第17話 俺はまだ起きている




エチゴさんの右大腿骨開放骨折を治す為、消費MP9600という超強力な回復魔法『フルケアヒール』を開発した。


その甲斐あって、エチゴさんの右脚は完治に至る。


しかし超強力な効果というものには、必ずと言っていいほど、厄介な副作用が付いてくるというもの。



今回の『フルケアヒール』に付いていた副作用、、それは、種族が魔族になっちゃうよ☆テヘペロっ♪、、というものであった。


要は、エチゴさんが魔族の仲間入りを果たしたって事だ。



そして現在、母さんに説明を求められているといった状況。



さて、、と。明日は早いから、続きはまた明日にしよう。



「それで?これはどういう事なの?」


、、明日には出来ないようだな。


仕方ない。洗いざらい正直に話して、この件は終わりにしよう。



「えぇ〜と、、俺も、多分そうじゃないかなぁ〜ってくらいしか理解出来てないんだけど。」


「いいから早く話してちょうだい!どうしてソーサラーの私よりエチゴの方がINGが高いのよーっ!!?」


そう言いながら床をバンバン叩く母さん。


ふむ。これは魔族がどうとか言う話じゃなくて、エチゴさんのステータスが強化された事に対する嫉妬、または対抗心、、といったところか。



「あ〜、簡単に言うと、全身の悪い部分とかダサい部分が俺の魔力で改善・再構築されたから、、かな?」


「そんな魔法聞いた事ないわっ!?」


「う〜ん。そう言われても、実際に、、ねぇ?」チラッ


俺は、エチゴさんがこうなってますよ?と視線を向けた。



「っ〜〜!!じゃあ私も強くなれるのねっ!?」


「えっ?それはちょっと分からないかなぁ。エチゴさんの場合は、大怪我を治す段階で沢山の魔王魔力を取り込んだんだ。その副次効果でこうなった説もあるから。」


「分かったわ!!アナタっ、私の脚をハンマーで叩き折りなさいっ!!!」


「えぇーっ!?」」


母さんの提案に、俺とエチゴさんは驚きの声を上げる。



「それも両脚よっ!!なんなら腕もやっちゃいなさいなっ!!」


「な、なんで両脚なんだ?、、というか、僕の脚はハンマーで叩き折られたの?」


「エチゴさん、その話はまた今度ね?、、母さんの覚悟は分かった。でもね?」


「、、でも?」


「今へし折っても、MP不足でフルケアヒールが使えないんだよぉーーっ!!!」


「あ、、そ、そうだったわね。ごめんなさい。」


俺の悲痛な叫びが届いたようで、母さんは落ち着きを取り戻した。



場が落ち着いたので、今度は魔族についての話をしなくてはならない。


街に魔族が1人居ると分かっただけで、冒険者ギルドの精鋭達が出張って捕獲にのり出すという事態になるのだ。


以前は冒険者として活動していたのだから、エチゴさんのステータス記録は冒険者ギルドに残っているだろう。


という事は、冒険者時代は人族だったはずなのに、後天的に魔族になったのが分かってしまう可能性がある。


そうなったら、原因を明らかにする為にエチゴさんは解剖されたりするだろう。


まぁ今のステータスなら、そう簡単に捕獲されたりはしないだろうから心配は少ないが。



「1つ思ったんだけど、ワカバちゃんなら自分以外の人にも隠蔽を掛けられるんじゃないかな?」


「いや〜。魔法なら何とかなったかもしれないけど、隠蔽はスキルだからなぁ。」


「なら、隠蔽魔法を作れば良いのよ!」


「ふむ。その手があったか。じゃあちょっと待ってね?」



俺はイメージを膨らませる。


スキルの隠蔽を魔法で再現するだけの、簡単な作業だと思われるかもしれない。

自分に使い続けてるんだから、効果だって理解してる。


だが実はそこじゃないんだ、隠蔽の難しさは。


難点、それは、、どのくらいの能力値にするかって部分なんだよっ!!



