第36話 キング・オブ・フードコート




エチゴさんとエチゴ屋を回収し、さぁ魔王城へお引っ越し〜、、というところで、またもやサクラちゃんからお声が掛かった。


こうなったら仕方ない。


我が『サクラちゃんを見守る会』の象徴のご機嫌取りをしておくとしよう。



「や、、やぁ、サクラちゃん。2時間ぶりだね。」


「うんっ!今行くねーーっ♪」


いや、放っておいてくれ。とは言えず、、。



「と、飛び降りたらダメだからね?」


「分かってるよーっ!」


「エチゴさん、先に行ってる?」


「ははっ!別に構わないさ。あっ、それなら今のうちに、ご近所さんに引っ越しの挨拶をしてきちゃおうかな!」


「うん。で、引っ越し先なんだけど、ジッポン王国なのを言うなら、周囲に即死結界が張ってあるのをちゃんと伝えてね!?」


「そ、そうなんだ。了解〜、、。」


商店街の中へ向かったエチゴさんであるが、あの様子からして、引っ越し先についてはボカして伝えるだろうな。


まぁその方がありがたい。今はまだ入国審査をしてる暇はないから、もう少し国民が増えるまでは我慢してね!



エチゴさんを見送っていると、サクラちゃんが外に出てきた。もちろんその背後には、サイボーグ的ボディガード付きである。



「ワカバお姉ちゃんっ!お待たせーっ♪」


「いや、大丈夫だよ。、、で?」


俺は何故サイボーグが一緒なのかと、そのサイボーグがトランクケースを4つも担いでいる理由を聞いてみた。



「あははっ!なぁに、私らも今日からジッポン王国の国民になろうと思ってね!さっ、早く行くわよーっ♪」


このサイボーグは何言ってんだ?



「い、いや、、パパンさんは?」


「ああ、あいつとは離婚したのよ!晴れてバツイチになったって訳ね!」


「ええーっ!?に、2時間で離婚出来るものなの!?」


「何言ってんだい?離婚なんて30秒あれば成立するさね。」


まるで俺の方が常識知らずみたいになってるが、、いや、チタマでは30秒離婚が常識なのか?



「ま、まぁ分かったよ。サクラちゃんもそれで良いの?」


「うんっ♪ワカバお姉ちゃんには教えちゃうけど、ママは新しい恋に目覚めたんだって。だからママを応援してあげるんだっ♪」


と、サクラちゃんは俺に耳打ちしてきた。



ふむ。これはちょっと面白い展開になってきたな。


ターゲットはおそらく彼で間違いないだろう。

ピクニックの時から、うっとり視線を送っていたからな。


そういう事なら、俺もしっかりサポートしてあげなければいけない。


サクラちゃんの家庭環境を整えるのも、見守る会の役目である、、と俺は考える。


まぁそんな建前は何でも良いんだ。


たんなる冷やかし野次馬魂が抑えられないだけだからなっ!



「そういう事なら俺も協力するよ。サクラちゃんのパパになるなら、強くなきゃね!」


「うんっ、強くてカッコいいパパが良いなーっ♪」


俺とサクラちゃんがヒソヒソ話をしていると、エチゴさんが戻ってきた。



「お待たせ〜。、、って、ママンまで一緒なのかい?」


「あははっ!私らもジッポン王国の国民になるからね!」


「ええっ!?」


「あー、エチゴさん。向こうで説明するから、とりあえず出発しよ?」


「わ、分かったよ。」


「それじゃ、しゅっぱーつっ!」

「しゅっぱーつっ♪」


俺の真似してサクラちゃんも出発の合図を出す。

こういう子供らしいとこを見ると、幸せになってほしいなと思う。見守る会会長としてしっかりサポートさせてもらおう。


そんな事を考えながら、魔王城前にトラポしたのであった。




「とうちゃーっく!!」


「おおーっ!!」」」ヒヒーンッ!」


「立派な建物だね〜、、。」


「そうね〜。お城がオマケに見えてくるわ、、。」


「ワカバお姉ちゃんっ、お城の横のは何なのー!?」


皆、魔王城より『訓練所兼めっちゃ健康ランド』の方に興味津々のようだ。


7階建ての全面鏡面ガラス張りのビルなんて、明らかにオーバーテクノロジーだもんな。



「それは1〜4階までが訓練所になってて、5階がフードコートとマッサージコーナー。6階が温水プール。7階に温泉、屋上に露天風呂だよ〜!」


「凄いすごーいっ!!ワカバお姉ちゃんっ行ってみよーっ!?」


「う〜ん。それじゃあ他の皆も呼んで、一緒に行こうか?」


「うんっ!!」


とは言ったものの、こういう時に限って城の中に散らばってるんだよなぁ。


サーチで皆の位置を確認すると、個別に行動しているようで、1人ずつ声を掛けていくのは大変面倒である。


ルシフル・ベリアル・ムルムルの3人は、眷属召喚で呼び寄せられるが、母さんだけ残していく訳にいかないからな。



、、ふむ。眷属が召喚出来るんだ。繋がり的に上位の母が召喚出来ない方がおかしいよな?


出来ないと思い込んで試さないというのは、自ら可能性を潰す悪手である。


何事もチャレンジチャレンジっ!!



俺は眷属召喚の応用で、母さん召喚を使ってみる。



[母さん召喚っ!!]



