第23話 そうだ、バイトをしよう

 今朝の登校中のヒカリはぼんやりとした顔で歩いていた。

昨日のマリーとの熱いひと時を思い出していたからだ。

口から心臓が飛び出るのではと思うほどの緊張と興奮…最後まで導かれ彼女の手の中で果てた快感…。

全てが経験したことのない物だった。

ともすれば溺れてしまいそうな甘い誘惑…だがそれと共にマリーを大切に思う自分もいる。

流されずにシッカリと彼女を大切にしようと改めて思うのであった。


自分のクラスに着き自分の席に朝のルーティンであるイアホンをして英会話を聞く。

目を瞑ると耳からは英会話が流れているのにマリーの痴態が頭に浮かぶ…煩悩を振り払う為に他の事を考えようと思う。

そうだ、中間テストが終わったらマリーと二人でデートしようと決めたのだった。

あそこしかないな…、有名なテーマパーク…、だが自分は1度も行ったことがない…。

今までは周りの生徒が話しているのを興味なく聞き流していただけだった。

だが聞こえてくるテーマパークの評判はどれも良かった気がする…やっぱりそこだな。

ヒカリはテーマパークについて検索する。

料金やアクセスなどを調べ1つ思いつくことがあった。

今回はお年玉の残りや小遣いで間に合うが今後はデート代やプレゼント等でお金が必要になるだろう。

これも考えなければいけないな、マリーにロインで

テーマパークデートの誘いをしながら思っていた。


放課後にはマリーからデートの誘いに大喜びの返事がきた。

日にちを土曜日に決め、待ち合わせ等の内容をロインで送った後ヒカリはある場所に向かった。

着いた場所は以前生徒会長の詩織と来た喫茶店、前回店に入った時にバイト募集の張り紙があったのを覚えていたのだ。

店の扉を開けると三十代と思われる女主人(店には彼女しか居ない)が


「いらっしゃいませ!」 


と声を掛けてくる。


「あ、スイマセン、アルバイトの募集を見て来たんですけどまだ募集してますか?」


「あら、そうだったのね、お客様も居ないしそこに座って」


彼女の指差す彼女の向かいのカウンター席に着く。


「まだ募集はしてるけど、どうしてウチで…?」


ここでバイトをしようと思ったのには他にも理由がある、1つはこの前に飲んだコーヒーが美味しかった事とその淹れ方を覚えたいと思ったからだ。

その事を話すと納得してくれた。

僕の前のバイトの人は高校卒業とともに遠くの大学に進学するので3ヶ月程前に辞めたらしい。


「アルバイトは初めてなのでご迷惑を掛けるかもしれませんが宜しくお願いします」


「皆んな初めてはあるものよ、ソレよりもヒカリ君ってスンゴいイケメンだから女のお客様が増えそうね…ふふふ」


ちょっと企むような小狡い笑みを浮かべる女主人

立花茜(タチバナ アカネ)であった。

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