第19話 転校生
今日も学校に行く。土日挟んでの学校で若干しんどいが、隣にティアがいるから今日も元気に学校に行ける。
ホームルームの前に、先生が一人の女の人を連れて教室に入ってきた。それを見て数名の男子が「なんだなんだ?」「結構かわいい子じゃねえか」「まさかの転校生?」などと、口々に話し出す。
「転校生を紹介する。三木谷弘美さんだ」
その転校生と言うとある男子の仮説は正解だったみたいだ。
その紹介された子は、金髪のクールな感じの女子だった。俺にはわかる。この子はティアと関係がある子だと。それはティアの顔を見てもよくわかった。実際ティアは手を口で押えながら、震えている。
俺の予想としては、ティアの同僚。だが、神にしては、男じゃない。つまり、天使とかだろう。
だが女神も一人と決まったわけじゃない。女神と言う可能性もあるな。すると、先生に席を案内されていた。そこはティアの隣だ。ああ、もう確定だな。ティアに対して物言いをしに来た子だろう。しかも昨日と若干咳の配置も変わり、ティアの隣の席は空き机になってたことも踏まえると、そうに違いない。
俺は何をしたらいいんだろうか。まあ、ティアの自業自得だが、俺もティアの能力によって恩恵を受けている人間だ。見て見ぬふりなどできない。
「ねえ、ティア、いえ、ここでは長谷川真理。後で話があるわ。昼休みに二人で話をしましょう」
そう、三木谷浩美が真里に対して言い放った。先生やクラスメイトが真里と三木谷浩美を見ている。その中で俺も少し気まずくなった。さて、どうしたものか。ここからの課題は真里をどうサポートするかと言うものだ。それは今の真理の顔色を見たらすぐにわかる。顔色が明らかに悪く、もし仮に今家ならば、すぐに俺に抱き着きに来るだろう。もはや泣きそうなくらいである。真里と、彼女の間で何があったかは知らない。だが、真理を支えなければ、俺は後悔するだろう。今彼女が泣きそうなのも見ていられないのだ。
「真里、正直に話してくれ」
その後、俺はすぐに泣きそうなティアに話しかけ、
「彼女と昔何があったんだ?」
そう問いかけた。真里は……沈黙した。そりゃあ答えにくいだろう。と言うか俺の見立てでは真里が一方的に悪いまであるし。だが、
「このことを訊かなきゃ、お前の助けは出来ないんだ」
その通りだ。いくら何でも、過去を知らないのに、真理の味方をすることは出来ない。いくら真里と友達だろうと、真理の魔法によって恩恵を受けているとは言っても。
「話してくれないか」
「……」
返事は返ってこない。もう、ティアは顔が暗くて今にも逃げ出しそうな顔をしている。こうなったら、あそこの三木谷さんに聞くしかないのか? だがそれは気が進まない。嘘を教えられる可能性もあるし、何より、友達を信じたい。
「ごめん」
真里がそう言った。
「おいどういうことだ……」
その瞬間真里は逃げた。教室の外へと。
「えー」
追いかけたほうがいいのか、それとも一人にさせてやった方がいいのか。
「ああもう!」
その瞬間俺の足は勝手に動いていた。真里を追っていたのだ。そこから先はもう無我夢中で真里を追っていた。もう授業が始まるとかは何も考えずに。
そんな中、教室では三木谷が不思議そうな顔でその光景を眺めていた。
「真里!!!!!!」
走るが、真理の姿は見当たらない。考えてみればわかることだ。真里は今、誰にも姿を見られたくなくて、姿を消しているのかもしれない。いや、むしろその可能性の方が高い。くそ。どこにいるんだ。あのバカは!
「はあはあ、これじゃあ俺がさぼりだな」
学校の裏門を通って、こっそりと学校を出て、色々と探す。ここの地理に詳しくない真里が行きそうなところなんて、もはや一つしかない。俺の家だ。いや、ゲーセンと言う可能性もあるか……
そんなこと知るか! 俺は俺の直感を信じる。さあ、真理、いや、ティアはどこにいるんだ!!
「ティア!!!」
思い切り家の扉を開く。そこにはベッドに顔を伏せているティアがいた。
「おい! ティア! 大丈夫か?」
「雅夫さん?」
「ああ、そうだ!」
「私……逃げたのに……」
「ああ、だが、動揺したんだろ。お前は逃げても何も悪くはない。俺とこれからどうするか考えよう」
「雅夫さん……雅夫さんはやっぱり優しいね」
「そうかありがとう」
そして、ティアは重い口を開……かなかった。
その場には音がなかった。風の音だけが流れていた。そしておよそ二分後、ティアが重たい口をついに開いた。
「遊びに行こー!」
「は?」
意味が分からねえ。
「じゃあ、ここね」
と、公園に来た。サッカーボールと、バトミントンセットをもって。本当に意味が分からない。断りたかったところだったが、ティアが「ついてきてくれないと、話さないからね!」と言ってくるので仕方がない。
さて、俺はまた困惑している。今のティアは元気すぎる。まるで何もなかったかのように。彼女の存在を忘れたいからなのか、それとも、何か考えがあるのか。俺にはわからん。ティアの崇高な考えなどまるで理解できん。まあ、前者の説のように本当に考え無しなのかもしれないけど。
「じゃあ、行くよー!!!」
と、ボールを蹴りだした。それを足で受け、蹴り返す。
「本当にこれに付き合ったら教えてくれるんだろうなあ」
「大丈夫。てか、付き合うとか言わないで楽しもうよ」
そして時計台を見る。今の時間は九時四三分。本当ならクラスのみんなはちゃんと授業を受けているところだ。そんな中ここにいる俺は何なんだろうと、少し罪悪感に押しつぶされる
。だが、それに気づいたのか、ティアが「そんなの気にしなくていいって、何なら私の力で出席してた記憶にしとくから」と言ってくれた。別に成績の問題ではないんだがな。
「じゃあほら!!!!」
と、思い切り蹴った。俺は体育の成績がいいわけじゃないから全力でもそこまで強くは飛ばないが。
「あう」
と、ティアはボールを取ろうとして、こけて、地面に倒れた。
「大丈夫か!!」
と、すぐにティアの方にかけ夜。まあ強く蹴りすぎた俺が悪いんだしな。
「大丈夫! 女神だし」
そう言って元気そうな顔を見せてくれた。それを見て安心する。
「良かったとか言ってくれないの?」
「言葉はなくても安心してるよ」
そう言ったら、ティアが「あ、ボール転がって行っちゃう!!!」と叫んでボールを追いかけていった。本当に朝のあいつとは違うな。山本君とかに見せたら驚くんじゃないだろうか。
「ほい!」
そんなことを考えていると、ティアがボールをワープさせて手に持った。
「相変わらず便利だなその力」
「うん!」
だが、俺はその力のせいで彼女が現れたのだと思っている。俺自身も思っていた。現世でお金を作りまくったり、物を創造したり、透明になったり物をワープさせたり。そんなことをして本当にいいのかな? とは思っていた。彼女はそれを咎めに来たのであろう事は明白だしな。とは言え、やはり無断で現世に降りてきたからという可能性はまだあるけど。
「おっと!」
そんなことを考えていると不意打ちでパスが飛んできた。
「受けられたかー。今なら勝てると思ったんだけどなー」
「そんなのよそ見してても避けれるさ」
「何をー!」
と、そのままサッカーを楽しんでいく。もはや何の罪悪感もなしに。
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