episode4 悲しみ

♪ピロン

【少しは気分落ち着いたでしょうか?

少しずつでも良いので引き続き自分を褒めてください。美味しい物も食べながらゆっくり出来ることを探してみてください。

そして、異性でも同性でもここまで本気で好きになって想いを伝えたということは素敵なことでもあり、誇ってもいい事なのです。

自分を責めるのは絶対にしてはいけません。

あなたの気持ちは偽りではなかったのでしょう?

引き続き辛い時や悲しい時は私に遠慮なく相談してくださいね】


『はい、ありがとうございます。

まだ辛いですが、少しずつでも自分を褒めていきたいです。彼女を好きだった気持ちに偽りはありません。

今日は初詣行ってきて気分を変えるように努めました。

引き続きよろしくお願い致します。』


確かに私が真緒を好きだった気持ちに偽りはない。

でも誇ってもいいのかな。

気持ち悪いって拒絶されたから…そんな気持ち誇ってもいいのかな。

本気で彼女のことが好きだったから。


真緒とのツーショトや写真、他にも貰ったものを片付けてもう真緒のことを自分の中でなかった事にしようとした。

真緒のためにもう私から声を掛けない。

姿を表さない。決めたことだ。


『この写真…全て削除』

『このアロマオイル、捨てよう』

『このアルバムの写真、破って捨てよう』


失恋した相手にもう恋愛の気持ちは抱けない。

未練なんてないけどまだとても悲しい。

本音ではまだ真緒のことが好き。

真緒に気持ちが届いて欲しかったな。


1つ大きな物があった。

『大きな花瓶…捨てよう』


仕事のプロジェクト成功した時に部長にお揃いで貰った記念の花瓶。

私はそれも要らないとビニール袋に入れてトンカチで割ろうとした。

けどなかなか割れてくれない。


『あれ、なんで割れないの』

『お願い割れてよっ痛た』


何度トンカチで割ろうとしても日々も入らない。傷が入っただけ。


『全然割れない………』


…ポロポロ…

突然目から涙が溢れ出てくる。

理由は分からないけど真緒関連のことだろう。


『こんなに苦しいのに全然楽にならない』


『本当は全て忘れたいのに…花瓶が割れてくれないから…苦しいのに…全て思い出捨てたいのに…』


涙が止まらなくなってきた。

もうひとつのことも考えていた。


『真緒の連絡先や電話番号全て消そう…彼女の為に…』


もう真緒には自分から連絡しない。

その方が真緒もいいだろう。彼女も幸せだ。

そう思った。


そしてLINEもブロックした。


__文面__

《恋心向けられても気持ち悪い》


さよなら、もういいの。私はもう恋愛したくない。

この恋が正直に言えば叶って欲しかった。

報われて欲しかった。

好きって気持ちが伝わって欲しかった。

真緒を私だけのものにしたかった。


涙だけが出て時間も進んでいく。

私の心だけが進まない。


♪ピロン

【今もあなたはとても苦しいと思います。

今も自分のことを褒められていないはずです。

私が代わりに言います。

辛かったね、頑張ったね、苦しかったね。

自分自身を否定するということは

想っていた女性、思い出全てを否定することになるのです。

想いを伝えられたことは本当にすごいことです。

勇気のある行動です。

この経験は必ずあなたを成長させます。

絶対に人生に生かされます。

どうかまずは自分を責めないで…】


私、真緒を否定しようとしていたんだ…

今までの思い出を否定しようとしていたんだ…

なんてことしてしまったんだろう。


辛かった、苦しかっ他、悲しかった。

真緒は私より俊哉さんの事が大切だもんね。

私より俊哉さんが1番だもんね。

私なんて最初から勝ち目のない恋していたね。

苦しかった。


最初から勝ち目のない恋をしてバカみたい。

恋なんてしなければよかった。

真緒を好きにならなきゃ良かった。

私は大切な存在じゃなかったんだ。

私はただの友人や知り合い程度だったんだ。

私は貴女が1番大切な存在だった。

それをわかって欲しかった。

辛かった。


私の想いに気付いて欲しかった。

俊哉さんが一番大切な存在だと知って辛かった。

私は本当に真緒のことが一番大切で大好きで大事で、真緒のおかげでここまで仕事も生きることも全て頑張れたんだよ?

それが無くなった私は何も価値がない。

真緒のおかげで私は毎日生活が輝き出したんだよ?


私にとって真緒は世界で一番大切な存在。

真緒にとっては俊哉さんが一番大切な存在なんだよね。悔しいな。悲しいな。

その立場に私がなりたかったな。

もう無理なことは知っている現実だもん。


そもそも私の事なんて眼中になかったね。





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