さっさと




 お増えになったんですけど。

 せんべいとおかきをお供えしたら。

 もう、一柱お増えになって、二柱になっちゃったんですけど。

 恋の神様かどうかわからないけれど、響が召喚したっていう一柱の恋の神様と外見は同じくヤクザっぽい。


 丁寧に手入れされていることがわかる、サラッサラで長い金髪。

 顔から溢れる大きな黒サングラス。

 ビッチシ身に着けた白のタキシードを押し上げる各々の筋肉。

 見るからに、ヤの付く自由業であり、明らかに霊でもある男性が喫煙パイプをくわえつつ、足を華麗に組んだ体勢で、ぷかりぷかり空に浮きながら、私の額に拳銃の銃口を向けたのだ。

 これで私を狙う銃は二挺になった。


(あれか。あれかな。お供え物が気に入ったから、お裾分けしてほしいって、出現なされたのかな。そうだねそれしか考えられないね。あれだもしかしたら、銃口を向ける理由も気に入らないとかじゃなくて、神様の挨拶の礼儀なのかもしれないよ。流儀かもしれないよ)


 願望が多分に含んでいる考えだけれど。

 もしかしたら。だ。もしかしたら、このまませんべいとおかきで恋の神様が味方になるかもしれない。

 いやでも仮に神様が味方になってくれたとしても。だ。

 告白の邪魔をしてもらわなければそれでいいわけで。

 もしもこのまま、せんべいとおかきで気に入ってもらえて意思疎通が叶うのなら、さっさとお帰り願いたい。


(よしっ)


「お母さん!せんべいとおかき。残り全部持って行くけどいいよね!」


 このまま、せんべいとおかき作戦続行だ。

 ガンガン攻めていくぜ。











(2024.1.10)



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る