら彼らは幸せなのだろうか。覚めない夢の中で彼らは現実と切り離された空間に取り残される。それは彼らが望んだことではないか。
彼らはただ自分の選んだ道を歩いてきただけだ。ただなんとなく、用意された道の中でこっちがいいのではないかと選んで、足を向けただけだ。
誰だってそうだろう?
全部、選んだ人のせいなのだ。
道の先が天国であっても、地獄であっても。それは歩んできた人のせいなのだ。
さあ、扉を開けろ。
さいごの扉を開けろ。
彼らは目指した。扉の向こうにある世界を目指した。
帰りたかった。別の世界のものに手を伸ばした結果がこれであった。
彼らは目指した。扉を開こうと、手を伸ばした。
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