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 香澄を強姦した男は、ほどなく捕まっていた。現場には男の体液が残されており、それが逮捕の決め手になったそうだ。“現場”というのは香澄の体の中のことだが。

 裁判はまだ続いているそうだが、求刑された通りの判決が下るだろうと聞いている。求刑通り、ということなら、その男は5年以上の懲役に付すことになるらしい。たった3~4回の射精のために5年も自慰にすら事欠きそうな場所に拘束されるというのはまったく哀れな話だ。

 香澄には特に興味がない。幸いにと言っていいのか分からないが時期的な問題で、直接出廷せずリモートでの証言のみで済ませてもらえたし、さして負担を強いられることもなかった。あとは法律が分かる人同士で勝手にしてくれればいい。

 何にしたところで結局、できることはもう何もないからどうでもいいことなのだ。

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