夢の代償

天々

第1話

 私は、漫画家志望のフリーターである。


 現在は、書店でバイトをしながら、連載会議に提出する漫画を描く生活を送っている。


 そんなある日、ネット掲示板で、あるトピックを見つけた。


 題して“願いを叶える福子さま”


 スレ主によると、“555代目福子”というSNSアカウントのダイレクトメール(DM)に、願い事を書き込んだところ、願いが叶ったのだという。


 そのおかげでE判定だった志望校に合格したらしい。

 スレ主以外にも、自分もプロポーズが成功したとか、コンサートチケットが当たった、などの書き込みもある。


 スレ内は、“E判定から合格はすげえ”、“福子さまはガチ”、“イッチおめでとう!” などと大いに盛り上がった。

 そのうち福子さまのアカウントってこれじゃね? とリンクを載せる者も出てきた。


 スレ内が最高潮に盛り上がる中、注意を促す者もいた。


“福子さまに叶えてもらうと、その願望の大きさに比例した記憶を失う。だから絶対に使うな”と書かれていた。


 そのコメント以降は、“やばそう”、“こわい”、“うさん臭い”、などと否定的なコメントが増え、スレ内は自然と沈静化した。


 私はパソコンを閉じて、布団に入った。

 願いを叶えてくれる代わりに記憶を失う……か……。


 私は、目を閉じながらも福子さまのことが頭から離れなかった。

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