魔力タンクと見下された魔法使いは魔導隊で学んだ魔力の使い方を武器にかつてパートナーだった先輩と共に学園最強の魔法使いを目指す
吹雪く吹雪
第1話 再び魔法大学へ
この世界には魔法というものが存在する。自身の魔力を使用し様々なものを生み出す力。この現代社会において、物理法則を超えた超常現象を引き起こす力の総称。
それが魔法。
その力は生活から軍事まで幅広く現代社会の様々な技術に応用されている。
「はぁ。今日から学校か」
ため息を吐き、目を擦りながら適当なパーカーを着て大学に向かう。
去年1年間大学を休学し魔導隊に仮入隊した俺だったが半年前の大災害で自分の無力さを知り、1から魔法を学び直すためにキリの良い4月から再び大学に通うことにした。つまり合計で1.5年の休学。今日がその初日。
1年前期で大学を辞めたので実質2年の休学だが、単位を一つも取れていないので入学試験が免除されているだけの最初からスタート。休学の扱いだが他の人から見れば2年留年しているみたいな感じなので少し周りの目が気になる。
俺の通う大学は日本で5本指に入る魔法師を育成する大学、明聖魔法大学である。魔法大学は通常の大学と同じで4年制でその後、院進学をすることができる。学部は応用魔法工学。基礎魔法工学。魔法機工学の3つあり、俺は応用魔法工学専攻だ。
この学校の目標は魔法の基礎を学び、魔法を実践で使用できるようにすることがとなっていおり、魔法の腕が成績に直結する。そしてそれは授業だけでなく、部活やサークル、研究室などの学校内のすべての活動に関係してくる。
魔法の実力ごとにランキング化され、ランキングに応じて進級可否が決定する。上位の者は優遇され、下位の者は差別される。まさに実力主義の学校というわけだ。
ランキングを上げる方法は魔法を使用したランキング戦で勝つこと。ランキング戦は大学が主催する公式と個人同士で行うものがあり、大学が主催する公式戦の方が一度の参加人数が多い為、ランキングの上がり幅が大きい。
ランキング戦の種類はソロ、ダブルス、チーム戦の3つがあり、それぞれで順位が付く。さっき見た個人ランキングはソロやダブルス全てのランキングを考慮したものになっている。
「はぁ」
再びため息を吐き、少し憂鬱になりながらも校門前でスマホに送られていた案内を確認する。
これからの予定表と俺の個人総合ランキングが書かれている。
今の俺の順位は3421位か。
学校全体の人数がおよそ5千人なので悪くない順位だ。休学前の成績がある程度が反映されているので他の1年よりは高い順位になっているのだろう。
予定表には今日の予定も書いてあり、今日は講義の取り方やカリキュラムについての説明会らしい。俺は一度受けているので任意参加になっているが、1年半前の記憶なので一応、参加するつもりだ。
だけどその前に人と待ち合わせをしているので大学内に入らず校門前で待つ。
さっき駅に着いたって言っていたらもう少しで到着するはず。そう考えてスマホを片手に校門前で立っていると
「あ、ひなたさん。お待たせしました」
と俺を見つけるとお団子ツインの少し小柄な少女がが駆け寄ってくる。
「彩芽。おはよ」
彼女は俺の二つ年下の今年大学一年生になる柊 彩芽。俺の隣の家に住んでいて、小さい頃から一緒に遊んでいた幼馴染だ。
俺は大学入学時から一人暮らしだが、彩芽は実家から通う。だから校門前で待ち合わせにした。
「おはようございます」
彩芽はそう言って頭を下げる。白いブラウスとスカートを着ていてかなりおしゃれに着飾っている。入学式後、初登校で説明会しかなく戦闘がある訳じゃないのでどんな服装でも問題ない。
俺なんてパーカーだし。
「さ、講義が始まるから行くぞ」
「はい」
そう言って俺たちは講義室に向かう。
明聖魔法大学には簡易魔法学部と構築魔法学部があり、それぞれの科で学ぶ内容が少し異なる。
2年生までは基本教養科目で共通科目を学ぶが3年生からは学部ごとに分かれさらに専門的な科目を学んでいくことになる。俺が所属しているのは構築魔法学部。複雑な魔法を構築し、より強力な魔法を生み出すことに特化した魔法師を育成する学部だ。簡易魔法学部は実用性に特化した効率的な魔法を学んでいく学部で、学部によって戦闘スタイルが大きく変わる。
講義室に着くと中にはすでに多くの人が集まっていた。
席は自由らしいが、席はほぼ埋まり、前の方しか空いていなかったので仕方なく前の方に座る。俺の右隣に彩芽も座る。
