第4話 ロリコンの性

衛士さんの職務質問はあっさりと終わった。


それもその筈、中身は度し難い変態だが見た目は子供だ。血まみれで隙を見て命からがら逃げて来たと言えば疑う人は少ないだろう、能力的な問題で。


あと金貨については生き別れた母に持たされたなけなしのお金ですと言ったら全額返して貰えたのでチップとして衛士さんに数枚渡したら態度が急変し


「困ったら俺の所に来い!必ず力になるぜ!」


と急に熱血漢になったので金貨数枚は多すぎたのかもと思った。


「じゃぁ聞きたいことはこれで終わりだから、困ったらまた訪ねて来い。じゃな」


来た時よりも良い笑顔で帰って行く衛士さんを営業スマイルで見送った。


「さて今後の身の振り方だが…」


衛士さんに聞いた所によるとココは孤児院を併設した教会で食事を運んでくれたシスターさんともう1人で細々と運営していて身よりの無い『小さい子供』を預かっている。


「っく!体が疼く!変態博士の魂が!ロリコンの性が疼く!」


博士の意識は失われているハズなのに体の奥から『篤い気持ち』が沸き上がってくる。

しかし頭は冷静なのか『笑止!早熟の果実を求めるなど、愚かな!真に求むべきは熟れて芳醇な香りを放つ果実を求めるのだ!』と気持ちと考えが鬩ぎ合っている。


「(我が事ながら…度し難い変態だ)」


直視したく無い事実から目を逸らしながら部屋を出ると少し先に教会の礼拝堂の様な場所が見え、その中に複数の子供とシスターさんが居るのが見えたのでそこに足を向けた。


「皆初めまして!今日来たばかりだけどよろしくね!」

「あれー?君だれー?」

「みたことないよ?悪い人?」

「なんだおまえ!」

「そーだそーだ!」

「‥‥悪い人嫌い」


努めて明るい感じで話し掛けるも排他的な対応だった。

流石に歓迎されていない感じだったので「声が聞こえたので様子を見に来ただけ」と礼拝堂に来た目的を話してから礼拝堂を後した。


取り合えず孤児院内を歩いていると中庭でシーツを洗う食事を持って来てくれたシスターさんを見つけた。


「こんにちは!手伝いますよ?」

「へ?あぁ~大丈夫大丈夫!慣れてるから」


ふむこっちが素なか?

中々フレンドリーな感じがするし話しかけやすいのが良いね!


「いえ、流石に治療も受けさせて貰いましたしそのお代と思って貰えれば」

「えーっと本当にそう言うつもりは無いけど‥‥じゃぁお手伝いお願いね?」


真剣な顔でシスターさんの目を覗き込んでいたのが功を奏したのだろう、案外あっさりと手伝いの許可を貰えたので早速シーツをもみ洗いし始めた。



「君‥‥手際いいね?」

「そんな事はないですよ」

「ふーん‥‥おねしょでしょ?」

「違います」

「フフフフ、私は判ってるから大丈夫だよ」


そう言ってシスターさんはニッコリと微笑む。


その『判ってますよ~』的な顔がイラっと来たがこの人を怒らせるメリットが無いので黙々と洗う。


パンパン!

洗い上がったシーツの皺をのばしながら物干し竿に干す。


「ふぅ~お手伝いありがとう。助かっちゃった」

「いえいえ、お互い様って事ですよ」

「そう言えば君のお名前は?」


そう言えば今まで名乗った覚えがないな。

前世の名前を出すのもなんか違う気がするし、かと言って博士の名前を出すのも…まぁいいか。

「俺の名前はオーキス」

「オーキス‥‥」


シスターは『オーキス』の名前を聞いて何か考え込んでしまい話しかけても上の空になってしまったので放置して怪我人用のベットに戻る事にした。



少しして夕食に呼ばれ、子供達と改めて自己紹介を交わし仲良くなった。



それから約1週間、心の半分は非常に満たされていた。

悔しい事に俺の好みは『ロリババア』に変貌したハズなのだか・・・何故か心が潤って居る。



このまま孤児院に居ればロリに囲まれて生活することが出来る・・・ならばこの孤児院を終の住処にして毎日ロリ達を眺めて老いる・・・『ってこれじゃ博士のトゥルーエンドだよ!』と叫んでしまったのは反省している。


急に叫ぶな!と怒られたからな。


それはともかく!この体は今は俺の物なので出来れば『ロリババア』を探しに行きたい。

そしてそのロリババアと一緒に前世知識で空中庭園を作り、最終的にはロリババア王国、通称『ロリバー王国』を作りロリババアを侍らすつもりだ。


なので取り合えずは金を稼ごう。何をするにしても金を稼ぐのが先決だ。

子供達と遊ぶのはそこそこにして熱血衛士さんに金を握らせて手っ取り早く金を稼ぐ方法を探そう。


★★★★★★★★


「よぉ!遂に俺の力が必要になったか!」

「ああ、まず情報が欲しい。俺は魔道具師だからこの街で魔道具の素材を売ってる店の紹介と手っ取り早く金を稼ぐ方法が欲しい」


パチっと金貨を1枚テーブルに置く。

するとニコニコ顔が一瞬で真面目顔になった熱血衛士さんが口を開いた。


「魔道具!?まさか作れる奴がいるのは知ってるが殆どいない・・・ってすまん。詮索は無しだな。ゴホン、この街では一軒だけで裏通りの端にある寂れた看板の店だ。あそこは表では出回らない素材が多い」


ふむ。それは良い事を聞いた。

博士の記憶があるので当然魔道具については作るのもお手の物だ。

周囲の人がどう作っているのか不明だが、博士は物の形を変える『整形』と物に魔法を込める『付与』の二つを使って魔導具を作っている。


勿論素材の良し悪しも重要なファクターになり、素材欲しさに危険な橋を渡る事もある程だ。


「流石だな」

そう言いながらパチンと金貨を上乗せする。


「で、次の手っ取り早く稼ぐ方法だが‥‥2つある」

「二つ?」

「ああ、一つはこの街に巣食う盗賊の退治だ。首を持って来れば賞金が出るし賊の宝は討伐した奴の物だ。もう一つは冒険者になる事だが‥‥規定では12歳からしか登録できないんだよな‥‥」

「俺はこんなナリだが成人を超えてるぞ?」

「‥‥本当か?」

「コレが引き篭もっていた弊害さ」

「‥‥まぁ一応後見人が居ればもん「パチ」…」

「皆まで言わなくてもわかる。手数料だ」


そう言って追加の金貨を載せる。


合計で5枚の金貨が熱血衛士さんの前に積まれているのだが流石に5枚は多かったのかちょっと困惑した顔をして「本当にいいのか?」と聞かれたので

「時に情報は金貨以上の価値になるのを知っているからな、有益な情報には正当な対価を払うのは当然だ」と答えた。


これは誰かの受け売りなのだが、言って居る事は至極まっとうなので情報にお金を払うのに躊躇いはない。


(そもそもこの金も奪った物だからな!心は一切痛まないしここで適当な情報を掴ませるようなら今後はさようならだな)


「そうか‥‥なら遠慮なく。明日には紹介状を書くからそれでダメなら教えてくれ」

「委細承知」

「毎度~」


部屋を出る途中にも関わらず熱血衛士さんは『今日は○○ちゃんと朝までだな』とだらしない顔になるので、せめて外に出てからにして欲しいと思うが…まぁ日が暮れないうちに魔道具店にでも行ってみるか!


一応シスターさんに声を掛けてから紹介された魔道具店に向かった。



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