第63話 今の私と結人は同級生って設定なんだから敬語は禁止ね

 シャイニングサンシティに遊びに行ってから数日が経って週末になった土曜日の今日、目を覚ますと夏乃さんが当たり前のように俺の部屋にいた。


「結人おはよう」


「おはようございます、もう俺の部屋に夏乃さんがいても驚きませんよ」


 今日は早穂田大学のオープンキャンパス開催日なので夏乃さんが朝から俺を迎えに来ていても不思議では無い。すると少し夏乃さんはつまらなさそうな表情になる。


「……なんか思ってた反応と違うんだけど」


「一体どんなリアクションを期待してたんですか?」


「うーん、驚いた勢いのまま私を布団の中に引きずりこんでそのままベッドインとか?」


「さらっと人を強姦魔にしようとしないでくださいよ」


 夏乃さんの発想は相変わらずぶっ飛んでいる。すると夏乃さんはニコニコした表情で口を開く。


「心配しなくても私が合意してるから強姦じゃなくて和姦だよ」


「いやいや、そういう話じゃなくてですね」


 てか、何で俺は朝っぱらから夏乃さんとこんなにも生々しい話をしているのだろうか。そんな事を思いつつ俺はベッドから立ち上がる。


「とりあえずシャワーを浴びに行ってきますけど前みたいに部屋を荒らさないでくださいね」


「えー、私そんな事をしたかな?」


「じゃあこの前はどうやって俺の隠し持ってたエロ漫画を見つけたんですか?」


「それはたまたま国語辞典と英語の参考書を読みたくなって本棚に手を伸ばしたら偶然見つけちゃっただけだよ」


「たまたま読みたくならないでしょ……」


 片方だけならまだしも、俺がエロ漫画を隠すために使っていたその二冊をピンポイントで選ぶなんて普通はあり得ない。

 そんな事を考えながら俺は考えながら脱衣所でパジャマを脱いで浴室に入った俺はいつものようにシャワーを浴び始める。

 その後俺はドライヤーで髪を程良く乾かして棚からワックスを取り出す。オープンキャンパスには公共交通機関で参加するようにとの指定があるため今日はバイクには乗らない。

 ヘルメットを被らないため普段はあまり使わないワックスで髪をセットするつもりだ。それから髪のセットを終えた俺は先日シャイニングサンシティで買った服に着替えてから部屋に戻る。


「おー、やっぱり似合ってるね」


「ありがとうございます、やっぱりネックレスとスキニーは普段身に付けないので落ち着かないですけど」


「その辺は多分そのうち慣れると思うから我慢して」


「ですね、ところでまだちょっと早いですけど出発します?」


 移動時間などを考えても出発するにはまだ少しだけ早い。すると夏乃さんは床に置いてあった紙袋をごそごそしながら口を開く。


「あっ、私の準備があるからちょっとだけ待って」


「夏乃さんの準備?」


「ほら今のままだと完全に普段の私だから知り合いに見つかったら間違いなくバレるでしょ?」


「それは確かにそうですけど」


 夏乃さんの事だから抜群のコミュニケーション能力で適当に誤魔化すつもりだと思っていたが流石に違ったらしい。


「とりあえず今日はこれを着るから」


「俺達の学校の制服じゃないですか、まだ持ってたんですね」


 なんと夏乃さんは高校生時代のセーラー服を着るつもりらしい。まあ、まだ高校を卒業してから半年とちょっとしか経っていないため夏乃さんが着ても違和感は無いが。


「それとこれも使う予定だよ」


「黒髪ウィッグって本格的に変装する気満々じゃないですか」


「だって万が一高校生のふりなんなしてオープンキャンパスに参加してるのがバレたらめちゃくちゃ恥ずかしいじゃん」


 そんな事を言いながら夏乃さんは俺の目の前で恥ずかしげもなく堂々と着替え始める。とりあえず俺は着替え終わるまで後ろを向いておいた。

 夏乃さんは別に見ても良かったのになどと口にしていたがそれをネタにされる可能性があったためそんなリスクを冒す気は無い。続いて夏乃さんはネットを頭に装着して手際よく黒髪ウィッグを付け始める。


「どう?」


「うん、まさに昔の夏乃さんって感じですね」


 俺の目の前には大学に入学する前の懐かしい夏乃さんが立っていた。金髪姿もよく似合っているが黒髪姿も全然悪くない。まあ、夏乃さんは今どきギャル姿が好きらしく戻す気はないようだが。


「念の為に伊達メガネも掛けとこうか」


「ここまでガラッと雰囲気が変わったらまずバレないと思います」


 黒髪ロングヘアと伊達メガネ、セーラー服を装備した夏乃さんは本当に別人だった。今の見た目は清楚なクラス委員長と言ったところだろうか。だから今の姿を見て普段の夏乃さんと同一人物とはまずならないはずだ。


「よし、じゃあ行こうか」


「そうですね、行きましょう」


 俺がそう言って部屋から出ようとすると夏乃さんから袖を掴まれる。


「今の私と結人は同級生って設定なんだから敬語は禁止ね」


「えっ、今からですか?」


「うん、今のうちに慣れておかないとボロがでるかもしれないからさ」


「分かりま……分かったよ」


 夏乃さんの言っている事も理解できたためとりあえず従う事にした。

なお、本作の更新は引き続き2、3日に一回ペースで続け、本作完結後はヤンデレ双子姉妹リメイクの投稿を始める予定です

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