早く来たつもりだったがどうやらギリギリだったらしい。
席についてしばらくすると後から来た他の学生が俺たちの周りを避けて次々と席についていく。
大体の人たちは入学式でグループを作る。入学式に参加していない俺は当然グループも知り合い存在しない為、自然と避けられてしまう。仕方ないことだが、ちょっと悲しい。
少し待っていると続々と人がやってくる。そして数分もしないうちに周りの席が埋まっていく。彩芽の隣にも入学式で仲良くなったであろう子がやってくる。
「柊さん。隣いいですか?」
と聞いてきたのは黒髪ロングのお淑やかな少女。
「うん。勿論大丈夫だよ」
と彩芽の隣の席に座る。座ってすぐに少女は彩芽に小声で
「隣の人、知り合いですか?」
と聞いている。
確かに席が少ないとはいえ真隣に座っているたらそう思うよな。知り合いなんだが、彩芽がそれを知られたくないというのであれば、赤の他人と言っても構わないと思ってる。返答次第で学校での接し方は少し考えないとなぁ。
そんな俺の心配をよそに彩芽は
「私のお隣の家の近所のお兄さんだよ」
と普通に返す。
あっ、隠す気は無いのか。
「前に言ってた?」
「うん」
あれ最初から話してあるのか。いらない心配だった。ってか、どんな話をしたのか気になる。
少女は身を机に乗り出し
「あ、あの私、花宮佳純って言います。よろしくお願いします」
と黒髪の少女は人当たりが良さそうな笑顔で自己紹介をしてくる。
彩芽と仲良くなった子だからかかなり礼儀正しい。
「俺は月影ひなた。よろしく」
俺も自己紹介をする。
「月影さんは先輩なのでしょうか? あれ、先輩ならここにいるのはおかしいし、でも柊さんには隣の家のお兄さんって聞いてるし」
少し混乱している様子の佳純。
「いや、俺は少し休学してたから君と同じ一年だよ」
「そうだったんですね。あっ、えっと、あまり聞いちゃいけないことでしたか?」
「いや、気にしなくていいよ。俺自身休学してたことはあまり気にしてないから。花宮さんも俺のことは他の同級生と同じように接してくれると助かる」
「わかりました。では、月影さんって呼ばせていただきますね」
と佳純は笑顔で言う。
現役の1年生か。初々しいな。俺も1年の初めは多くの人と友達になろうと思って話しかけてたな。今年は消極的に行こ。
そんなことを考えていると
「隣いいか?」
と少し細身の高身長で茶髪の少年どちらかというと体育会系って感じの少し堅いの良い少年が話しかけてくる。
「いいよ」
「おっ、サンキュー」
少年はそう言い俺の隣に腰を下ろす。
「初めましてだよな? 俺は岡田大翔だ」
「俺は月影ひなた。よろしく」
「ああ。よろしくな。ひなた」
俺が自己紹介を返すと彼は笑顔で返事をする。
隣いる彩芽と佳純にも挨拶をしてお互いに軽く自己紹介をする。
時間が遅かったからか大翔が俺に話題を振ろうと口を開いた瞬間に教授が入ってくる。
俺は前を向き姿勢を正す。彩芽たちもそれに合わせて前を向く。壇上には40歳くらいの眼鏡をかけた優しそうなおじさんが立っていた。すると優しめな声で
「こんにちは。学年主任を任された内藤です。よろしく」
と挨拶をしてくるので皆、同じように返し、それを聞いた教授が軽く笑みを浮かべる。
確か、基礎魔法の威力向上について研究していた教授だ。だから1年生の基礎魔法の授業も担当している。基礎からわかりやすく教えてくれる優しい教授。
「今日はとりあえず簡単に授業の流れやについて説明をしますね」
そう言って教授は机にディスプレイを表示させる。そこには今の講義内容の詳細や今後の流れが書かれている。
「まずはこの画面を見てください」
そう言って画面を操作して教室内の全モニターに映像を流し、説明を始めた。
ほとんどの話が2年前と変わらない内容だった。卒業までに必要な単位数は128単位、年間49単位まで取得することが可能でそれに沿って授業を決める。1,2年には必修基礎科目が多く、それを踏まえて魔法系以外の必要単位を取得できるような時間割を組んでおけば、余程なイレギュラーがない限り進級できる。
一通り説明が終わり教授は
「今日はここまでです。これから時間があると思うので校内を探索するといいですよ」
そう言って講義室から出ていった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます