第44話 確かな手応え

 僕はその生物が生き絶えたのを確認した。


 僕的には問題なく倒すことができたが…正直なかなかの強さだった。


 魔力量、攻撃の強さ、スピード、戦方……


 強敵だったと呼ばざるおえないな…


 なんで、こんな僕がここまで戦えているのかは疑問だが…隠されていた力が目覚めたのだろうか…。


 それともこの世界はファンタジーみたいな世界だから、僕も自動的にこうなったのか…


 まあ、無事に倒せたし結果オーライだね。


 僕は先ほどの戦いに少なからず手応えを感じていた。


 あの相手に傷一つついていない自分に少し驚いていた。


 魔王デーモンの姿なら傷やダメージがつきずらいのはわかっていた。


 しかし、今の姿は人間の姿…如月優永、そう僕の姿だ。


 一撃でもくらえば致命傷になってしまうだろう。


 だが僕は一撃もくらうことなく戦いを終えることができた。


 その理由として、スピードが大きく影響しているだろう。


 この人間の姿はデーモンの姿と異なる部分がいくつかある。


 その中の大きな違いは圧倒的なスピードだ。


 逆にいえばデーモンの姿はパワータイプってところかな。


 そして人間の姿は剣を使うことができる。


 デーモンの姿だと剣を使うことに適していない。

 

