心象探偵・十六夜氷華は密室で犯人を殺す。
ミステリー兎
プロローグ
いきなりで申し訳ないが、これを見ているそこの君。
推理小説や刑事ドラマ、今流行りのラノベミステリーなんかによく登場する、難事件を華麗に解決してみせる警察や名探偵を心底有能だと思っているか?
最先端の科学技術を存分に駆使した警察による現場の徹底捜査に、決して凡人には真似できない巧みな推理力を武器にアリバイ工作や密室構築、科学トリックなどの不可思議を紐解く名探偵。
その活躍のおかげで重要犯罪に限定させた検挙率は9割を越える高数値を見事に叩きだしている。
無論、これは褒め称えるべき事実である。
ただ、もう少し長い期間で物事を深く考えて欲しい。
犯人を無事に特定・逮捕し、物語を綺麗に閉めたその少し先の未来で何が起きているかの話だよ。
――そうだ。
その犯罪者たち(無期懲役・死刑を言い渡された者たち以外)には、具体的な刑期というものが言い渡され、犯した罪の反省・過去の清算が行われる。
そして。
当然その期を過ぎた者は社会復帰を果たすことになるのだが……。
ここで登場することになるのが再犯者率というものであり、その割合は5割弱。
これは信じられないほどに高すぎる割合だ。
言い方をかなり悪くすれば、警察や探偵たちのお手柄の半分は無駄になっているということになる。
元犯罪者の彼等は、その汚れてしまった経歴により、働き先がなかなか見つからずにお金が無いため、食べるものも住む場所も得られない。
当然、信頼のおける友もおらずに孤独のまま……。
と、まあ要因は多種多様、様々なのだが、最も決定的な理由はそれらではないと俺は思っている。
それは、心の中に刑期後も尚棲み続けている悪魔の存在だ。
そいつを殺さない限り、いつまでも唆され、彼らは再び罪を犯すことになる。
このような負の連鎖に対して俺は先ほどの疑問を抱いたのだ。
それらの解決なくして、彼らを無能とまでは言わないが、有能だときっぱり言えるはずがない。
……じゃあどうすればいいのかって?
残念ながら、俺はこのような戯言をただ述べるだけ。
もし、できたとしてもどうせ面倒事なので、そもそもやりたくない。
しかし――とは言いつつも、だ。
自分の深層心理内において、これまでの負の感情の蓄積物とやらが具現化した深層人格である、心象探偵と名乗る変なヤツが謎の確信を持って強く『できる』と言い張るので、そうもいかないらしい。
『また私の悪口か?』
「どちらかというと意味は特にない文句、だな。それにお前は俺の深層心理の塊。完全に否定してやるのも自己を崩壊し兼ねない。それがお前のやりたいことなら俺は迷わず従うよ」
『うむ。ならば早く捜査を始めるぞ? お前が動かねば私は何もできないからのう』
「へいへい……」
今のがその探偵と俺との心の中での日常会話になる。
こんな感じの少し変わったコンビが探偵をやるというお話なのだが、どうか温かい目で見守っていて欲しい。
――――――――
<ミステリー兎>
しばらくの間はこちらの作品を少しずつ書いていくつもりです。
ちなみにこのプロローグの時間軸は1章よりもだいぶ後の想定です。
この次の1話がちょっと文字数が他に比べても多いんですがすみません。
1章ラストまで既にほぼ完成状態です。
よろしくお願いします!
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