霧の朝
霧の朝、静寂な町にトッ、トッ、トッとカブのエンジン音が聞こえてくる。新聞配達だろうか。どこか懐かしいような、心地よい一日の始まりを感じさせる響きだ。
図書館で借りた重みのあるハードカバーから顔を上げる。返却期限が近づいたため、少し読んでみて気に入らなければそのまま返してしまおうと思っていた。それなのに、気づけば朝を迎えていた。
カップの底には冷めきったココアが少しだけ残っている。
物語に心が入り込んでしまって少し腫れぼったくなった瞼にカップをあてると、じんわりと熱がほどけていく。
もう少しだけ読もう。
ココアを飲み干すと、そっとページをめくる。
霧が町を覆う静かな朝に、物語の余韻がそっと漂っていた。
了
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