俺もそこでつまづいた経験がある。今日の事だからハッキリ覚えているさ。


あれは辛い経験だった。頑張って隠蔽して、内心ドヤ顔決めてたのに、即バレしたんだからな。


まぁ、魔族で魔王なのがバレなかったのは助かったが。



さておき、、同じ失敗をエチゴさんで犯す訳にはいかない。


慎重に考えなければな。





、、よしっ、これでいくぞ!!


俺はエチゴさんの頭に手を置き、魔力を放出する。


[隠蔽っ!!]



壁に写し出されたエチゴさんのステータスに変化が現れた。


それを見て、俺はホッと安心する。

どうやら成功したようだ。



エチゴ・エド(32)

種族 人族

性別 ♂

クラス 雑貨屋

LV 1

HP 10

MP 10

STR 3

DEF 3

ING 3

DEX 3

AGI 3


[スキル]



[パッシブスキル]

爆発無効、弱者の呪い


[魔法]

自爆



[補足]

元B級冒険者。弱者の呪いにより赤子と同等の能力値となった。

だが自爆魔法により相手を道連れにする。、、あれ?爆発無効があるから、死ぬのは相手だけだったww

身長181cm、体重82kg。最近は赤いふんどしにハマっている。




「ワ、ワカバちゃん?これはどういう意図で?」


隠蔽後の自分のステータスを確認したエチゴさんから、問い合わせが届いた。


俺の狙いが読み切れないとは、エチゴさんもまだまだ未熟だな。



「い〜い?強い能力値だと、それだけで相手に警戒される。だから敢えて弱すぎる能力値にしたわけよ。これだけ弱いなら警戒するのも馬鹿らしくなるだろうからね。」


「な、なるほど。」


「だけど、ただ弱いだけだと、言いなりにしてやろうって輩も現れるかもしれない。そのための自爆魔法だね!」


「言いなりになるくらいなら〜、、って事だね?」


「そうっ!しかも、こちらは爆発無効を持ってるからノーダメージ!そんな相手にわざわざちょっかい出してくる奴はいないと思うよ。」


「ふむふむ。分かったよ!」


「納得してくれたみたいで良かった。あっでも、隠蔽で弱く見せてるだけで、実際には桁違いに強いんだからね?」


「はっはっは!分かっているよ。これからは力加減に注意しないとね!」


よしよし。これで『魔族になっちゃった☆テヘペロっ♪問題』も解決されたな!