 殴った方が強い。あと、魔力波でぶっ飛ばしもね。


 僕的には剣を使った戦いの方が楽しい。


 殴り合うのも男のロマンって感じて渋いけどやっぱ剣術だよね。


 とわいえ…この魔剣…ダーインスレイヴとかいったかな…簡潔にいって扱いずらい。


 見た目は漆黒の剣!って感じでカッコいいのだけど…


 とにかく魔力を根こそぎ持ってかれる。


 気を抜くと体中の魔力を吸い尽くされてしまうため常に魔力をねらなければならない。


 そして魔力量の調整。


 剣に込められた魔力量を調整しなければ魔剣が暴走してしまう。


 暴走とは一振りが強大で必要以上の魔力量で斬りつけるためモーションが大きくなる。


 一撃当たれば凄まじい威力なのだが剣による戦いには細かい動きが重要だ。


 そのため魔力量を多くしすぎないように調整する必要がある。実に使いずらいのだ。


 先程の戦いのフィナーレの必殺奥義は僕が3秒で考えたアルティメットスラッシュ。


 子供っぽい必殺名だが、シンプルな方がいいだろう。誰が聞いてもかっこいい名前だろう。


 あまり難しい必殺名にすると僕は忘れてしまう。その都度必殺名を変えているよりもシンプルな必殺名で覚える方がいいだろう。


 アルティメットスラッシュは単純な必殺技だ。


 魔剣にありったけの魔力を込めるだけ。


 そうすれば僕から吸い取った魔力が暴走し、とてつもない威力となる。


 それがアルティメットスラッシュだ。



 面倒なことが多い魔剣だが使いこなすと強い。


 あの硬い生物の皮膚をも豆腐のように斬ってしまう斬れ味。素晴らしい、流石は魔剣といったところか。


 なんでも斬れると思うよね。残念ながらでもそうはならない。


 あの生物の皮膚が簡単に斬れたのは皮膚に流れる魔力の扱い方が雑だったのが原因だ。


 あの生物は体の外側に魔力を解放しすぎている。そうなってしまうと内側の魔力量が少なくなる。つまり強度が落ちてしまう。


 たぶん強い剣術使いと戦った場合その剣術使いの剣を簡単に斬れるかといわれれば答えはNOだ。


 なぜなら剣術使いは剣に魔力を込める。


 つまり剣の強度が自然と上がるというこだ。


 そうなれば魔力を込めた剣同士ぶつかり合っても斬れることはないだろう。


 もしあるとしても砕けるとかだね。


 残念ながら、なんでもは斬れないのだ。だが、なんでも斬れてしまっては剣と剣の斬り合いができなくなってしまう。それはそれで戦いを楽しめない。


 ……………人間、魔人をも超越した存在。


 と、この生物は言っていた。


 たしかに、人間でも、魔人でもなさそうだったな。だとしたら、新しい生命体か何かなのか?謎は深まるばかりだ。


 考えるのはよそう、僕は頭があまり良くないし、頭がオーバーヒートしてしまう。昔から考えすぎると頭が痛くなるしね。


 僕が思うに人間や魔人をも超越したものはもはや神だろうな。


 神様なんていないとは思うけど…。


 いるかもしれないな…


 まて…そんなことをゆっくりと考えている場合ではなかった。


 ソルメイスのことをすっかり忘れてしまった。


 開幕パンチでぶっ飛ばされて気絶しているだった。


 「ソルメイス!大丈夫か!」


 横たわるソルメイスの顔を伺う。


 「うう…うううう…痛い………」


 ソルメイスはドッターボールを腹に直撃してしまった子供のような表情をしていた。


 「ソルメイス、ソルメイス!おい!大丈夫か!」


 僕はソルメイスを何度もゆすって起こす。


 「ん…うう………あっ…メアさん」

 

 少し唸りながらソルメイスは目を開けて言った。


 「大丈夫か?意識はハッキリしているか?自分の名前を言えるか?」


 一応目を覚ましたが、ぶっ飛ばされた衝撃により記憶障害などになっている可能性があるので僕は聞いた。


 「ぼ……僕はソルメイス…メアさんの弟子です……よね?」


 ソルメイスは少し笑を浮かべて言った。


 「フッ…どうやら頭はやられてはないようだな。安心した」

 「ムッ……あまり僕を甘くみないでくださいよ…これでも僕は勇者なんですよ?」


 ソルメイスはむすっと口を尖らせて言った。


 「しかし…ソルメイスは弱いからな…念の為だ」

 「……まだ弱いだけです!」

 「そうか、これからだもんな」

 「それより…あの化物は………」

 「私がここにいる時点でわかるだろう?」

 「そうですね…当然の如くメアさんが倒してくれたんですね」

 「そういうことだ」

 「流石です師匠」

 「フン…師匠となれば当然であり、私の勝利は必然だ」

 

 僕は師匠という言葉に浮かれてそんなことを口走った。


 「あっ…そういえば…」


 僕は自分の服の内ポケットを探った。


 「これを飲むといい」


 僕が出発する時にフカシギから怪しい液体を貰ったのを思い出した。


 「デーモン様…これをどうぞ〜」

 「ん?この怪しげな液体ははなんだ?」


 フカシギは僕に液体の入った片手で持てるサイズの小さなビンを3つ渡してきた。


 「もし仮に怪我などしましたらこれを飲むといいですよ〜」

 「回復液か?」

 「はい、自作の回復液ですね」

 「………変なもの入れてないだろうな?」

 「ハッ……い…いい入れているわけ…ないじゃないですか〜アハ…アハハ……」


 怪しいな…。


 フカシギは極度な実験オタクだ。


 フカシギの研究室には入ったことはないが、何やらやばい実験ばっかしているとネインやレーンからよく聞く。


 この液体にやばいものを入れていても不思議じゃない。


 だが…一応僕のために作ってくれたらしいから持ってくだけ持っていこう。


 「ありがとう、フカシギ。使う機会があったら使わせてもらうよ」

 「ぜひ使ってみてください、そして帰ってきたら結果報告を……」

 「結果報告?」

 「いえ…!なんでもありませんよ〜」

 

 僕はソルメイスに渡した後にこの一連の記憶を思い出した。


 僕が止めようとした時にはもう手遅れだった。


 その時にはもうソルメイスは一気飲みを終えた後だった。


 「?師匠?どうしたんですか?」

 「……お前なんともないか?」


 僕は恐る恐る聞く。


 「別になんとも………アアア…アア!」

 「どうした!」


 ソルメイスは口を押さえながら叫び出した。


 「辛いぃぃぃぃぃぃぃ!!!く!口が燃えてます!!!」


 どうやらこの液体は激辛の何かだったらしい。


 僕は叫ぶソルメイスを前に飲まなくて良かったと安堵するのだった。





 


 


 


 


 

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