すると目の前の地面に『◎』が描かれ、オレンジ色に光り出した。


そして外側の◯と内側の◯の間に呪文のようなウニャウニャ文字が描かれていく。


チタマ言語理解を持つ俺が見ると、、


『あら?今回は母君かぁ。全裸はマズいよね?そもそもイジるのがマズい?仕方ない、普通に召喚するかぁ。』


、、と。召喚君にもマナー的な考えがあって良かったよ。


魔王に全裸ベリアルを見せる時点で、重大なマナー違反だとは思うが、、。



そして◎の中心に『母!』と描かれると、ポンッという効果音と共に母さんが召喚された。



「ふふっ♪ワカバちゃんたら、私に甘えたくなっちゃったのかしら?、、って、ママン?その荷物、、どうしたのよ?」


「あっはっは!実は〜、、



母さんとママンさんが話し始めたが、俺は召喚作業に集中させてもらうとする。



お次はルシフルを召喚してみよう。



[眷属召喚、ルシフルっ!!]



先程と同じく、◎が描かれ、、あら?光り出さないぞ?


と、思ったら、外側の◯と内側の◯の間に呪文のような文字が描かれていく。


『ん?ルシフルは眷属から姉君に昇格してるよ?眷属召喚じゃ無理だから、姉ちゃん召喚を使ってね。今回は僕が変換しておくよ!』


、、だって。

臨機応変に対応してくれて、マジ感謝致します!


その後は通常の流れでルシフルが召喚されたのであった。



「む?妾の唇が恋しくなったのじゃな?どれ、ムッチュ〜っとしてやるのじゃーっ♡」


「そ、それはまた今度、いつか、、ね?」


飛びついてくるルシフルをサッと躱して、とりあえずサクラちゃんの相手をしていてもらう。



後はベリアルとムルムルの2人だが、俺も慣れてきたもんだ。2人同時に召喚したった。


それと今回は召喚前に『サクラちゃんが居るんだから、変な演出は怒るからな!』と念を押したら、ちゃんと普通に召喚してくれた。


召喚君もやれば出来る子なんだな!と、少しばかり見直したのであった、、。




「全員揃ったので、お昼ご飯にしましょう。ルシフル達はもう隣の建物に入ってみた?」


「まだ入っておらんのぅ。ワカバと一緒に入りたかったのじゃ♡」


「、、と仰ってますが、『デカくて不気味じゃな〜。入ったら食われてしまいそうじゃ〜。』というのが本音でございます。」


「むっ!?そ、それはおぬしが言ったのじゃろっ!?」


「まぁまぁ。それじゃあ、今から中でお昼ご飯にするからね!皆ついて来てねー!」


俺が先導してビルの入口へと近づく。



ウィン、、


「おおっ!?ガラス戸が勝手に開いたよ!?」


「入口にまで魔法具を使ってるのね、、。一体いくらするのかしら。」


などなど、入る前から自動ドアで大盛り上がりの皆。


幼稚園の引率の先生にでもなった気分だな。



入口から中に進むと、広々としたロビーに受付カウンターが正面にあったので行ってみる。


無人だから行く意味はないと思ったのだが、一応は普通の流れに沿った行動をした方が良いような予感がしたからね。



受付カウンターの近くまで行くと、無人のはずなのに案内音声が流れたではないか!立ち寄って正解だったな。



〈いらっしゃいませ。入館者様のお名前を仰って下さい。〉


「ワカバ、ルシフル、オカン、エチゴ、サクラ、ママン、ベリアル、ムルムルだよ。」


〈8名様でございますね?確認致しました。そちらのネームブレスレットが館内でのフリーパスとなります。〉


いつの間にやら左手首に銀のブレスレットが装着されており、『ワカバ』と名前が刻印されていた。

他の皆も自分の名前が刻印されたブレスレットを装着していた。


フリーパスって言ってたから、各施設の入口とかに近づけると鍵が開いたりするんだろう。



〈右側通路をお進みいただきまして、エレベーターでお好きな施設をご利用ください。〉


「ワカバよ。エレベーター?とはなんじゃ?」


「こういう高い建物だと、上まで階段で行くのは面倒でしょ?」


「うむ、そうじゃな。」


「だから、小さい部屋ごと行きたい階に運んじゃおうって仕組みの事だね。」


「う〜む。よくは分からんが、階段より便利な仕組みって事じゃな?」


「そそっ。詳しい作りなんかは、消費者が知る必要はないから、気にしないでね?」


「分かったのじゃ!」


案内音声に言われた通り右側通路を進んで行くと、3基のエレベーターが並んでいるのを見つけた。

ちゃんと階層ごとの案内掲示板も設置されていて、なかなかの親切設計である。



「それじゃ、サクラちゃん。そこの▲を押してくれるかな?」


「うんっ!!、、わっ!光ったよ!?」


「光ったら、『今呼んでるから、来るまで待ってね!』って事だからね。」


「分かったーっ♪」


ポーンッ

〈1階です。ドアが開きます。〉


アナウンスが流れ、エレベーターのドアが開く。、、が、なかなか乗り込まないので早く乗るように促す。


サクラちゃんに⑤を押してもらい、突然の浮遊感に大騒ぎしながら5階に到着。


エレベーターを降りると、日本でお馴染みの店舗が勢揃いの、キング・オブ・フードコートと言っても過言ではない、超立派なフードコートがあった。



、、コレはヤバい。


毎食ここで食べても、制覇するのに1年以上かかるぞ!?



さて、何処から攻めてやろうかな!!?


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