日本語版 第0話

 失ったものは取り戻すことが出来ない。私は小さい時からそんなふうに教わってきた。聞けば私の祖先は、重大な過失により、もともと住んでいた楽園を地獄へと変えてしまったのだという。


 しかし、それを責めたところで状況が良くなることは無い。私は私の、ソウル・オペレーターとしての使命を最期まで果たすだけ。


 操縦席に広がる何百ものコントロール。それを使うたびに私の寿命は、確実に減っていく。だが、誰かがソウル・オペレーターにならなければ、この宇宙船は船内設備の維持すらできずに、広い宇宙の中で簡単に分解されてしまうらしい。


 本当にそうなるのか。興味はあるが、試すことは不可能だ。私の乗る宇宙船、『ソウルズ・エンジン』は、常に400人以上もの魂と根幹部分で繋がっている。そのためそれをするには、かなりの割合のソウル・オペレーターが、自らの意思で『ソウルズ・エンジン』との接続を切らなければならない。


 だけれどもその瞬間に、『ソウルズ・エンジン』は別の魂を要求するだろう。『ソウルズ・エンジン』の動力源である魂が少ないほど、その負担が既存のソウル・オペレーターにのしかかるからだ。ゆえに、ソウル・オペレーターが多く入れ替わるタイミングで、精神を病むソウル・オペレーターだって少なからずいる。


 なぜって?生体反応を調べればわかる。コントロールを使った相互監視システムが構築された『ソウルズ・エンジン』では、ソウル・オペレーター同士の点検作業だって日常的だ。その結果は全部で6種類。正常反応、微弱反応、断片反応、無効反応、逃避反応、敵性反応。精神を病んだ場合は断片反応に当たる。


 だが私は幸いながら、今のところ病んでいない。したがってまだ、冷静な判断ができる。逃げ出すつもりはない。これは私、いや私だけじゃない。数多くのソウル・オペレーターが魂を燃やす宇宙への旅だ。

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