第26話  光の向こう側

湊と一緒にシェアハウスをして1週間は経とうとしていた。杏菜は、両目が見えなくなって、生活は一変した。




身の回りの世話は、ホームヘルパーのように


完璧にこなす湊のおかげで暮らしに問題はなかった。




ただ、湊にも生活がある。3年バイトとして勤めていたホストクラブをやめて、完全に大学生を全うしていた。




それには理由があった。




湊にとってホストクラブは、バイト代を稼いで、大学費用を充てるためだった。




ほぼ、お金のためだった。




お客に200万以上するドンペリを注文させるくらいのホストのため貯金するくらいのかなりの余裕はあって、余るくらいあったが、それでもいつ何があってもいいように老後資金も貯めておこうと必要資金以上に蓄えていた。




ホストを辞めても、蓄えがあるため生活に何の問題もない。




ましてや、杏菜は視覚障害者のため、障害者年金を受け取ることができる。




お金には苦労しない。




それ以上に大学に通う目的が強くできた。








****




湊が通う大学の教授の堀口雅之ほりぐちまさゆき氏は、眼科の治療のスペシャリストだった。




湊は足繁く、堀口教授の研究室に通っていた。




「一ノ瀬くん、今日は、前に言ってたPython(パイソン)について調べてみようと思うんだけどいいかな。きみ、情報処理技術はかなり勉強しているよね。」




「そうですね。


 Python(パイソン)はデータサイエンスに必要なものだとは聞いています。今ではVRで視力をあげるっていう話もアメリカの大学で研究されているそうですよ。どうしたら、いち早く日本の技術を使って、 機械を作りたいと早急に思うんですけど


どうすればいいんですか?」




「どうして、そんなに急いでいるの? 確かに世の中の人から求められているものだとは思うけど。あー、誰か助けたい人でもいるのかな?」




 湊はその言葉を言われて、耳の部分だけ赤くして、分厚くて英語で書かれた本を広げてペラペラとめくった。






「無視、しなくてもいいんだよぉ? 一ノ瀬くん、どうしたのかな? 時差があるのかな? こんな2mも離れてない部屋でどういうことかな?」




「堀口教授。この本に書いてあるんですけど、視覚障害者向けの技術に 特化したプログラムや研究をしているのはMIT(マサチューセッツ工科大学)ってなっていますよ」




「おうおう。無視したままかい? ……研究熱心なのはいいけどね。直接、電話で問い合わせしてみる? あと、日本の高度な技術者がいる会社を見つけないとね。半導体とか、んー、ロボット研究が


優れてる会社かな」




「そしたら、俺、日本の会社に問い合わせます。教授はアメリカの大学に聞いていただいても?」




「はいはい。その代わり、一ノ瀬くんがなんでそんなに急いでいるか理由聞かせてくれないと


返答は教えないからね」


「………それはどうかなぁ?」


「いじわるだね、きみは」


「個人情報で守られているので……」


「ここでその言葉使う? 必要ないでしょう。


全く。まぁいいけど、聞いてみるよ」




 堀口教授は、電話の受話器を持ち上げて、アメリカのマサチューセッツ工科大学に国際電話をかけた。




 コールが鳴り響く。


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