第12話
翌日、体がだるくなり、発熱した。
やはり、アニサスの作った薬草は、一時的にしか効果がない。
「サーラさん、休んでちょうだい」
リーキは、心配そうに私に言う。
「リーキ、血清をとりましょう」
私は、これ以外の選択肢が考えられなかった。
「でも、血清は本来、感染している動物からとるもので」
リーキは、声高に言う。
「そうよね。だから、それをとりに行きましょう」
私は、熱で悪寒が走るのを感じながら、リーキに説得する。
「でも、変異した豚がどこにいるのか謎のままです。山で見てから、誰も目にしていないわ」
「そう。多分、チースト科の猿だと思わせるために、ダリアン王子が仕組んだんだわ」
私は、ベッドに横になり、考えられるだけ考えた。
「そうね。証拠隠滅のために、殺してしまった可能性が高いわ」
リーキは、同感して頷く。
「でも、万が一でも生きているなら、そいつから、血清が採れる。もう、この方法にかけるしかないわ」
私は、寒気で震えながら言った。
「わかった。探しましょう」
リーキは力強い光を目に宿す。希望を捨てていないのだ。
「この感染症に、あの薬草はもう効かないとアニサスが言っていた。飲めるのは一度だけだと。あとは、弱っていくだけね」
私は、体中が熱くなっていくのを感じていた。
「しかも、指名手配中よ」
「外に出るのは危険すぎるけど、行くしかないわ。まずは、ミンティアに会いに行く」
「ダリアン王子の婚約者の?」
「ええ。何か知っているなら、彼女しかいないわ」
私は、確信を持って言った。
そのとき、部屋のドアがギイと鳴った。
「誰?!」
私とリーキが振り返ると、青い顔をしたアニサスが立っている。
「アニサス!良かった。無事だったのね!」
私は、重い体を起こして、アニサスに駆け寄った。
「私は、大丈夫です。だけど、街が酷いことになっています。死人がどんどんと増えて、教会や病院や臨時の診療所は、死体だらけです。感染者は増加する一方で、街中、感染者で溢れてます」
アニサスは、死体の山を思い出しているのか、肩を震わせている。
「私の作った薬草は、誰も信じてくれず、飲まない。むしろ、病気を広げているのではないかと暴言を受け、逃げ帰ってきました」
アニサスは、苦い表情を浮かべて話す。
「ダリアン王子が、ハルファス王に仕掛けて、軍隊が動いているわ。ダリアン王子の指揮よ。私たちも、追われている」
リーキは、現実を直視しようと、強い口調で言った。
「そうね。とにかく、ワクチンの血清をとるために、ミンティア令嬢に、会いに行きましょう」
私は、先導を切るように言い放ち、アニサスに事の経緯を話した。
「城に戻るなど危険過ぎますが、今は致し方ない。血清さえとれれば、ワクチン開発ができる」
アニサスは、強く頷き、注射器や駆血帯、
アンプル、包帯、採血管などを鞄に入れ始める。
リーキもアニサスを手伝い、私も鞄に必要最低限の医療書と小型顕微鏡を入れ、準備が整うと、部屋を出て、城に向かった。
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