第八話

森に狩りに出かけてから二週間が経ち、アルージェは五歳になっていた。


「アルももう五歳かぁ。子供は成長が早いなぁ」

息子が五歳になっていることに感動するフリード


「ホントねぇ。私ももうおばちゃんって呼ばれる年になっているのかしら?」

サーシャ自分の顔をペタペタと触りながら、顔の皮膚を伸ばそうとする。


「いやいや何を言ってるんだよサーシャ!君はいつまで経ってもきれいだよ!」

フリードがサーシャの腰に手をまわす。


「あらっ!フリードったら!」

顔を赤らめて顔を近づけ合う二人。


「アルのパパとママは仲がいいねぇ!あたしのパパとママ全然仲良くないもんー」

シェリーがサーシャとフリードを見ながらアルージェに話しかける。


「僕的には恥ずかしいから、シェリーが来てるときはやめてほしいけどね。ハハハ」

アルージェはサーシャとフリードを半目で見て、乾いた笑いを出す。


「いいじゃねぇかアル坊!両親の仲がいいのはいいことだぜ!なぁ、ソフィアうちもどうだ?」

ロイがソフィアの腰に手を回そうとするが、ソフィアはササっと避けてロイから距離を取る。


「今はダメよ!」

パッと見では嫌がっているようにも見えるが、ソフィアは頬を赤らめている。


「シェリーのお父さんとお母さんも仲良いじゃん」

ロイとソフィアを見てアルージェがシェリーに話しかける。


「そうかなー?ママいつもああやってパパを嫌がってるよー?」

シェリーは人差し指で顎に当てて話す。


「ふーん、そうなんだ。僕には仲良く見えるけどなぁ」


「ほら、フリードずっとこうしてたいけど今日集まってもらったのは、アルの誕生日を祝う為でしょ!」

サーシャがフリードを引き離す。


「そうだな、今日の主役はアルだな!」

フリードは名残惜しそうに手を伸ばす。

だが気持ちを切り替えて、みんなに飲み物の入った容器を持つように促す。


「すでに僕のこと忘れてそうだったけどね」

アルージェは少し拗ねていたがフリードの言う通りに容器を持つ。


「今日はうちのかわいいアルの為に集まってくれてありがとう!奮発して色々と用意したから、今日は楽しく飲み食いしよう!んじゃ、乾杯!」


「「「「「かんぱーい!!」」」」」


「それにしてもアル坊も五歳か!子供はほんと成長が早いな。ガハハハ!」

ロイは少しお酒が入って、すでに上機嫌になっている。


「ほら、ロイ。グデングデンになる前に、先にアル君に渡しといたほうがいいんじゃない?」


「おっ?あぁそうだったな!ちょっと待ってくれよ」

そういうとポケットにつけていた、巾着のような袋から弓が出てきた。


アルージェは明らかにサイズ感が合っていないものが出てきて、驚いて思わず声を上げてしまった。


「えぇぇぇぇぇ!なにそれ!?えぇぇ!?どういうこと!?」

弓と巾着を交互に見ながら必死に考えている。


「んぁ?なんだアル坊?アイテムボックス見たことねぇのか?これくらいのサイズならフリード達も持ってるだろうに」

ロイはアルージェのあまりにも大げさな驚くので少し困惑する。


「初めて見た!!」

アルージェは興奮が止まらず鼻息が荒くなっている。


「うちはまだ見せてないなぁ。遠出することもないし、基本は物置に片づけてて出してねぇ!なくても生活そこまで困ってないしな」


「アイテムボックスが有れば農業も楽になるだろうに。いや、それよりもこれだ!アル坊!俺が手間暇かけて自作した新作の弓だ!ゴブリンの魔石が換金出来て、そこそこの素材を買えたから奮発して作っちまった!」


アルージェはアイテムボックスから取り出した、木で出来たショートボウをロイに渡される。


「ん?」

実際に手に取ってみると、見た目は木なのにあり得ないくらい弾力性のある素材だった。


「こいつは不思議な素材で出来ているだろ?スライムの実っていうスライムって魔物がたまに落とすアイテムがあってな。どんなに硬いものでもこの実を絞った時にでる液体に漬ければあら不思議!!あり得ないくらいに弾力性がでる素材になるんだ!どんだけ引っ張っても弾力性があって折れることもなければ、千切れることもない。正直こんなに弾力のある弓はクセが強すぎて、長年普通の弓を使ってる俺みたいなタイプには使いづれー。だがまだ少し訓練したくらいのアル坊にはこいつをうまく使いこなせる気がしてよ。まぁ俺の好奇心で作ったような弓だ!好きにしてくれ!」


アルージェが貰った弓を構えて、弦を引き絞るとありえないくらい引き絞ることが出来た。

そして引き絞った弦を離すと、バインバインとスライムの様に弾力のある動きをした。


「おぉ!なんか新しい感じ!」

アルージェは今まで体験したことのない感覚に目を輝かせる。


「ありがとう! 大事にするね!!」

そのままロイとソフィアにお礼を伝えた。


「おいおい、ロイ!そんなにアルが興味引くようなもの渡されたら、俺たちが用意したものが微妙に映るじゃねぇか!」

フリードは別室からアルの為にオーダーメイドで作られた剣を持ってくる。



フリードが金色の柄の剣を鞘から取り出す。

刀身は紺碧色の線に刃部分は赤色、鍔は少し幅広く真ん中には何かが嵌めれるよう幾つかくぼみが開いてるブロードソードだった。


「これは今日の為に王都で名の知れた凄腕鍛冶屋にお願いしていた、アル専用の剣だ!」

フリードが剣を掲げる。


「す、すげぇ!!かっけー!!」

「すごいー!!きれいー!!!」


アルージェもシェリーも剣にくぎ付けだった。


「アルには少し大きいかもしれないけどまだまだ大きくなると思って少し大きめに作ってもらったの!刀身はアルの髪と目の色に合わせてもらったのよぉ!何度見てもアルを思い浮かべちゃうわ!」

サーシャも剣の出来にご満悦のようだった。


「もう少し大きくなったらこの剣を使ってシェリーちゃんを守ってあげな!」

フリードは剣をアルージェに渡す。


アルージェは剣を持ったまま、シェリーに跪く。

「父さんと母さんに貰ったこの剣でシェリーを守ります!」

シェリーに向って頭を下げる。


「ア、アル!待ってなんか恥ずかしいよぉ!」


「あらあら!まぁまぁ!」

「ヒュー」

「ふふふ、シェリーは幸せものねー」

「やるなぁ、アル坊!決まってるじゃねぇか!」


皆、二人の光景を微笑ましい笑顔で見ている。


「よっしゃー 今日はめでたい日だ!!食って飲むぞー!!」

フリードが掛け声を挙げると、さっきまで以上に盛り上がりを見せて夜が更けていった。

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