第7話
ウェスがマンティコアを一撃で爆散させ、そしてギルド併設酒場で酔っぱらい三人娘の相手をさせられた翌日。その日はいつもと比較するとゆっくり目に起床したウェスは朝のルーティンをのんびりこなした後に10時ころにギルドに赴いた。
ちなみにギルドでは朝の8時から9時ころまでに掲示板に各種依頼が公開されるため、その時間帯が冒険者たちで一番混み合う。その後日中はギルド職員が事務仕事をしたり、モンスター等の各種素材を買い付けるために商人が訪れたり、あるいは依頼者達が依頼を持ち込んだりと賑わう。そして夕方になると依頼を終えた冒険者達が続々と帰ってきて、そして19時ころをすぎるとギルド併設酒場が非常に盛況となる。
そのため10時頃というと冒険者達が依頼に出た後であり、商人や依頼者達が訪れる前の時間ということで一番ギルドが落ち着く時間帯であった。
前日はマンティコアという思わぬ臨時収入を得られたこと、夜遅くまで飲んだことから今日は一日休養日にすることに決めていたウェスはギルドに情報収集のためにやってきていた。
そしてウェスがギルドに到着し入り口をくぐって受付の方に向かおうとすると
「あ、ウェスさん!おはようございます」
そういって受付カウンターから受付嬢のシンシアがウェスに元に駆け寄ってくる。
「おはよう、シンシア。どうした?」
受付嬢のシンシアはウェスが開拓都市アルテアに流れ着いた5年前にちょうど新人受付嬢となっていた縁で、お互いに開拓都市アルテアの冒険者ギルド初心者ということでなんとなくの親近感を感じていたところから仲良くなっていった。ウェスは彼女がいれば可能な限り彼女を通して依頼の受注などを実施しており実質的に専属受付嬢に近い形になっている。
「えぇ、ちょうどよかったです。昨日のマンティコアの件でギルマスがウェスさんを探していましたよ。ギルドに来たら呼んでくれと言われていました」
「お、了解。俺もちょうどギルマスと話したかったんだよ。こちらも他にも情報がほしいからな。直接彼女の部屋へ行って良いか?」
「はい、大丈夫です。念のため私もご一緒しますね。ちなみにギルマスは今はアランさんとお話されています」
「それもちょうどよかったよ」
そして二人は適当に駄弁りながらホールからギルドマスターの部屋へ向かう。開拓都市アルテアのギルドは、開拓都市という性質上いざというときには防衛戦の拠点として機能することも想定されているためにそれなりの広さを持つ。
階段を登り、歩いてしばらくしてギルマス部屋の前に到着したウェスたちはドアをノックすると
「シンシアです。ウェスさんをお連れしました」
数秒後、ドアが開くと
「おお、ウェス!ナイスタイミングじゃないか!」
「おはよう、ライラ」
そういって部屋の中からギルドマスターの”豪放磊落のライラ”が出迎える。彼女こそが開拓都市という超最前線であるこのアルテアにてギルドマスターを務め、文字通りの荒くれ者どもをまとめる文武両道の才女。ウェスやアランなどと同年代の30歳代前半の女性であり、噂によると元々はどこぞの国の貴族だったという話もある。
確かな教養を感じさせる佇まいや戦略眼を持ち、そうでありながらいざという時には高い決断力を発揮する。そして完全にリーダー型に見えるのにも関わらず自身は冒険者としては完全に前衛型のスタイルでA級冒険者にまで至っていたことから”豪放磊落”の二つ名でよばれることになった女傑である。
ライラに促されて部屋に入ったウェスはすでに部屋にいたアランにも挨拶を交わす。なおシンシアはそのまま受付に戻っていくようだったので一言礼を言って別れた。
アランの隣にウェスが腰掛けたのを見たライラは早速本題に入る。
「アラン、悪いけど先程の話をウェスにも頼めるか?ウェスも後で昨日のマンティコアの件を聞かせてほしい」
ライラの振り出しに応える形でアランが”情熱の道”のパーティーメンバーたちと集めた話をウェスにも話す。アラン達がアルテア内の色々な酒場や、個人的な伝手を使って集めた情報によるとやはり普段は遭遇しないような場所で高いレベルのモンスターに遭遇しているケースが散見されたらしい。
ライラ達ギルド側のほうでも改めてこの一ヶ月ほどの依頼の内容と、実際の冒険者の戦果を比較したところ当初の依頼内容と乖離が見られたケースが複数見つかっているらしい。
アラン達とライラ達が集めた情報を元に、そのまま地図にモンスターの発生状況をマッピングしていくと
「…なるほど、見事に東南方向に向かっていくわけか。というか逆だな。東南方向からモンスターが流れてきてるんだな?」
その地図を見て渋い顔になったウェスがポツリとつぶやく。その言葉聞いたライラは頷きながら
「そうだ。完全に東南方向から流れてきてるな。そして昨日のウェス達の件。これまではD級冒険者が回れる範囲内だと出てもB級のモンスターだったらしいんだがな。昨日のウェス達の件で一気に危険度が跳ね上がった」
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