数えきれない好きを君に 

ヤジマ ハルカ

1話 生い立ち


4月1日



市内にある産婦人科で、

私と彼は同じ日にこの世に産まれてきた。

さまざまな偶然が重なったため

自己紹介をしておくことにする。





棚橋家の長女


棚橋 満 (たなはし みちる)


予定日を超過し、

3216グラムと少々大きめでかなりの難産。

たくましい産声を上げたのち、

猿のような真っ赤な顔をして

泣き喚いたらしい。


名前の由来は、破水した夜に

陣痛に耐えながら苦しむ母が

車から見た月が綺麗な満月だったから。



そして同じ日に新生児室の隣に眠るのが



鳳山家の長男



鳳山 奏 (とりやま かなで)



2576グラムで予定日ピッタリに

陣痛からわずか3時間で産まれてきた。



男とは思えないほど美しい容姿は、

両親によく似て女の子のように可愛く、

新生児室を眺めていた人たちも

私を男、彼を女と間違えるほどだったとか。



父さんは私が産まれる前に

翻訳家の仕事が軌道に乗り始め

より専念するため母さんと田舎を飛び出した。



そして都会に出てきてまもなく

家を建て、隣に住んでいたのがまさかの鳳山家



こんな偶然はないと、

両親たちはすぐに仲良くなり、

赤ちゃんの頃から家族ぐるみの

お付き合いをずっとしている。



幼稚園、小学校、中学校

共に一緒に通い、沢山笑って

奏のそばは居心地が良くて楽しかった



女よりも綺麗な奏のそばで

男のように活発に走り回る私



こんな楽しい時間がずっとずっと続いていく。

私の隣には奏がいる。



そう思っていたのは私だけだった‥‥‥

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る