007


翌日、廃墟フィールド。

警戒しながら廃墟を進む久遠と赤いコートのプレイヤー=ライト。


「ここ最近、白いヤツと連んでるんだってな」


徐ろにライトが久遠に問う。


「あなたには関係のない事」


「確かにそうだ。でも白いソイツって、以前ゴリラに襲われてたヤツだろ?」


「だから?」


物陰から数体のモンスターが二人に襲いかかる。

瞬間__久遠とライトは一瞬で数体のモンスターを片付けた。


「初心者を教えて得なんてないだろ。なにが楽しいんだ?」


「別に損得とか考えてない。お願いされたから教えただけ。それも昨日で終わった」


久遠は先頭をスタスタと歩いていく。


「身内以外とあまり関わらないオマエがどういうことか気になっただけさ」


「お喋りはおしまいっ」


久遠とライトの目の前には巨大なモンスターが現れた。


「イベントボスだな」


久遠とライトはそれぞれ剣と鎌を装備しボスへと挑んで行く。





同時刻、高原フィールド。

サアキスは一人で来ていた。

目の前には狼型のモンスターが数体。

片手剣を携え突撃。


「もっと強く!もっともっと速く!」


モンスターを一体撃破。

続けて二体。

三体目とはならずモンスターの突進を片手剣で受け止めると、蹴り上げ止めの一撃を加え消滅。

跳躍、片手剣を突き刺し四体目を仕留め。

背後から襲い来る五体目を斬り上げ光の欠片となって四散。

サアキスは肩で息をし、呼吸を整える。

しばらくするとモンスターがリポップした。


「はぁぁぁああ!」


再びサアキスはモンスターを追撃。

モンスターから刀がドロップアイテムとして出現。

サアキスがドロップアイテムを取ろうとした時、地響きを鳴らし低レベルモンスターの大群が何かから逃げるように彼を通り越していった。

条件反射でサアキスは剣をモンスターが逃げた方と反対側に向け警戒していると巨大なゴーレム型モンスターが現れた。


「これが久遠さんが言ってたこいつがフィールドボス?デカくないかな?」


ゴーレムは雄叫びをあげサアキスに襲いかかる。


「くそっ!」


サアキスはゴーレムの繰り出すパンチを交わすが間に合わず、ダイレクトに喰らい吹き飛ばされ岩に激突。

地に倒れサアキスのHPが減る。





「ったくよ。モンスターのレベル設定おかしいだろっ」


久遠とライトはイベントボスを倒した後、廃墟フィールドから通常の高原フィールドに戻り、転送可能な場所へと向かっていた時、遠くからモンスターの雄叫びが響いた。

瞬間、久遠は走り出した。


「お、おい、どうした!」


ライトは久遠の後を追いかけた。

しばらく高原を走り続け、追いついた時には、銀髪の少年を庇うようにゴーレムの前に久遠は立っていた。

不意に久遠が白髪の少年=サアキスに言葉をかける。


「大丈夫。今、助ける」


サアキスはゆっくりと立ち上がり、無言で久遠の前に出る。

久遠が見たサアキスの瞳には闘志が宿っていた。

久遠は無言で後ろに下がると、ライトの隣に並ぶ。

そして、サアキスは一歩を踏み出した。

サアキスは右手に片手剣、地面に転がっていたモンスターのドロップアイテムの刀をそれぞれ装備。

ゴーレムに向かって駆け出した。


「あぁぁぁぁぁぁ!!」


左右の刀剣で剣戟を繰り出すサアキス

しかし、ゴーレムは微動だにしない。

次はこちらの番と言うようにゴーレムが鋭い拳を幾度も繰り出す。

サアキスは繰り出される拳を辛うじて避けると、巨大な腕を駆け上がる。

頭部まで駆け上がると三連続で剣戟をくりだす。


「ガァァァアアア!」


瞬間、サアキスはゴーレムの右腕に掴まれた。

久遠とライトはサアキスとゴーレムの攻防を目で追う。


「ガァァアア!」


「あああああああ!」


ゴーレムの指を切り落としサアキスはゴーレムから逃れると続いてゴーレムは踏み潰そうと左足がサアキス目掛けて迫る。

サアキスはかろうじて逃れるが左腕が振り下ろされた。

サアキスは飛び上がるとゴーレムの腕を再び駆け上がる。

頭部までくるとサアキスが狙うは一点。

頭部と胴の隙間。

首関節。

サアキスの刀はスルリと入り込み頭と胴を切り裂いた。

ライトは信じられないと唾を飲み込んだ。

四散したポリゴン片の煌めきの中、サアキスは気を失い倒れそうになったところを久遠に抱きとめられた。


「よく、頑張ったね」


久遠は笑みを浮かべながら声を掛けたがサアキス本人に届いたかは定かではない。


「プレイを初めて数週間…」


サアキスと久遠、二人の姿を見つめながらライトは頬をほころばせた。


「アイツ、化けるかも知れないな」

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