第10話 女神様と映画館

「やりたいのはこれ!」


 と、ティアはゲームセンターに行くと、早速クレーンゲームコーナーに向かって走り出した。


「お前、取れるのか?」

「うん、もちろん」


 と、ティアは財布からお金を取り出す。


「お前まさかまた偽札か?」

「うん」


 まあ、怒るのも面倒くさいし、よく考えたら個人のお金で経済破綻しないよな。あまり、使わない限りは。


「まあ、早速やりますか!」


 と、ティアはクレーンを巧みに操り、一つ目の商品を取り……普通に取れなかった。


「え? これ落ちるの? しっかりつかんでいたのに」

「諦めろそう言うものだ」


 クレーンゲームの機械は以下にアームの力を弱くするかを競っている。もうそれがしっかりとゴールまで運んでくれる……そんな淡い期待などしない方がいい。まずはそれを教えてやる必要があるらしい。


「だが、方法がある。すこしずつゴールの穴へと持っていくことだ。上手くひっかけたりとかしてな。そうすれば取れる確率は上がると思う」

「なるほど」


 と、ティアは俺のアドバイス通りに少しずつ穴の方へと動かす。とはいえ俺もそこまでうまいわけじゃないから、あんまりアドバイスには奈良にと思うが。

 そして、ティアのアームはうまいこと商品を穴の方へと引き寄せた。


「お前上手いな」

「ありがとう」


 とティアは調子に乗ったみたいで呑トンと穴の方へと商品を引き寄せていく。


『ぽと』


 その音がして、商品が獲得された。


「これは何のやつなんだ?」


 俺も見たことがないやつだ。青髪ロングのかわいい女の子のフィギュアだった。俺は普通に知らねえなこのキャラもアニメも。なんかアニメのタイトルは『みんなのアイドル喜美さん』と言うタイトルだった。その喜美と言う名前のキャラらしい。見た目は普通にかわいい。


「てか、時間ねえじゃねえか」

「確かに!」


 と、すぐさま、映画館に駆け込み、ポップコーンとコーラを買い、映画館へと入った。


「風間に合った」

「うん、間に合ったね」


 そこでは画面にはCMが流れていた。まあ主には映画の告知とかだ。アニメ映画や、実写映画、ドラマ映画など多種多様な映画の広告がある。それを見てると俺もいくつか見てみたいなと思う奴があった。そして隣を見ると……


「おまえぼりぼり食うな」


 ものすごい勢いでポップコーンを食べているティアがいた。


「だって美味しいんだもん。塩味がちょうど良くて。最高!」

「それは良かったな」


 と、ティアの頭を撫でる。


「うん!」


 ティアも笑顔で応えた。映画すら始まっていないのに結構楽しそうだな。


 そして、映画が始まった。最初に日常のシーンが始まった。平凡などこにでもいる男子高校生が高校に行くために、母親の知り合いの家に暮らさせてもらうというものだった。しかし、その一人娘が、クラスメイトでなおかつ隣の席だったというシーンから始まった。なるほど、すごい偶然だな。


 そしてそのまま二人が結構デートとか、色々と青春をしている。俺もそんな感じのことしてえな。


 そして、一時間四〇分の映画はあっという間に終わった。


「どうだったんだ? ティア」

「面白かったよ。まあ、まさかラストシーンでロンドンに行っちゃうと思わなかったけどね」

「それは俺もだ。まさかこのまま会えないとは思わないが、続きが気になるところだな」


 今回の映画は、漫画を若干ダイジェストにして、三部作に分けて映画にする企画のものだ。だから進めておいてだが、俺はほんの少しだけ怖かった。評判はいいが、俺もティアも楽しめなかったらどうしようって。だが、そんなことはなかった。良かった。


「それでこれからどこに行く?」


 そのまま帰ってもいいが、お腹減ったところだ。


「どこかレストランに行くか?」


 そもそもティアのお金があればどこにでも行けるだろう。まああまり使いすぎると日本経済に悪化とかあるかもしれないが、まあいいだろう。俺だって贅沢したいし。


「うん行く!」

「じゃあ調べるか」


 と、近くのご飯屋さんを調べる。


「何が食べたい?」

「うーん、肉かなあ。特に牛」

「じゃあ、こことかどうだ?」



 俺が見せたのは、ここの近くの、焼肉屋さんだ。星4.2でかなり高めで、値段もリーズナブルだ。


「いいね!」


 と、その店に行くことになった。俺の財力じゃああまり外食などできないし、本当ありがたい。ティアの偽金のヒモになろう。


「すみません二名行けますか?」

「はい大丈夫ですが、今日は一〇時ラストオーダーの一〇時半閉店ですが大丈夫ですか?」

「大丈夫だ」

「ならこちらへどうぞ」


 と、窓際の席に案内された。そこに着くとすぐにティアは靴を脱いで、そのまま椅子に三角座りした。


「お前、俺と二人きりだと、本当子供だよな」

「私が雅夫さんに気を許してる証拠ってことで許して」

「たぶん今のお前を学校の事かが見たら驚くだろうな」

「そうかな、私だって学校ではあんな感じだと思うけど」

「まあ片鱗は見せてるな」


 そんな会話をしながらメニューを選ぶ。


「私これがいい!」


 と、ティアはステーキを選んだ。


「これの大盛り頼んでいい?」

「言ってもお前、偽札で払う気だろ」

「バレた? 雅夫さんの分も払ってあげるよ」

「じゃあ俺も贅沢しようかな」


 まあ元からその気分だったけどな。どれだけ食べてもただという何というご褒美だ。まあ悪いことしてる気分にはなるけれど。だが、こんな幸せはいつも味わえるわけじゃないしな。


「俺は……」


 とは言え、何を食べるかマジで迷う。どれでも食べて良いとは言われてもお腹には限界がある。今の気分に合う料理か……。


「迷ってるんですか?」


 俺のそんな状況に気づいたのか、ティアが話しかけてきた。人に言われると少しだけ嫌だな。


「ああ、迷ってる」

「じゃあ私と同じやつにしたら?」

「いや、ステーキの気分じゃない」

「まあでも早く決めてよ。私待つの嫌だし」

「分かってるよ」


 と、メニュー表をめくりまくる。その間もティアから「ねえまだ? ねえまだ?」と言われる。俺だって迷いたくはないんだよなあ。



「もうこれにするわ!」


 と、数分迷った結果、焼肉にした。気分と合うのがもう焼肉だと思ったからだ。

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