「それじゃあ、明日に備えてそろそろ寝よっか?」


「ええ。明日は忙しくなるわねっ♪」


「ははっ♪冒険者だった頃みたいに、ワクワクするじゃないか。」


「そうねっ♪ワカバちゃん、明日は頼むわねっ♪はぁ〜、、私のステータスはどのくらいになるかしら〜っ♪」


こんな話をしながら寝室へ。

そのままベッドに横になり就寝した。



、、まぁ俺は全く眠くないので、2人が完全に寝付くまで寝たフリをしていたんだが。


やはり10日に1度ぐっすり眠れば充分らしい。

眠ろうと思えば寝れないことはないが、無理して眠る必要もないしな。



俺はコソコソっと寝室を出て、リビングに舞い戻った。



「さて、と。色々と確かめておきたい事があったんだ。」


俺は自販機でコーラを購入し、ステータスを見ながら、ぐびぐびぐびっと3分の1くらい飲み込んだ。



「プハッ!、、やっぱりか。」


俺が気になっていた事。それは、この自販機の飲み物が俺の魔力で出来ているという事。


つまり、魔力で出来てるんだから、飲めばMP回復するんじゃね!?って事だ。


そしてそれは、予想通りの結果であった。


3分の1、、約166ml飲んだだけで、MP830も回復した。


毎秒9回復するから、その分を差し引くと多少の誤差はあるが、確実に800は回復したと思われる。


という事は、500mlペットボトルを1本飲み干すだけでMP2400も回復出来るという。


俺がMP使い切ったとしても、5本飲めば全快出来る。


いざという時の為に、10本くらいアイテムBOXにストックしておくべきだな、うん。



俺はコーラを10本購入し、リビングの隅っこから50cmおきに並べた。次の検証に使う為だ。



次に検証するのは、アイテムBOXの機能についてだ。


冒険者ギルドで服を回収する時に、直接手を触れていなくてもアイテムBOXにぶち込む事が出来た。


ならば、どのくらい離れてても大丈夫なのか。

逆にどのくらい離れた場所に出す事が出来るか。



俺は並べられたコーラを、足元のやつから順々に回収していく。


0cm、、50cm、、1m、、と、回収していくと、3m50cmが回収出来ず。


25cm手前にずらして再チャレンジするも、やはり失敗。


回収出来るのは約3mといったところだな。



今度は出していくぞ!


まずは足元に出るように意識して、、よし。


といった感じに、50cmずつ出現場所を離していった。


結果、こちらも3mが限界であった。


この検証を横向きと背後でも試して分かったのは、俺を中心とした3m圏内がアイテムBOXの使用可能領域だということだ。



こんなの別に知ってても意味ないっしょ!


と、思うかもしれないが、そんな事はない。


例えば敵がこちらに向かって突進してきたとしよう。


この時アイテムBOXの使用可能領域を把握していれば、突進してくる敵の足元に撒菱(まきびし)を設置したり、トラバサミを設置したり出来る。


それだけで戦況を有利にする事が可能なのだ。


知っておいて損はないでしょ?




さて、アイテムBOXの検証も終わった事だし、今のうちに今後使うことになるであろう魔法を、いくつか開発しておくとするか。


冒険者として活動するのを考えると、『索敵』『マッピング』『罠解除』は必要になるだろう。


野営する事もありえるのだから、テントとかも魔法で何とか出来ちゃった方が良いか?


事前に準備しておいてアイテムBOXに入れておくのもアリだが、物だと傷んだりするからな。


魔法で出せれば、傷んだり破れたりすることもないし、持ってくるの忘れた!なんて事もないし。


汚れた体を綺麗にするのも必要だよな。

汗でベタベタのままじゃ、気持ち悪くてストレスMAXだもんね。


う〜ん。面倒だから1つにまとめちゃうか!



と、俺は思い付いた魔法を次々と開発していく。



そんな俺の現在のステータスはこんな感じだ。




ワカバ・アサヒ(5)

種族 魔族

性別 ♀

クラス 99代目 魔王

LV 6

HP 8260/8260

MP 5972/10104

STR 6837

DEF 3652

ING 9971

DEX 4510

AGI 6822

属性 全


[スキル]

鑑定Lv6、隠蔽Lv24

アイテムBOX


[パッシブスキル]

身体強化Lv99、剣技Lv99

無詠唱魔法、全属性魔法、魔力操作Lv13


[魔法]

隠蔽Lv99、索敵Lv99、マッピング

ワカバの別荘Lv1DK、トラポ

ヒール、フルケアヒール、ロック・スター

ナップ、スリープ、ストップ

東京ドーム、1/10スケール東京ドーム

東京ドームグルメ、ワカバ社製自販機

グラビティ 100k〜5t、アンチグラビティ 1/10

フレアバースト、ラストブリザード

カースメテオ、エターナルエンド


[補足]

99代目 魔王。国民が1人増えた。現在の国民:1名。次は国名を決めましょう。


隠蔽を応用し魔法リストの整理をオススメします。




相変わらずツッコミどころ満載だな。


とりあえず、鑑定Lv6になったからか、属性とHP・MPの上限と現在値が分かるようになったな。


さて、補足さんや。

国民って何かな?それに、国名を決めろって?

一体何の話をしているのか理解不能だぞ!?


まぁ、魔法リストの整理っていうのは同意するよ。


1回きりのネタ魔法とかがずっと表示されてても、邪魔にしかならないもんな。



しかし〜、、どこから手をつければ良いのやら〜。


俺は更新明けの補足を眺めながら、ため息を吐くのであった、、。


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