第53話 ギルド

 僕はシーフに討伐クエストの仲間が待っているという、ギルドという所へ案内された。


 「よう。シーフよく来たな…約束通り役に立つ仲間は連れて来れたのか?」


 そこにはなにかとガラの悪そうな男達数人が待っていた。


 そのうちのリーダーぽいやつがシーフに聞いた。


 そいつはスキンヘッドの大柄な男だった。

 顔には大きな傷が刻まれていた。


 「ああ、もちろんだ!なんとクエストランクSのやつを連れてきたぞ!」


 シーフは自信満々に言った。


 「ほう…Sランクだと?」


 スキンヘッド男は眉をひそめ言った。


 「ああ!なんと、こいつがSランクなんだぜ!」


 シーフは背の低い少女を紹介するかのように言った。


 「…お前…名前は?」


 スキンヘッド男が聞く。


 「私はカナファ」


 カナファは名乗った。


 そういえば名前を聞いてなかった。あのあとシーフが急かすようにここに連れてきたからだ。


 謎の少女、カナファ。彼女はクエストランクSという。それはシーフの反応を見る限りすごいことなのだろう。


 「そうか…カナファ…お前本当にSランクなのか?」


 スキンヘッド男がカナファに聞く。疑ってるようだ。


 「なぁ…シーフ…あのスキンヘッドは何者なの?」


 僕はシーフに耳打ちで聞いた。


 「スキンヘッドとは失礼だろ…あの人はこの討伐クエストギルドのリーダー、コスイだ」


 スキンヘッド男は討伐クエストギルドのリーダーらしい。なんとなくそうだろうと思っていたけど。


 気づくとカナファは名刺みたいなのを見せていた。


 そこにはたしかにSランクと記されているらしい…。何度もいうが僕はこの世界の文字は読めない。


 「そうか…お前本当にSランクなのか…」


 コスイは納得したようにそう言った。


 コスイの隣にいた男がなにやら慌てて様子でコスイに耳打ちしている。


 なーんか…怪しい奴らだなぁ。前に戦ったゾルデニックという盗賊団のカマセとコスイは類似する感じに思う。


 コスイは落ち着いた様子で耳打ち返した。

 何を言ったのかは当然わからない。


 「んで?カナファのことは理解した。そこのそいつは?」


 多分僕のことを言ったのだろう。


 「ああ…ユウエイっていうんだ!俺が変な奴らに絡まれてるところを助けてもらったんだ!みたところ、腕はありそうだし、金に困っていると言ったから連れて来たんだ!」


 僕の紹介が雑だな…。

 通りすがりのヒーローとか言って欲しかった。


 「そうか…ユウエイ、お前のクエストランクは?」


 コスイが僕に聞いてきた。


 ん?クエストランク?あるわけないだろそんなもん。


 「…僕のクエストランクはまだありません」


 僕は正直に答えた。


 「はぁ?まだないだと?マジの初心者かよ…全く…」


 コスイが呆れたように言った。


 ムカつくな…しょうがないじゃないか、人間のエリアに来てまだ1日もたってないし、クエストランクなんてものは知らなかったワケだし。


 「お前は本当に実力があるのか?」


 コスイが僕を睨みながら言った。


 僕に実力があるかって?なんで意味のない質問なんだろう。正直呆れたよ。人を見た目で判断することは良くない。(僕がカナファをただの少女だと思っていたことはノーカンとして)


 「……ならあなた達を倒してみせましょうか?」


 僕は殺気を出しながら言った。

 僕の実力が知りたいんだろ?だったら、彼らに僕の強さを味わってもらう方が早い。


 「……いや…そんなに自信があるなら別に構わない」


 コスイは少し引き気味に言った。


 僕の殺気にひよったのかな?


 「まあ、いいだろう…カナファ、ユウエイ。お前達をギルドへと歓迎しよう…ドラゴン討伐は明日の朝に出発する…準備しておけ」


 コスイが言った。


 「一つ聞きたい」


 カナファが釘を刺した。


 「なんだ?」

 「ドラゴン討伐の報酬は山分けなんだよね」


 カナファが感情の無いトーンで言った。


 「もちろん…討伐が成功したらだけどな」

 「……わかった」


 カナファは納得しようだ。


 「因みにお前には万が一のための保険に入ってもらう」

 「保険?」

 「ああ…お前が怪我をしたときのための保険だ」


 保険なんてあるんだ…


 でも保険って入るのにお金がかかるのでは?


 「でも僕お金なくて…」

 「俺のギルドで保険金は出してやる」


 なんて太っ腹!


 少しコスイを見直した。


 「とりあえずユウエイ…お前は今日中にクエスター登録しとおけ、登録しないと討伐クエストには連れてけない」


 え…そっか登録しないとダメなのか。


 「わかった……それはどこで?」


 「…シーフ…連れて行ってやれ…」


 コスイは呆れたように言った。


 「了解!じゃあ早速クエスター登録しに行こっか!」


 シーフはそう言うと僕の手を掴んで連れて行かれた。


 「じゃあ…明日に会おう」


 コスイがそう言ったのは聞き取れた。



 



 「じゃあ私も行くよまた明日ね」


 カナファがそう言って出て行こうとした。


 「ああ…明日の朝、またここに来てくれ」


 コスイは出て行くカナファに言った。


 



 



 




 

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